[写真]=千葉格


 4月2日のブンデスリーガ第28節、ドルトムントはホームにハノーファーを迎えた。結果は4−1で首位ドルトムントが快勝。しかし、この試合、サポーターにとって最大の喜びは、3試合ぶりの勝利ではなく、頼れるエースの笑顔かもしれない。

 3月下旬にドイツへ戻り、復帰に向けてのトレーニングに励む香川真司がスアジアムに現れると、サポーターは『シンジコール』の大合唱。4月中の実戦復帰を目指す日本人MFを最大限のエールで迎えた。

 なぜ、香川はここまで愛されるのか? 香川をドイツに送り込んだ代理人のドーマス・クロートは、彼の成功について『ワールドサッカーキング』のインタビューで次のように語っている。

「簡単に言えば『すべてを含めた選手としてのクオリティー』になるが、一つ付け加えるなら、香川が若い世代に属しているということだ。今の若い日本人選手はヨーロッパでプレーすることが冒険だと思っていない。香川は最初から『やれる』という自信と『やってやる』という意志を持っていた。つまり、スタート地点での意識レベルが高かったんだ。それは彼だけでなく、今の若手全般に言えることだね。若い世代の選手は人間的にもオープンだし、『俺はやってやる』という強い意志を持っている」

「香川はある意味で『例外的な選手』だ。彼にはスピードがあり、テクニックがあり、ゴールを脅かす嗅覚もある。この3つがうまくかみ合っているんだ。さらに、トップ下はプレッシャーにさらされるポジションだが、香川はその状況を打開するプレーができる。プレッシャーを受けた時にどう動くか、どこにパスを出すか、正確に判断する力を身に着けている。彼の場合はこれが一番重要かもしれないな。だから、3つではなく4つだね(笑)」

 さらにクロートは、香川の今後についてこう付け加えた。

「2部のチームが1部に上がると、最初のシーズンはうまくいくことが多いけど、次のシーズンは必ず問題が生じてくる。選手にも同じことが言えると思う。香川は今シーズンは良かったが、来シーズンはどこかの段階で苦しむ時期が来るだろうね」

「ただ、さっきも言ったように、彼は『例外的な選手』だから、それも乗り越えてくれるだろう。私がよく言っているのは、中田(英寿)が通ったような道を彼も歩むだろう、ということ。個人的には、香川は中田に『続く存在』というより、彼を『超えていく存在』だと見ている」

「能力の高い日本人選手はたくさんいる。だが、正直なところ、香川ほどの選手を見付けるのは、もうほとんど不可能だと感じている。香川ほど多くの要素がバランス良く組み合わさっている選手はそういるものではない。例えばドルトムントの(マリオ)ゲッツェは香川とよく似たタイプだし、18歳でドイツ代表に入ったほどの逸材だ。それでも、香川のほうが能力は上だよ。特にゴールセンスという点では、香川のほうがはるかに優れている」

 前半戦の活躍を受け、ドイツ紙『ビルト』が「ドルトムントの新しい支配者」と報じたルーキー。香川真司の明るい未来は、ドイツサッカー連盟公認代理人でもあるクロートが保証している。

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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。ストリートファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(twitterアカウントはSoccerKingJP)』の編集長に就任。