DNAは4種類の塩基(アデニン、シトシン、グアニン、チミン)からなり、これらの塩基が平均して数1000個程度並ぶことで1つの遺伝子を表す暗号となることは多くの方がご存じのはず。

シーケンス解析とは、これらの並び方を順に読み取ることでその暗号を解読する作業だ。

従来は、バラバラにしたDNAを鋳型とし、1塩基ずつ再合成する時の蛍光強度を検出し、配列を解読していた。

これに対し、「次世代シーケンス解析法」は、数1000万から数億のDNA断片を並列して処理することでシーケンスの解析スピードを飛躍的に向上させたもので、ヒト1人分の全ゲノムDNA配列をわずか1日で読み取ることが可能なのである(画像2)。

今回、研究グループはこの次世代シーケンス解析技術を用いて、2名のUVsS患者の細胞からDNAを抽出して原因遺伝子の同定に挑んだ次第だ。

ヒトの全ゲノムDNAは30億の塩基の並びでできており、この内の数1000万の塩基が遺伝子に当たる。

さらに、この遺伝子配列の約0.1%が個人ごとに異なっており、この違いにより個人差が生み出されているというわけだ。

そこで、まず解読した2名のUVsS患者の全遺伝子配列の内、暗号に特徴的な変化が見られる箇所がコンピュータを用いて抽出された。

次に、抽出した遺伝子配列を2名の患者間で詳細に比較し、約10万箇所にも及ぶ遺伝子の暗号の特徴的な変化の内、個人差と考えられる箇所をすべて除外し、最終的に疾患の原因と考えられる1つの遺伝子変異が突き止められたのである(画像3)。

研究グループは、この変異を持つ遺伝子こそが、UVsSの原因遺伝子(UVSSA)候補であると考えたのである。

続いて、発見した遺伝子の妥当性を検証するため、他のUVsS患者の細胞に対し、今度はUVSSA遺伝子の配列のすべてにおいて、変異があるかどうかの調査が行われた。

その結果、ほかの3つの症例にもやはりUVSSA遺伝子に変異があることが確認できたのである。

これらの患者の細胞では、UVSSA遺伝子によって作られるUVSSAタンパク質が存在しないか、あるいはわずかにしか存在しないため、TCRがうまく働かないことも明らかとなった。

そこで、それぞれのUVsS患者の細胞に正常なUVSSA遺伝子を導入し、欠損したTCRの機能が回復するかを調べたところ、予想通り健常人と同程度までTCRの機能が戻ったのである。

さらに、UVSSAタンパク質は、紫外線を浴びてDNAが損傷することで活動を停止したRNA合成酵素に作用し、RNA合成を再開させる作用を持つことも判明した。

今回の遺伝子に関しては、長崎大とカネボウの共同研究グループのほかにも、大阪大学とエラスムス医学センター(オランダ)の2つのグループも相次いで発見しており、今回、同時に「Nature Genetics」誌に論文掲載される形だ。

今後の展望だが、現在は健常人のDNA修復機構においてUVSSA遺伝子がどのように働いているのか、さらに詳しい解析が進められている。

また、UVSSA遺伝子の働きの強さの違いによって、人それぞれの日やけのしやすさが異なる可能性についても調べているところだ。

このような研究から、今後は健常人における一般的な日やけのメカニズムを明らかにし、日やけしにくい肌へと導く技術の開発を進めていくとしている。

さらには、コケイン症候群と比較することで、老化のメカニズムの解明を目指していくと、研究グループはコメントした。