インテルで3冠を達成し、ワールドカップでも決勝に進出するという“最高の1年”を過ごした。故障が多かったレアル・マドリー時代から一転、過密日程の中でも安定したパフォーマンスを発揮できるようになった秘密は何だろうか。
インタビュー・文=ヒテシュ・ラトナ

[回復]自分の体に問い掛けて無理をしない


レアル・マドリー時代の僕はいくつかのケガを抱えていて、継続してプレーできないことが多かった。ピッチで戦う以前に、コンディションの問題を解決しなきゃならなかったんだ。そのためにポジション争いでも苦戦を強いられ、ケガが治ってもベンチに座ることも多かった。でも、インテルに加入すると同時にその問題は解決した。練習と回復についてのやり方が全面的に変わったんだ。これはモウリーニョの持ち込んだメソッドのおかげ。毎日、僕は練習が始まる前に自分の体に問い掛ける。「調子はどうだい?」ってね。これはケガをしているかどうかじゃなくて、気分の問題なんだ。もし気持ちが乗っていなければ、コーチに頼んで練習の負荷を減らしてもらい、ストレッチなど体のケアを増やす。モウリーニョの下では、みんながそうしていた。その結果、昨シーズンはケガ人がすごく少ない1年となった。ケガをするかしないかはツキで決まるものじゃない。選手たちが回復について気を使い、そのために時間を使うことが大切なんだ。

[分析]宿題をきちんとやっておくこと

スカウトが調査してきたことをしっかり頭に入れておけば、試合で大きなアドバンテージを得られる。インテルでの初めての試合はミラノ・ダービーだった。モウリーニョと彼のスタッフは、僕のためにインテルとミランについてのビデオを作って見せてくれた。それほど長いものじゃなかったけど、それを見たおかげで自分が新しいチームメートと一緒にどんなプレーをすればいいのか、そのアイデアを得られた。彼らがどこに走り、どこにスペースが生まれるか、そして攻めるべき時と慎重に行くべき時の判断……。相手の弱点を知り、それをどのように利用すべきかも分かった。宿題をきちんとやっておけば、試合で相手のプレーに驚かされることはなくなる。自分たちのペースで試合を進められるってことさ。

[気分転換]スイッチをオフにすることも重要


試合と試合の間にはサッカーのことを忘れて、一度リフレッシュしなければならない。僕は試合が終われば他のことに切り替えられるタイプだ。プロサッカー選手なんだから、いつもサッカーのことを考えているのが当然だと思うかもしれないけど、実際はそうじゃない。いくら考えてもキリがないしね。ずっとサッカーのことだけを考えているようでは、常にトップレベルのパフォーマンスを続けるのは難しいと思う。少なくとも僕には無理だね。気持ちを切り替えてストレスを解消し、ゼロの状態からまた次の試合に向けて集中すべきだ。どのサッカー選手も、それぞれ意識を切り替えるための方法を持っている。チームメートはテニスをしたり、釣りに行ったりしているよ。僕は釣りはやらないけどね。どこが面白いのかさっぱり理解できないんだ(笑)。僕の気分転換はサイクリングだ。特に最近は新しい自転車を買ったから、天気が良ければ公園でそれを乗り回している。当然、その時はサッカーのことは全く考えていないよ。

[睡眠]良い睡眠をたっぷりと取る


多くの選手は意識せずにやっているのかもしれないけど、僕は睡眠が次の日のコンディションに大きな影響を与えると信じている。僕は1日8時間は眠りたい。これが7時間以下になってしまうと、体が重く感じられる。これはさっき言った気分転換とも関連するんだけど、眠る時にサッカーのことを考えちゃダメだ。サッカーのことを考えていたら眠れなくなってしまうからね。全く別のことを考え、リラックスして自分を眠りに誘うんだ。睡眠時間が足りないと、体調が十分でなくなるだけじゃなく、ケガの危険も増すと思う。とにかく夜はリラックスして、早めに寝るに限るよ。試合が近付いたら夜に出歩くのは避ける。トッププレーヤーのほとんどがそうしているはずだ。

[準備]落ち着いて集中力を高める


僕は試合前にはいつも同じ形で準備をする。「どちらの靴下を先に履くか」なんて迷信を信じちゃいないけど、自分なりの準備が決まっていて、それを正確に行って試合開始時間を迎えるのが好きなんだ。スタジアムに着いてロッカールームに入ったらまず好きな音楽を聴く。オランダのヒップホップがほとんどだね。それからウェアに着替え、スパイクを履いてウォーミングアップのためにピッチへ行く。いつも同じルーティンをするという行動が、自分を落ち着かせてくれる。そうすれば、「試合の時間だ」という声が掛かった時、高すぎず低すぎず、適切なテンションで試合に入ることができる。

[意識]試合中はタイトルを意識しないこと

タイトル争いには“佳境”と呼ぶべき重要な時期があって、3冠を狙うようなチームは3月や4月にそれを迎える。すべての試合がタイトル獲得に大きな意味を持ってくるんだ。でも、モウリーニョは選手たちに「タイトルを意識するな。目の前の試合に勝つことに集中しよう」といつも言っていた。結局のところ、それがタイトル獲得に至る一番の近道なんだ。タイトル獲得を願う気持ちは大きなモチベーションになるし、チーム全体のその熱意が大きな波になることもある。でも、試合中にそれがマイナスに働いてしまうことも多い。ビッグタイトルを目指して戦っていると、試合中に気を付けるべき細かいことを忘れがちになる。勝ち慣れていないチームが、タイトルを意識し始めた途端に調子を崩すことはよくあるよね。試合中は自分が今やるべきことだけに集中すべきだ。そうでないと、思わぬ失敗をしてしまうことになりかねない。

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