お気楽主腐の萌え語り
腐女子的な話題をお届けしている「お気楽主腐の萌え語り」。
小学生の子供を持つ現役主婦もとい、主腐の価値観で執筆させていただいています。
第二回目となる今回は先日東京都で可決された「東京都青少年育成条例 改正案」に関する話題をちょこっとだけ主腐的目線で触れてみたいと思います。
なお、今回の内容は私の個人的な見解が沢山入っています。全ての腐女子の方が同じ考えではないと言う事をご理解いただいた上で読んでいただければ幸いです。さて、早速本題です。
「BLはファンタジー」という声を良く耳にします。

BLはアニメや漫画、時として実在する人物をモデルとして、男性同士のキャラクターで恋愛を描いていきます。

何故男女間の恋愛ではなく、男性同士の恋愛なのか?
描き手の多くが女性で、男女間だとついリアルに感じてしまう部分も、男性同士であれば「どこか他人事」ではありませんが、若干緩和されて受け止めやすいからかもしれません。
ただ、その恋愛模様は女性の恋する気持ちを主人公に重ねて共感する部分も多く、それは男女間の恋愛に通ずるものもある気がします。

ただしあくまで架空(ファンタジー)の世界。
男女間の恋愛ではなく、男性同士という普通ではあまりない設定であるからこそ物語は膨らんで行くのです。

ファンタジーは架空です。架空だからこそ、自分に出来ない事を重ね合わせたり、共感したり、反発したりするものだと思います。

現在その架空の世界について、東京都で条例が課されようとしています。
理由の一つとして、性的表現を含むアニメや漫画が未成年者に悪影響を及ぼす可能性があるからというのが上げられています。

架空の世界で起きている事を自分で現実世界で真似をしようとするでしょうか?

「主腐」と名乗っている手前、私にも子どもがいます。
私の子どもを含め多くの子ども達は思春期に入ると、それまで一緒に過ごしてきた同級生の異性に対して特別な目線を抱く時期がやってくることでしょう。
そんな時期に、友達からこっそり回ってきた雑誌や小説、漫画、それらを見て親が教えてくれない事を覚えていくんじゃないかなと、自分自身の子どもの頃を思い返して感じています。
むしろそうした知識を勝手に得てくれないと、一から十まで親が性知識を教えなければいけないハメにもなりかねませんからね。
正直なところそんなことは恥ずかしくてしたくもありません。し、事実上できない家庭が日本には多いでしょうね。

犯罪を助長しないように創作物を与えないとして、子どもは何処で想像力の羽を伸ばすんでしょうか?

今回の改定案では規制対象に文学は含まれていません。
全ての人が純文学だけで、想像出来ればきっと素晴らしいのかもしれません。
でも、それらの文学も最初から文芸と呼ばれて称賛されていたとは限りません。

架空の世界を共有出来るからこそ、日本のアニメ、漫画と言ったコンテンツは世界に広がり多くの人と共感されたのではないでしょうか?

私は、親として子どもには色々なものに触れて欲しいとそう願っています。もちろん年齢にふさわしくないものを選ぶ必要はあると思います。
その時に注意するのは親の役目であって、子どもの成長を親が実感し一緒に考え、一緒に成長するものでありたいと願っています。

綺麗なもの、世界の表だけを見せて大人になった人が世界の裏側、汚いものを見てしまった時にそれを乗り越えられるでしょうか?
道の真ん中にある石をどけてあげて、ある日自分で全部取り除きなさいと言ってのぞけるでしょうか?

今回の条例は主腐と言う立場以上に、親としてしなければならない事を取り上げてしまいかねないものになるかもしれないと、そう思います。

最後に同時に物議をかもしている同性愛的創作表現について、まずはこのショートストーリーを読んでみてください。

例えば僕の肉体が消滅して、影も形もなくなったとして、心はどうなってしまうのだろう。こうして頭では今この授業を聞いていて、体はちゃんとノートをとっていて……なのに胸の辺りに重苦しいものがたゆたっている。この澱のようなものも一緒に溶けて灰になってしまうのだろうか。
難しい事なんて分からない、分かりたくもない。ただ、時々この胸の中の重苦しいものが溢れてしまわないように、口元を押さえていないといけない。
溢れたらダメだ。溢れたらきっと僕の内側だけじゃなく、僕に触れている空気も全て黒く染まってしまう。それが彼に触れてしまったら
そう考えただけでゾクリと背筋を凍りつくようなものが駆け抜ける。

僕の思いは口には出せない。思考の中に組みこんじゃいけない。そうしないときっと彼の声に言葉に、僕は全ての意識を集中してしまって、バレてしまう。だから真っ黒い澱の中だけで僕は思う。このまま、僕の胸は凍りついて固まってしまえと

優しさと言うのは時に残酷なんだと思う。彼の優しさに罪はない。ただ僕の胸にだけ彼の言葉の一つ一つが刃のように突き刺さる。
休み時間、昼休み。必ず僕を誘う彼にとって、僕の存在は親友だ。こんなにも苦しくなる前まではそれでいいと思っていた。例え大勢の仲間と過ごしていても、僕がその中から外れた事はない。
だけど満足と言う言葉に慣れはじめると、次の欲求が現れる。それが僕を黒く染めていく。彼の一番になりたい。それは友人としてでなく、もっと別な、誰とも違う「特別」と呼ばれるもの。

特別になることが出来ないと分かっているから、僕の胸の中の黒い澱は日々降り積もり、押し潰されて固まってしまう。

その どす黒い固まりが揺れるのは、彼が僕の名前を呼ぶ瞬間。そしてまた今日も彼の事が好きなのだと気づいた瞬間。
ゆらゆらと揺れる思いを言葉に、思考にしてしまわない為に僕は目を閉じ口を押さえる。彼が僕から離れてしまわないように。ただそれだけのために。


お目汚しを失礼いたしました。
これはBLですが、手を繋ぐ事もキスもありません。
ただあるのは誰かを好きになった時の気持ちです。
僕を私にもしくは彼を貴女に置き換えれば、普通の恋愛に置きかえられるのではないかと思って書いてみました。

BLはファンタジーだと良く言われます。確かにそうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。
だけど、沢山の恋する気持ちを、もどかしいほどの苦しみや嬉しさを伴う恋愛を描いているジャンルだと、そう思います。

自分には出来ない激しい恋愛を、禁断の恋を、物語だからこそ手に取れる。
もちろんBLと言うジャンルだけでなく、多くの創作物も同じです。

手にした紙の向こうに、目にした画面の向こうに、沢山の世界が広がっています。
どうか、大好きな架空の世界が消えてしまいませんように。いつまでも、人の心を捉えて離しませんように。そう願って今回は筆を置かせていただきます。

■ライター紹介
【天汐香弓】

携帯サイト【BL乱舞♂乙女の箱庭】などでBL小説を発表をしつつ、一方で小学生のお母さんをこなす主婦。
日課はBL小説のメルマガ配信。
色々なシチュエーションに出会う旅にBL変換させる事が趣味。


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