なぜ、「職人タイプ」社員だけでは立ち行かなくなったのか?
■模倣性と創造性のバランスをとる
仕事には、創造的なものと模倣的なものがあります。創造的な仕事には、新規性や独自性が求められます。一方、模倣的な仕事には、確実性や安定性が求められます。いわゆるQCD(クオリティ、コスト、デリバリー)です。
模倣はネガティブなイメージでとらえられがちですが、企業活動においては、品質を保ち、低コストで、スピーディに物事を処理していく能力も重要です。
チームで作業するときは、創造的な仕事を創造が得意な人に、模倣的な仕事を模倣が得意な人に任せることが基本です。この組み合わせを間違えると、チームとしての効率はグッと落ちます。
模倣が得意な人にクリエイティブな仕事を任せても、新規性や独自性のあるものは出てきません。模倣と対極にあるものを求められるのですから、苦労するのは当然です。
逆に創造力のある人に模倣が必要な仕事を与えるとどうなるか。ある程度はこなせるかもしれませんが、本人は自由を奪われた感覚になってストレスを溜めていきます。
どちらにしても個人が力をまともに発揮できず、チームとしてのパフォーマンスは下がっていきます。あたりまえのことを指摘しているようですが、分担作業をしているチームでは、機械的に割り当てるだけでも仕事が成り立つので、メンバーの適性は置き去りにされがちなのです。
大量生産大量消費の時代は、みんなが同じように動けることが企業の強みになりました。そのため日本企業の多くは、模倣性の強い社員を中心に採用・育成して、仕事を機械的に割り当ててきました。ところが、企業を取り巻く環境は大きく変化し、模倣性の強い社員を中心とした組織構成では成長していくことが難しくなりました。
いまは創造性の強い社員の育成が急務です。
模倣性は経験を積ませることで伸ばせます。同じ作業を積み重ねて腕を磨いていく職人のイメージです。一方、創造性は自由な領域を与えることで伸びます。
模倣性と創造性。そのバランスがチームにも求められています。
■変化を恐れるタイプには、ネガティブな未来を見せる
個人の性格やタイプも、チームのマネジメントをするうえで見逃せません。
性格がおとなしく、波風が立たない平和な状態を望むタイプは、コミュニティを維持することに苦心して、チームに対しても協力的です。一方で安定志向が強く、変化を嫌うという特徴もあります。そのため前例のない仕事については消極的で、チームの足を引っ張ることもあります。
変化を恐れるタイプに、輝かしい未来を提示しても、魅力を感じてくれません。このタイプに動いてもらうためには、むしろネガティブな未来を見せると効果的です。
「このままいくと売上が前年割れしてボーナスが下がる」
「プロジェクトが失敗すると、誰かのクビが飛ぶかもしれない」
逆に自己主張が強くて成長意欲のあるタイプに、この手法は通用しません。彼らは変化を好み、過去よりも未来の方向を見ています。「去年より悪くなる」と危機感をあおっても、すでに手に入れたものには興味がないため、心が揺さぶられないのです。
このタイプに有効なのは、未来のポジティブな姿を見せることです。
「売上が増えるとボーナスが増える」
「このプロジェクトを成功させると、実績として認められて昇進できる」
うまく使い分けてメンバーの士気を高めることです。
(※『ビジネススキル・イノベーション』第3章 チームをマネジメントする(プレジデント社刊)より)
(横田尚哉)