欧州危機よりも深刻なアメリカ

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 日本における「日経平均株価」のように、世界中どこにでもその国の経済指標や統計が存在する。これらはマスコミによって報じられ、私たちの目にするところとなり、多くの人は特に疑問を抱くことなく受け入れる。
 しかし、米経済誌『フォーブズ』元アジア太平洋支局長でジャーナリストのベンジャミン・フルフォード氏は、日本や欧州は比較的信用できるとしながらも、これらの数字を「多くは操作されたもの」だという。
 では、操作しているのは一体誰なのか。
 同氏は『図解 世界を牛耳る巨大企業』(扶桑社/刊)でその正体に触れている。

 フルフォード氏いわく、経済指標の操作において一番ひどいのはアメリカ。欧州が比較的正直に情報を公開することと相まって、アメリカ経済の方が欧州よりも深刻であるにも関わらず、欧州危機ばかりが取りざたされるというのが現状である。
 アメリカの場合、GDPにはじまり、ダウ平均株価、天候デリバティブなど、ほとんどの市場は操作されているという。

 その一例が政府や企業の信用状態を評価する「格付け会社」である。
 スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズなどがよく知られる「格付け会社」だが、彼らは世界経済を時に混乱に巻き込むほど市場への影響力は大きい。
 だからこそ、「格付け」は政府や企業と利害関係の生じない第三者機関であることが望ましいはず。しかし、前述の「格付け会社」はまぎれもない民間企業であり、フルフォード氏はそのことによる格付の恣意性を指摘している。
 S&Pのオーナーは出版社のマグロウヒル。そのマグロウヒルを所有するマグロウ家はブッシュ家と家族ぐるみの付き合いがあることがわかっている。一方ムーディーズは大物投資家であるウォーレン・バフェットが所有するバークシャー・ハザウェイが大株主であり、バフェットが民主党支持のため、共和党寄りのS&Pがアメリカの格付けを下げた際には非難したという出来事もある。
 このように、公正であると思われがちな格付けも、裏を返せばそれぞれの政治信条に左右されてしまう、鵜呑みにできない代物なのである。

 世界経済を操作する者の正体は、本書でこの他にも次々と明らかにされる。
 その内容にはにわかに信じがたいものもあるが、私たちの世界の影で暗躍する組織や人の存在を意識することで、見慣れた日常風景ですらいつもと違ったものに見え始めるはずだ。
(新刊JP編集部)