【レビュー】手持ちイヤフォンが化ける!? TOPPING「DX1 II」。小型でバスパワー駆動、遊べるヘッドフォンアンプ
TOPPING DX1 II
いまどきのヘッドフォンアンプを考える
いまどきのヘッドフォンアンプといえば、USB DACの機能を備えることが一般的。音源はストリーミングが主流の現在、PC/スマートフォンとの接続を考えればそれが妥当だ。Bluetoothレシーバーを兼ねるヘッドフォンアンプも人気だが、帯域幅が広くロスレス伝送のUSB DACに音質の利があることは言うまでもなく、「いい音」を求めるポータブルオーディオファンにとってのマストデバイスのひとつだ。
TOPPINGの「DX1 II」(オープン/実売約24,750円)は、名称に「II」と付くことからわかるように、先代・「DX1」の機能強化版だ。USBバスパワーで動作する手のひらサイズのヘッドフォンアンプ兼DACというコンセプトはそのままに、バランス出力に対応、入力周波数を表示できるLEDディスプレイを装備した。
進化のポイントは、4チャンネル/フルバランス回路と独自のディスクリート低ノイズ基準電源技術の採用だ。クリーンな電源を使いDAC部から出力段まで一貫したバランス増幅を、という"アンプ屋"としてのこだわりを感じさせる設計は、上位モデルDX5 IIを彷彿とさせる。DX5 IIとは異なりシングル構成とはなるものの、DACチップに同じESSの新世代機「ES9039Q2M」を採用した点にも、両者のつながりを感じさせるところだ。
入力はUSB-Cと光デジタル、AUX(3.5mm 4極ヘッドセット端子、出力兼用)が各1基。出力はヘッドフォン2系統(3.5mmシングルエンド、4.4mmバランス)、光デジタル、ライン出力2系統(RCAシングルエンド、4.4mmバランス)各1基が用意される。ヘッドフォン出力は最大1,000mW×2@64Ω、2段階のゲイン調整に対応する。
リアパネル
フロントパネル
DACの対応フォーマットは、USB入力時がPCM 384kHz/32bitとDSD 256ネイティブ、光デジタル入力時が最大PCM 192kHz/24bitおよびDSD64 DoP。マイク入力もPCM 192kHz/24bitに対応、3.5mm端子が4極というスペックとあわせ、ゲーミング用途にも好適というのがTOPPINGの弁だ。
なお、電源用端子はUSB-Cが1基あるだけ。光デジタルなど他の入力を使用するとき、USB-CはDC 5V専用となるが、USB入力時はデータ/電源共用となるため、スマートフォンのようにDC出力が小さいデバイスと接続するときは、ひと工夫が必要になる。この点は、しっかりと認識しておきたい。
底面にはゴム製インシュレーターが
バスパワー動作という手軽さとハードル
PCに入っている音源を聴く場合、DX1 IIはUSB-CケーブルでつなげばOK、それだけで認識されUSB-DAC兼ヘッドフォンアンプとして動作する。とりあえず執筆用のMacBook Air(M2)につないでみたが、フォーマットが2ch/44.1bitのDACとして認識されていたため、Audio MIDI設定アプリで「2ch 32ビット整数 384.0kHz」に手動変更すると、DX1 IIのディスプレイに正しいサンプリングレートが表示されるようになった。
ノートPCにはUSB-CケーブルでつなげばOK
試聴には1DD + 2BAイヤフォン「SGENE Kaimei」をチョイス、ケーブルを4.4mm端子のSGENE Ameに換装したうえで利用した。選択の理由は2つ、ひとつはS/Nよくトランジェント良好なモニター寄りのサウンドキャラクタを評価したためだが、もうひとつの理由については後述する。
ナイロン弦バリトンギター1本の音を収録した「Moon Dial/Pat Methey」は、ナイロン弦らしい柔和な音が心地いい。弦が爪弾かれる刹那の微かな音もきちんとトレースされ、重厚な低域と繊細な中高域も丁寧に再現される。高域の雰囲気はESSらしさとでも言おうか、空気感というよりはキラキラ感、輪郭がはっきりしたサウンドだ。その「らしさ」をスポイルしないことがアンプ部設計の軸にあるのだとしたら、まずは成功と言っていいだろう。
続いてはストリーミング……折角だからiPhoneを使おうと考え、DX1 IIに付属のUSB-Cケーブルで直結したところ、認識すらされない。iPhone 17 Proの最大電源出力は4.5W(5V×0.9A)、DX1 IIはDC 5V/1.0Aを要求するからそりゃそうだろうという話だ。バスパワーは便利だが、スマートフォンを音源にする場合はデータ/電源を分離したUSBケーブルを用意するなど、導入のハードルが高くなる点は留意しておきたい。
ちなみに、DX1 IIで使えるOTGケーブルで、データ伝送と電源供給を分離するセパレーション設計の「TC-OTG-Y20」(実売約1,485円)も発売されている。
データ伝送と電源供給を分離するセパレーション設計の「TC-OTG-Y20」
このケーブルが手元に無かったので、ダメモトで間にUSBハブを挟んだところ、あら不思議……DX1 IIはiPhone 17 Proに認識され、特に支障なくFLAC 192kHz/24bitを再生できてしまった。おそらく、USBハブのディスクリプタ情報に関連してのことだろうが、大きな負荷をかけないよう注意して使えばDX1 IIをドングルDACライクに使えてしまう。これはちょっと嬉しい発見だ。年季の入ったiPad Pro(第3世代)はUSBハブなしで動作したから、直結を試す価値はあるだろう。
間にUSBハブをかませると、バッテリーなしでもiPhone 17 Proで動作した
とはいえ電源が安定しているほうが好ましいはずで、USBハブにモバイルバッテリーから給電(USB PD)しつつ再生開始。DSD 256のピアノ曲、千葉史絵の「Ringlight」は一音一音の輪郭がくっきり、高域方向の空気感もたっぷりに再現される。正直なところ、ハイエンド機で聴けるような引き締まった低域やS/N感はそれなりだが、この価格帯でこれだけ鳴れば十分だろう。
iPad Pro(第3世代)はUSBハブなしで動作した
手持ちのイヤフォン/ヘッドフォンが別物に!?
これだけの情報では、コンパクトでシンプルなDAC付きヘッドフォンアンプと片付けられてしまいそうだが、もうひとつDX1 IIにはTOPPINGの新しい試みが取り入れられている。それはハードウェアではなくソフトウェア、その名も「TOPPING Home Web APP」だ。
Webブラウザで管理やPEQ設定できる「TOPPING Home Web App」
このHome Web APP、要は各種コンフィグレーションとサウンドチューニングを施すためのWebアプリ。Webブラウザから直接ヒューマンインターフェイスデバイス(HID)との通信を可能にするWebHID APIをベースに開発されており、スマートフォン/タブレットには非対応だがそのぶんPCとの相性がいい。ディスプレイに表示される情報は初期値では音量(dB)だが、入力している音源のサンプリングレートに変えることもできる。細部まで日本語訳されているなど、作り込まれている印象だ。
ユニークなのは、10バンドのPEQ(パラメトリック・イコライザー)を用いたサウンドカスタマイズ機能。PEQを提供するオーディオデバイスは、TWSイヤフォンなどSoC/DSPを搭載する製品では珍しくなくなっているが、DX1 IIクラスのDAC兼ヘッドフォンアンプでは必携というわけでもない。設定したEQプロファイルは本体メモリーに保存してかんたんに呼び出せるから、自分流にカスタマイズして楽しみたい向きには、いい"遊び相手"になるはずだ。
PEQの設定は、自分で帯域曲線を操作し、ゲインやQ値を調整してもいいが、TOPPPINGが用意したソース曲線(PEQプロファイル)を利用してもいい。2026年9月現在、465ものプロファイルが公開されており(PEQ画面の「ソースFR」で選択)、少々大げさにいうと「手持ちのイヤフォンで他のイヤフォンの音を試す」ことができる。
「ソースFR」を探ってみると、AKGやB&W、Beyerdynamicなど、錚々たるブランドの製品名が並ぶ。すべてヘッドフォン/オーバーイヤーだが、いわゆる銘器の名もちらほら。その音を手もちのヘッドフォンで完全再現できるわけもないが(手もとのイヤフォンの周波数特性を測定しないのだから当然)、フラット傾向の、○○カーブに忠実と思われるイヤフォン/ヘッドフォンで再生すれば、ひょっとして? と思わせてくれる。それが、トランジェント良好なモニター寄りのイヤフォンを試聴用に選んだ理由だ。
ターゲットやソースFRを選んでPEQ設定し、本体のメモリに保存できる
試しに、AKGやSENNHEISERなど、じっくり聴いたことのあるブランドの製品をいくつかチョイス、しばらく聴いてみた。ああ、確かに、このヘッドフォンはハイ上がりだよなあ……とか、(装着中のイヤフォンに比べ)低域の量感多めだった記憶が……とか、PEQで左右される範囲内で音の印象が変わる。
もちろん、手もとのイヤフォンのトランジェントが改善されるわけではないし、別モノのように音質が激変するわけではないが、「自分好みの音」を追求するうえでのPEQ設定の参考になる。
この多数用意されたPEQプロファイルをどのように入手したかとTOPPINGに質問を投げたところ、すべて社内で作成しているとのこと。Webページや製品パッケージ裏面などで公開されている情報をもとに、データを手入力したものだという。
しかもこのHome Web Appには、他のユーザーが作成したPEQ設定を共有できる「Cloud PEQ」と呼ばれる機能が用意されている。こちらは、Cloud PEQの登録ユーザが投稿したPEQプロファイルをダウンロードすることができるから、前述した「ソースFR」にはないカナル型やインナーイヤー型のイヤフォンの音も楽しめる。実データへの忠実度は未知数だが、お気に入りの音と出会えればそれはそれで価値があるはずだ。
ドングル以上で据置未満、遊べるヘッドフォンアンプ
いわゆる「ドングルDAC」が人気の昨今。持ち運びが容易で鳴りっぷりのいいDAC兼ヘッドフォンアンプは気になる存在だが、指先ほどの基板でできることは限られるので、どうしても据置型に目移りしてしまう。
その点、このDX1 IIはちょうどいい立ち位置にある。ヘッドフォン端子は3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスの2系統用意されているし、バスパワーだからPCで利用する場合の電源はUSB-Cで賄える。サイズは石けん箱を一回り大きくした程度、持ち運べないほどではない。3.5mm端子は4極だから、マイク付きヘッドフォンが必須のゲーミング用途にも活用できる。
注文を付けるとすれば、ケーブルだ。DX-1 IIにはUSB-CとUSB C-Aケーブルが各1本同梱されているが、これではスマートフォンで使いにくい。前述したUSBハブを使う方法はスマートとはいえず、体験価値を下げてしまう。前述のデータ/パワー分離のUSBケーブルを標準で同梱することも、是非検討してほしいところだ。
同梱物一式
5V/1A程度の電力で動作するだけに、高インピーダンス/低能率のヘッドフォンを朗々と鳴らすというほどではないものの、32Ω程度のヘッドフォンでもじゅうぶん駆動できるし、ESS製DACらしい高域方向の雰囲気も楽しめる。
PCにヘッドフォン直差しから卒業したい、PEQをいじって自分好みの音を追求したい、それも限られた予算で……という向きにはちょうどいい、「ドングル以上で据置未満」な遊べるヘッドフォンアンプといえるだろう。
