キリンビール値上げに立ちはだかる2つの難関
カップ麺、マヨネーズなど食品の値上げが相次いでいるが、今度は「ビール」だという。
去る10月31日、キリンビールはビール、発泡酒、新ジャンルのビール系飲料の価格を2008年2月出荷分から値上げすると発表した。
酒税改定を除けば、ビールの値上げは1990年3月に大手がいっせいに実施して以来、じつに18年ぶり。オープン価格制のため、具体的な店頭小売価格は示されていないが、値上げ幅は3~5%になると見られる。
だが、今回の値上げは、そう簡単に通りそうにはない。2つの大きな関門が立ちふさがっている。
最初の関門は、イオングループに代表される大手流通の反発。前回値上げの1990年当時は、ビールを値引き販売する大手スーパーは皆無だったため(1994年のダイエーが最初)、値上げ表明の翌月にはすんなり店頭価格は上がったが、いまやビール系飲料はスーパー特売の目玉商品と化している。
キリンの値上げ表明直後に、イオンは「可能な限り店頭価格を維持していく。そのため、あらゆる選択肢を提案する」とのコメントを出し、値上げ阻止の姿勢を滲ませた。キリンが値上げまで3ヵ月という時間をかけるのも、大手流通対策のためだが、説得は容易なことではない。
2年前、ビールメーカー各社は販売価格の適正化を図るため、卸への数量リベートを廃止した。卸は流通各社にリベート廃止分の値上げを要請したが、イオンは拒否。自社の物流センターに直接ビールを納入するコストダウンでの相殺を求め、店頭価格の大幅値上がりを抑えられた経緯がある。
第2の関門は、競合他社の動向だ。ビールでトップシェアを握るアサヒビールが現時点では様子見の構え。荻田伍社長は「原材料が今後もさらに上がるなら値上げの可能性はあるが、まずは企業努力と収益構造の改善でコスト上昇分を吸収するのが先」と記者会見で明言している。
ビール系飲料市場は1992年の統計開始以来、史上最低の水準にある。ビールメーカー各社にしてみれば、原材料高騰は痛いが、値上げで消費者がチューハイやカクテルなど、低価格、低アルコール飲料にシフトする流れが加速するのはもっと痛い。
とりわけアサヒにとっては、値上げを見合わせれば、キリンとのシェア競争上は圧倒的な優位に立つことができる。まさに我慢のしどころなのだ。
