先日、ミランのベルルスコーニ会長がシェフチェンコ(チェルシー)復帰を歓迎する発言を行った。ロンドン行きを強制したモデルの妻を暗に揶揄しつつ、かつてのお気に入り選手の帰還をほのめかす内容だった。今や元バロンドールの実勢評価額は、ミランにとってタダ同然。それでも「いらない」という声がすぐに噴き出してきた。

 真っ先にアンチェロッティ監督が「パトとシェフチェンコは、タイプが似ているからコンビは組ませられない」と否定。ご意見役サッキも「復帰しても機能する確率は10%。戦術的にも問題がある」と手厳しい。重鎮アルタフィーニは「トニ、アマウリ、ヤクインタ、ファンニステルローイ、もしくはアデバヨール。今のミランにはかつてのウェアのような重爆撃機タイプのFWが必要」と説く。復帰賛成派は「ドログバより多くのゴールするのは確実」という、かつての指揮官ザッケローニだけだ。

 そもそも“ベルルスコーニ会長の選手を見る目は確かだ”とは誰にも言えない。1985年のインターコンチネンタル杯で会長が一目惚れし、2年後に獲得したクラウディオ・ボルギという選手がいた。しかし当時の指揮官サッキは起用を拒否し、コモへあっさり放出。その後ライカールトを得たサッキのミランは連勝街道を突き進むのである。
 ミラン王朝にある現場の人間は、絶対君主のご機嫌をうかがいながら、リアリスティックかつしたたかにやっていかなくてはならないのだ。