3月21日未明、タイから1隻の船が宮崎県のある港に到着した。そこに乗っていた男の一人は税関を通らずに上陸をしたという。その直後、広域指定暴力団のA氏(50代)のもとに「無事に着いたらしい」と連絡が入る。密入国は成功した。

男の名前は見立真一(容疑者・34)。昨年9月、六本木のクラブで起きた襲撃事件の首謀者として、ただ一人海外逃亡を続けている人物だ。フィリピンに逃亡したとみられていたが、タイを経由して、密かに日本に帰国したという。

「じつは見立が、ある人物を介して俺に密入国の手配を頼んできた。具体的に密入国と偽造パスポートの作成、そして再度出国できるよう手はずを取ってほしいということだ。無事に出国まで果たしたら5千万円のうち3千万円は上納。残る2千万円が俺に入る予定なんだ」(A氏)

A氏は過去に数回、タイから女性を密入国させたことがあった。そのルートを持っていたため、A氏に依頼がきたのだという。無事に入国を果たした見立容疑者が向かったのは北陸のとある地方都市だった。

「その県に住む人物の戸籍をもらうことになっていた。病気を患っていて、もう先が長くない奴から戸籍を買ったんだ。パスポートは本人が行かないと作れないから、見立にその人物の戸籍を受け取らせて、偽造パスポートを作らせた。都内で作るより、地方のほうが作りやすいからね」(A氏)

国際手配中である見立容疑者が、あえて危険を冒して帰国した理由は何だったのか。A氏の舎弟であるB氏(40代)は、本人からその理由を聞いていた。

「4月に2回、見立に会いました。“我々”がよく利用する千葉のホテルで一緒になったんです。見立は何回かそこに泊まっていたようです。帰国した理由を聞くと『金を取りに帰ったんですよ。いろいろ集金しなくちゃいけなくて』と言う。それなら少なくとも1千万円から2千万円は作るんだろうなと思いましたね。ただ、どうやって戻るんだろうと。話した時間はわずかでしたけどね」

B氏が見た見立容疑者の風貌は、長めの髪にあご鬚。がっちりした体型は変わらなかったが「顔は指名手配写真とはまるで違った」(B氏)という。外に出るときは帽子にマスク。「4月になって暖かくなっているのにマスクだと余計目立つぞ、と本人に言っても、マスクだけは外さなかった」(A氏)というから警戒心は怠らないようだ。

日本に潜伏中、拠点にしていたのは被災地である福島県いわき市。震災後、高い放射線量を避けて空き家になった一軒家を借りていた。見立容疑者に同行していた女性が手配したものだった。

「いわき市を拠点に、見立は六本木のキャバクラで働くMちゃんと宮崎に旅行に行ったりしてるんだよ。彼女とは新宿区にある高級ホテルや、八王子駅前のホテルに泊まったりもしている。日本での生活を満喫していた」(A氏)

じつは、警察はこうした見立容疑者の動きを察知していたふしがある。もともと警視庁のホームページ上には見立容疑者の手配写真とともに「既に、日本に帰国し国内に潜伏している可能性も十分考えられます。予想される立ち回り先としては、東京都内、静岡県内、埼玉県内及び宮城県内が考えられます」と書いてある。実際ある警察関係者は次のように話した。

「見立が日本にいたという情報は入ってきている。しかし、現在の居場所はわからない」

(週刊FLASH 8月13日号)