電子書籍の影響を受けていない最後の決算期
“電子書籍の影響を受けていない最後の決算期”の決算数字が出揃った。
今後、電子書籍市場の発展に伴い、従来型の出版物流通システムが大きく変わる可能性が出てきている。「売上予想が立てられない」、「既得権益が崩壊する」といった事態に関係業種は直面するかもしれない。
帝国データバンクが、2007年度〜2009年度の業績が2010年9月末時点で判明している出版社/出版取次業者/書店経営業者のうち、2009年度の年売上高が1億円以上の1112社を抽出し分析結果を発表した。
●出版社 (620社) 〜 2009年度決算の売上上位10社中8社が減収

2007年度決算から2009年度決算を調査すると、売上規模が1000億円を超える(株)集英社、(株)講談社、(株)小学館を含む249社(構成比40.2%)が2期連続減収となったことが判明した。
なかでも、2009年度決算の売上上位10社を見ると、10社中7社が2期連続減収となった。売上上位30社を見ても6割が2期連続減収となっている。
一方で、2期連続増収となったのは売上上位10社の中では(株)宝島社1社のみで、全体でも106社(同17.1%)に過ぎず、売上減少傾向が続いている出版社が多いことが鮮明になっている。
但し、赤字が続いている出版社は少ない。2008年度、2009年度と2期連続で最終赤字を計上したのは70社(構成比11.3%)のみ、400社(同64.5%)が2期連続最終黒字となっている。2009年度決算だけを見ても、最終赤字を計上したのが149社であるのに対し、最終黒字を計上したのが471社で3倍以上。売上高は減収傾向が続くなか、不採算部門からの撤退やリストラ、社有不動産の売却などで赤字を回避する出版社が多いことの裏づけである。しかし、大手出版社を見ると、(株)講談社、(株)小学館、(株)光文社は2期連続減収に加え2期連続で最終赤字を計上したほか、(株)文藝春秋は2009年度決算で赤字に転落するなど、苦戦を強いられている。

出版社

● 取次業者 (193社) 〜 2009年度決算、8割以上が最終黒字

2大出版取次業者である日本出版販売(株)と(株)トーハンが2009年度決算では揃って減収となり、2社ともに2期連続減収。
2009年度決算の売上上位10社で見ても半数が2期連続減収となった。
但し、売上上位30社を見ると16社(構成比53.3%)が2期連続減収となったものの、売上31位以下を見ると2期連続減収となったのは36.8%であり、売上規模の大きい業者での減収傾向が目立つ。
とはいえ、公正取引委員会が公表している出荷集中度調査でも、市場規模の8割以上を占めているとされる日本出版販売(株)、(株)トーハン、(株)大阪屋の3社の売り上げは減収傾向といえどもその他の取次業者と比較すると圧倒的であり、その差が埋まらない。
2009年度決算では、157社(構成比81.3%)が最終黒字を計上し、うち132社(同68.4%)が2期連続最終黒字となった。2期連続最終赤字となったのは11社(同5.7%)のみ。在庫管理の徹底や物流の効率化を図りコストを削減、利益を確保している取次業者が多い。
個別企業を見ると、大手2社はともに10億円以上の最終利益を計上し2期連続で最終黒字となった。準大手のなかでは、(株)大阪屋、(株)太洋社が黒字転換を果たしたものの、栗田出版販売(株)が赤字に転落している。

取次ぎ

●書店経営業者 (299社) 〜 準大手クラスが健闘、小規模書店は厳しい

2007年度決算から2009年度決算を調査すると、2009年度決算の売上上位10社中5社が2期連続増収となった。
また、売上上位30社を見ても14社(構成比46.7%)が2期連続増収となっている。
一方で、売上31位以下では2期連続増収になったのは16.0%にしか過ぎず、45.7%が2期連続減収になるなど、小規模の書店経営業者の売上高は振るわなかった。
また、書店経営業者で唯一年売上高が1000億円を超える業界最大手の(株)紀伊國屋書店と3位の(株)有隣堂は2009年度決算が減収、2位の丸善(株)は2期連続の減収となるなど大規模書店チェーンも伸び悩んだ。

損益状況としては、売上上位10社中7社が2期連続最終黒字を計上した。
売上上位30位で見ても、20社(構成比66.7%)が2期連続で最終黒字を計上している。
大手書店のなかで、2期連続で最終赤字となったのは丸善(株)のみ。出版不況と言われ続けているなかでも、中堅以上の書店経営業者は利益を確保することができていると言えよう。
一方で、売上31位以下では68社(同25.3%)が2009年度決算で最終赤字を計上し、そのうち38社(同14.1%)は2期連続の最終赤字となった。売り上げだけでなく損益面から見ても小規模の書店経営業者の業績が悪いことがうかがえる。

書店

● 出版業界3業種の比較 〜 書店増収傾向も、3業種総倒れの様相

売上規模を比較すると、出版社、取次業者、書店経営業者とも売上高1億円以上10億円未満の区分が過半数を超えた。
なかでも出版社は63.2%(392社)と6割を超えており、売上規模の小さい出版社が多い。

一方、同100億円以上で見ると、書店経営業者が28社でトップ。次いで出版社の27社となった。取次業者で売上高100億円以上となったのは12社のみ。

2期連続で増収を記録した業者の割合が最も多かったのは書店経営業者で19.1%(57社)。
但し、2期連続で減収となった業者の割合も最も多く、業績の2極化が進んでいることを表している。また、3業種ともに2期連続減収となった業者が、2期連続増収となった業者を大きく上回っており、出版業界総倒れの様相を呈している。

損益状況を見ると、取次業者において2期連続で最終赤字を計上したのは5.7%(11社)で、唯一の一桁となった。なお、取次業者は68.4%(132社)が2期連続で最終黒字となっており、出版業界のなかでは、出版取次業者が最も利益を確保できている業種と言えるであろう。

比較

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