9面グラフ

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カルビーでは以前、社内に数多くの指標を設け、その数値データから経営状況を判断する「コックピット経営」を進めていた。各データはコンピュータ・システムで事業ユニットごとに週次で集計されていたが、「すべてのグラフに目を通すには不眠不休で4日はかかる」という“社内伝説”が生まれたほどデータ量は肥大化した。

エクセルで作成されたこの数値データは全社で共有され、会議でも通称「9面グラフ」(図表)を用いるのが基本とされていた。

「9面グラフを広げて会議しても、参照データが多すぎてポイントが見えにくくなることもありました」(財務経理本部財務企画部企画課・高裕一さん)

見直しが入ったのは、2009年に松本晃会長兼CEOが就任してから。「ノーミーティング、ノーメモ」を合言葉に、ムダな会議を減らし、資料づくりの省力化を進めた。松本会長の「書類は1円も生まない」という発想は、データ資料に取り囲まれていた社員に衝撃を与えたという。

11年秋には、経営指標の健全化を目指すプロジェクトがスタート。

「それまで万単位のデータがあって、本当に役立つ経営のキーインデックス(重要指標)が何か見えない状況でした。まず一般的に考えられる指標を50ほど選び、そこから20に絞り込んでいきました」(高さん)

このとき重視したのは、誰もが一目でわかるシンプルな指標だった。そして、更新のタイミングもそれまでの週次から月次に改めた。

画期的だったのは、指標の数を最大20と定めたこと。新たな指標を追加する場合は、既存の指標を棚卸しするルールにした。現在、資料に表示される重要指標の数は18である。

「最終的にA4、1枚の表裏に収めることが目標でした。そのためグラフはやめ、表形式で数字を色分けするスタイルにしました」(高さん)

各項目の数字は、ターゲット(目標値)との比較で赤、黄、緑、青色と色分けし、直感的に達成度や危険度がわかるようにした。

このように限られた数の経営指標の資料を社内では「ダッシュボード」と呼ぶ。飛行機のコックピットから車のダッシュボードまでスリム化されたわけだ。

このデータは現在、全社共有ではなく、執行役員クラス以上に毎月配信されている。現場の会議資料も簡素化が進み、「ノーミーティング、ノーメモ」で資料づくりにかける時間と労力は大きく軽減され、経営の効率化に大きく貢献している。

■BEFORE

1.確認に4日と言われた膨大な数字

2009年以前は、戦略事業単位ごとに細かく数字を追求。売り上げ、クレーム、鮮度情報などあらゆるデータが週1回更新され、全社員が見られるようになっていた。非常に有益なデータだが、あまりに細かく、また頻繁に更新されすぎていて有効利用できていなかった。また、この資料をつくる社員の手間も膨大だった。

2.細かい数字を分析した「9面グラフ」

エリア別の統計、商品ごとの統計など、それぞれにバランススコアシートが作成され、現状の推移が1ページ9つのグラフによって表されていた。データを色分けするなど工夫はされていたが、あまりに要素が多すぎて一目で状況を把握しづらく、見た後もどの数字が重要なのか頭に残りづらいという問題があった。

■AFTER

1.必要な項目は20までに厳選

現在の経営指標資料は単月のものでA4、1枚。項目は16〜、多くても20までとされる。新たに必要と思われる数字を入れる際は、他の項目を削る。

2.目標達成具合を色で分ける

設定されたターゲットに向かって現状の達成度を赤、黄、緑、青色と色分け。一目で目標値のどこにいるか把握できるようにした。

(伊田欣司=文 牧田健太郎=撮影)