病気で収入が急減した人に重い負担がかかりかねないとして、見直しの再検討を訴えた(ペイレスイメージズ1(モデル) / PIXTA)※写真はイメージ

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日本弁護士連合会(日弁連)は9月25日、2027年8月に予定されている「高額療養費制度」の自己負担限度額にかかわる所得区分の見直しに関する厚生労働省の省令案に反対する意見書に公表した。

同意見書は、制度の見直しにより、患者の負担がさらに重くなるおそれがあると指摘している。

「手取り額の大半を奪われる」

高額療養費制度は、病院の窓口で支払う医療費の自己負担額(6歳~69歳の人は3割)が1か月あたり所定の上限額を超えた場合、超過分が払い戻される仕組みだ。

自己負担の上限額は所得に応じて定められており、所得が高いほど上限額も高く設定されている。

直近12か月に3回以上上限に達すると、4回目からは上限が下がる「多数回該当」という軽減措置もある。

健康保険法等の改正法の附帯決議では、この制度が国民の生命と生活を守るうえで「欠くことのできない中核的な役割」を果たしていると明記されている。厚労省の専門委員会も2025年12月の取りまとめで、患者・家族にとって「なくてはならない制度」と位置づけた。

見直しは2段階で進む。まず第1段階として今年8月、すべての所得区分で月額上限が引き上げられた。年収約370万~770万円の層では「8万100円+医療費の1%」が「8万5800円+医療費の1%」に、年収約370万円以下(住民税非課税世帯を除く)の層では5万7600円が6万1500円になった。また、新たに「年間上限」も設けられた。

第2段階は、来年8月に予定される所得区分の細分化だ。年収約650万~770万円(厚労省資料による目安)の層の上限が「11万400円+医療費の1%」となる。年収約260万~370万円の層も6万9600円に設定され、見直し前の5万7600円から1万2000円上がる。

厚労省側は見直しの理由として、高齢化や高額薬剤の普及による医療費の増大、現役世代の保険料負担への配慮を挙げる。

さらに、年収約370万円と約770万円が同じ区分に入る「大括り」な設計を改め、収入に応じた負担への転換を掲げている。加えて、年収約200万円未満の層では、多数回該当の上限を4万4400円から3万4500円に引き下げる配慮も盛り込まれた。

低所得者層が「手取り額の大半を奪われる」と懸念

これに対し、日弁連の意見書は、高額療養費制度の利用者の約8割、70歳未満でおよそ320万人にのぼる年1~3回の利用者が、上述の「配慮」の対象とならない点に着目し、この層の負担が増大することを問題視するものである。

これらの患者は、4回目から自己負担上限額が低くなる「多数回該当の要件を満たさない。また、今年8月から設けられた年間上限は、多数回該当の金額の約12か月分に設定されている。

したがって、高額療養費制度を利用する患者の多くが新制度の恩恵を受けられず、月額上限の引き上げによる「負担増のみが生じる」と指摘した。

厚労省自身の試算でも、年収約770万円で年3回該当する患者は、見直し前と比べ、来年8月以降の上限では年間約8.8万円の負担増となる。

さらに、意見書は、特に年収200万~400万円の層では、1か月あたりの自己負担の上限が生活に必要不可欠な支出を除いた“支払能力”の約60~95%に達し得ると指摘し、患者が「手取り額の大半を奪われる」と懸念を示している。

「ゼロベースで慎重に再検討すべき」

加えて、日弁連は、高額療養費制度では所得区分が原則として前年の所得で決まることになっているため、改正案の内容では、病気で収入が急減した人の負担がさらに重くなり、受診控えにつながりかねないと懸念を示す。

保険料削減効果の政府試算についても、受診控えによる医療費の減少を前提にしながら、受診控えが患者の健康へ悪影響を与えることを評価していないと指摘。

こうした姿勢は患者の健康や生活を犠牲にするもので「看過できない」と批判し、憲法25条の生存権や13条の個人の尊厳を毀損しないよう、国に対し、来年8月の見直しは「ゼロベースで慎重に再検討すべき」と求めた。