“球界の野良犬”こと愛甲猛が球界をバッサリ斬る!

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暴行事件が原因でマウンドを追われた元スター投手の主人公が、聴覚障がい者の野球チームのコーチを引き受けたことで価値観が激変する『ホームランが聞こえた夏』を鑑賞した元プロ野球選手で“球界の野良犬”愛甲猛が、破天荒な主人公に自身の半生を重ね合わせながら映画の魅力を語り明かすとともに、勢い余って球界のウラ事情も口走ってしまった。

本作は、実在する聴覚障がい者学校野球部の実話に基づいた感動作で、聴覚を失った元天才ピッチャーの高校生と選手生命断絶寸前のプロ野球スターが、聴覚障がい者の野球チームと出会い、仲間ときずなを深めながらやがて奇跡を起こす激熱スポ根映画。暴行事件が原因でプロのマウンドを追われた主人公キム・スンナムに激しく共感したという愛甲だが、その理由は自身が10代の頃に似たような不祥事を起こしているからだという。「高校野球で優勝した後に、後輩が春の選抜で出場停止になったことがあるんですよ」。愛甲による暴行事件が原因で、出身校の横浜高校は対外試合禁止処分を受け、春の大会に出場できなかったのだ。「朝、家を出る前に退学届を書いて、親に『俺、学校辞めるから』って言って出たんですけどね(笑)。けんかというか、相手をブン殴ったらアゴの骨が折れちゃってね。主人公のキム・スンナムと同じだよね(苦笑)」と苦笑い。古傷がうずくようだ。

元プロ野球選手の愛甲の目には、本作は野球映画としてプレーの細部に至るまでリアルに映っているそうで、絶賛の熱い想いがあふれ出て止まらないほど。「日本映画は、もっと勉強しないとダメだね」と不満を隠さない愛甲だが、唯一、日本の野球映画で感動した一作が、俳優の竹内 力が製作を買って出た神奈川が舞台の高校野球の映画『ひゃくはち』だという。「監督とプロのスカウトの癒着とか、見るからにウチの高校の話だろみたいな(笑)。内容に感動はしないけれど、今まで観た野球映画の中で一番面白かったな。たまたま僕が出した本があって、マンガにしたら面白いよと人から言われていたけれど、竹内 力さんが作った映画は同じような匂いで面白かったですね」と激賞だ。その理由を、「現実的な映画なんですよ」と流れるリアリズムに当事者として太鼓判を押す。

「例えばね、選手の進路って、監督が決めるの。俺の場合も、1年生の時からベンチにスカウトが来ていて、甲子園が終わった後に色々来たよ。実は社会人野球では本当は出しちゃいけないけれど、当時は支度金があったし、金額がウン千万って話もあった(笑)」。

また、当時の球界には、「僕らの時代は、プロに入ったら必ず監督にお礼を渡した。だいたい相場は200万円くらいなんだけど、必ず渡すんですよ。今はもっと高いんじゃないかな?」と愛甲は、カネ絡みの習わしがあったこともついでに暴露!

「高校野球の監督は辞められない。皆任期が長いでしょ?一気に3〜4人もプロが出たら大変なわけよ!40年間くらいやっている奴もいるし(笑)」。なるほど確かに、こんなオイシイ商売、手放すバカはいないわけだ。

「この前、某大学の監督も変わったけれど、本当は2年前に辞めるはずだった。でもプロ候補がピッチャーだけで3人も出たわけ。あと1年いたらガッポリ入って来るからね(笑)」。

それでも愛甲は野球をこよなく愛して、野球が嫌いになったことはないという。特に『ホームランが聞こえた夏』のように野球を研究し尽くした製作チームが作る映画を観る度に、愛甲は自身のエピソードを重ねあわせ、本物の感動に打ち震えるという。「子どもたちが土下座して、『野球やらせてくれ!』と頼むシーンがあるじゃないですか。思い出しちゃったよね。俺も小学校の5年生の時に、野球を獲るか勉強を獲るかどっちかにしろと言われて、野球をやらして貰う代わりに机に2時間向かうからと宣言して土下座したの。まあ、結局は時計とじっとにらめっこしていただけですけどね(笑)」。野球に対する深いリスペクトがあるため、愛甲のようなプロの鑑賞にも耐えうる作品になったのだ。「ちょっと余談が多くなったけれどNGの話題も特にないし(笑)、生きることを考えられる映画なので人に奨めたいね」。

映画『ホームランが聞こえた夏』は、全国順次大ヒット公開中!

著書/『球界の野良犬』(宝島社)、『愛甲猛のプロ野球ガチンコ観戦ノート』(オークラ出版)は絶賛発売中!