中国で英小説「ジェーン・エア」が学校必読書に、「イデオロギー強化策」と米CNN
9月初めから新学期が始まった中国国内の学校で、必読書のリストに19世紀の英国の小説「ジェーン・エア」が加わった。米CNNは「この小説にはSNS時代の『外見や財産をめぐる表層的な考え』に対抗する力がある」との共産党紙の記事を引用。政権が求める「イデオロギー強化策の一環」と伝えた。
シャーロット・ブロンテ作の「ジェーン・エア」は孤児として育ったジェーンが家庭教師として住み込んだ家の主人と結ばれるまでを描いた。当時の社会に反抗した新しい女性像を提供し、多大な反響を呼んだ。
CNNによると、インターネット上では近年、富をひけらかす行動や裏切られた恋人たち、苦悩する大富豪、報復を企てる不運な愛人たちを描いた突拍子もない筋書きのオンライン小説やショートドラマが娯楽の主流となり、中国の検閲当局はこれに目をつけている。規制当局は6月、恋愛関係や結婚への「ゆがんだ」見方を広めているとみなされる「有害で低俗な」コンテンツの取り締まり作戦に乗り出した。
北京市共産党委員会の機関紙・北京日報によると、孤児の少女が多くの苦難を乗り越えた末に裕福な雇用主と恋に落ち、自立を見出すという「ジェーン・エア」の物語によって、14歳の生徒たちの「より健全な価値観」が養われるという。同紙は「子どもたちが最初に恋愛感情を抱き始めながらも、まだ世間知らずで経験が浅い時期というのは健全な人格を形成する上で極めて重要な段階」とも報じた。
青春文学の「ジェーン・エア」は1925年に中国に紹介されて大きな人気を呼び、これまでに数え切れないほど翻訳、出版されたり、舞台化、映画化されたりしてきた。文化大革命の混乱が終結した後の79年には、国内の劇場で英国製作の映画も上映された。
ジェーン・エアが将来の夫に「私が貧しく、目立たず、美しくもなく、体が小さいからといって、私には魂も心もないとお思いですか」と迫るせりふは有名だ。中国の労働者階級はずっと、そんなジェーンを抑圧に抵抗するヒロインととらえてきた。本は中国の共産党体制にも長年受け入れられてきた。
CNNは「中国が9月から導入した新たな教科書は子どもたちの思想や価値観を共産党が掲げる核心的価値観に沿わせる取り組みの一環として、広範囲にわたり改訂された」と報道。9年間の義務教育制度では近年、共産党の歴史や中国伝統の道徳観、国の法制度が必修の項目となっている。2021年には習近平国家主席による「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を説明する一連の教科書が配布された。
今年の変更点としては「ジェーン・エア」のほか、創造的思考に関する項目が削除されたこと、多方面に優れた社会主義の建設者となる方法を説く新たな教科書やスポーツ、宇宙開発分野での中国の成果についての説明が導入されたことが挙げられるという。(編集/日向)

