3月29日にリーグ杯の決勝をたたかったパリ・サンジェルマン(PSG)とランスはリーグ・アン第31節を消化しておらず、PSGが4月2日のストラスブール戦、ランスが9日のサンテティエンヌ戦を残している。他の16チームが31試合を終えた時点で、PSGが19位、ランスが17位とどちらも降格の危機に立たされている。

 リーグ杯を制したPSGだが、昨シーズンと同様、この時期を降格圏内で迎えている。ストラスブールに勝てば暫定17位(3点差以上で勝てばストラスブールを抜いて16位)と降格圏を脱出できるが、その後ナンシー、ニースと上位陣との対戦を控え、苦しい状況が続く。

 加えて、リーグ杯決勝でPSGの一部サポーターがランス出身者を侮辱する横断幕を掲げたことが波紋を呼び、リーグの裁定によっては、PSGが勝ち点の減点処分を受けるおそれも浮上している。

 横断幕の内容は「小児性愛者、失業者、近親交配のふるさと、シュティの地へようこそ」というもの。最近公開された『シュティの地へようこそ』というコメディ映画のタイトルから拝借しているのだが、“シュティ”とは、フランス北部ピカルディー地方の人々を指す俗称。これまで問題になったアフリカ系やアラブ系の選手に対する人種差別とは明らかに性質が異なるものの、偏見を助長する悪質なスローガンとして軽視できないとの声が高まり、社会問題にまで発展している。

 2月には、モロッコ人のウワドゥ選手(ヴァランシエンヌ)が対戦相手メッスのサポーターから人種差別的な野次を受け、抗議のためにハーフタイムに観客席に駆け上がるという事件が起こり、スタジアムでの人種差別問題が一挙に注目を集めた。この一件で、野次の主は裁判にかけられ、執行猶予付き禁固3ヶ月と3年間のスタジアム立入禁止という重い求刑がなされている(判決は4月8日)。さらにメッスもクラブとしての責任を問われ、勝ち点から1ポイントの減点処分を受けた。

 今回、PSGも減点処分は免れないという見方もある。シーズン終盤の1部残留をかけた争いは、わずか1ポイントが明暗を分ける場合も少なくない。勝ち点で並びながら得点差で決まる場合すらある。数々の栄冠を勝ちとってきたリーグ・アン屈指の人気クラブであるPSG。この1ポイントに泣かないためにも、残り8試合が極めて重要になってきた。