6日に南アフリカ入りして11日のW杯初戦に備えるフランス。定例の記者会見では、選手が日替わりでプレスルームに入り、報道陣の質問に答えているが、8日昼の会見には守護神ユーゴ・ロリスが登場。質問は“クセ球”とされるW杯公式球の話題に集中した。

 ロリスは今季、リヨンで決定的なスーパーセーブを連発し、チームの危機を救ってきた。欧州チャンピオンズリーグでも世界最高級のGKに仲間入りしたことを十分にアピールし、W杯ではフランス代表がもつ最大の武器として期待されている。ところが強化試合の中国戦では、フリーキックを直接ゴールに叩き込まれた。

 ロリスはそのフリーキックを「まるで壁に当たったかのように、まったく違う方向へボールが変化した」と振り返り、これまで多くのGKが口にしてきた公式球の予測不能な弾道を実戦でまざまざと思い知った。「軽くてプラスティックでできているみたい。革製の重いボールという印象からはほど遠い」と公式球の感想をまとめている。

 「自分のミスじゃなかった。かえってミスだったらよかったと思う。そうすれば、自分を責めるだけで済んだから。試合後にはあれこれ考えても、翌日には忘れることができるからね」と語るロリス。自分の力だけではどうにもならないボールに対する不安が明らかに感じられる。しまいには、「すみませんが、別の質問をしてくれませんか」と報道陣に“ギブアップ”のサインを出したほどだ。

 公式球にとまどいを感じているのはGKだけではない。前日には、MFのゴヴが「いくら何を言ってもボールは変わらない。運が悪いが仕方がない」とあきらめのようすで語っている。FWのジニャックは、「とにかくシュートを打つことだ」と、ロングやミドルシュートの多用で相手GKを苦しめる方向に頭を切り替えている。ただしロリスは、「ボールをいやがっているのはFWも同じ。プレースキックのときに、ボールのどのポイントを蹴ったらいいのか判断がむずかしいからね」と話す。

 世界屈指のGKが「とんでもないことだって起こりうる」と警戒するこの公式球、予測不能の結果を生む“魔球”になる可能性もありそうだ。