《渋谷》「ゴミ箱に使用済みのおむつがパンパンに…」ポイ捨て「2000円」の新制度で街は変わったのか?「巡回員にはなかなか出会いません」【現地ルポ】
渋谷区は今年4月、渋谷、原宿、恵比寿の指定エリアで飲食料品を販売する対象店舗にごみ箱の設置を義務づけ、6月1日からはポイ捨てをした人への2000円の過料徴収を始めた。シルバーウィーク最終日、雨の渋谷駅周辺を歩くと、それでもごみがあふれていたが、間もなく迎えるハロウィーンでも、街のごみは注目されるだろう。新たな制度で渋谷は変わったのか。日々、街のごみに向き合う人たちに話を聞いた。
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「使用済みのおむつがパンパンに入っていた」
「効果を感じたのは最初の2、3週間だけですね」
渋谷駅近くの商業施設で7年間働く70代の警備員Aさんは、新しい制度が始まってからの変化をそう振り返った。
「制度が始まった直後は、ポイ捨てが一時的に減ったんですよ。でも、みんな慣れてしまったのか、今でも裏道に行けば、またゴミがポンポン置かれています」
区は1日最大60人の巡回員が24時間365日、区内全域を回るとしている。ポイ捨てを現認すれば、その場で2000円の過料を科す仕組みだ。区が9月24日に公表した6月から8月までの過料処分は計963件に上る。
だが、Aさんは、その巡回員にも「なかなか出会いません」と話す。
「区の面積に対して人数が少ないのではないでしょうか。路上喫煙を注意されている人は見たことがありますが、ポイ捨てを指導されている場面は、まだほとんど見かけません」
渋谷区では、今年6月に始まったポイ捨てへの過料とは別に、2019年7月から路上喫煙者にも2000円の過料を科している。
今回の制度で負担が増えたのは、ポイ捨てをする人への過料に加え、渋谷、原宿、恵比寿の対象エリアでは、飲食料品を販売する店舗などにごみ箱の設置が義務づけられた。区によると、7月末までに約1200店舗を調べ、約380店舗に設置や管理について指導。設置率は91%に達している。
渋谷区内でテイクアウト可能な飲食店を経営する40代の男性Bさんも、義務化を受けて店にごみ箱を置いた。ある日、中を見て驚いたという。
「使用済みのおむつがパンパンに入っていたんです。さすがに驚きましたね」
店の商品とは関係のないごみだった。Bさんは、捨てた人の気持ちも分からなくはないと話す。
「街にゴミ箱が少ないから、ちょうど見つけたところに捨てたくなる気持ちも分かります。それでも、飲食店のゴミ箱だけで受け止めるのは難しいので、店以外にも捨てられる場所を増やしてほしいです」
そう訴えた後、「渋谷はいろんな人が来る街ですし、ある程度は仕方ないのかな」とも漏らしていた。
なお、渋谷区によれば、対象店舗に回収義務があるのは「その店舗が販売した飲食料から発生するごみ」で、使用済みおむつなど店の商品と無関係なごみまで受け入れる義務はない。
「結局ポイ捨てする人はするので新しい制度に期待していません」
区は、公共のごみ箱についても2026年度内の設置を目指し、商店街などと調整を進めている。現状では、Bさんのように、ごみ箱を置いた店が、自店の商品と関係のないごみまで引き受けることもある。
渋谷区内の商店街で約20年間、事務局を務める60代の男性Cさんは、匿名を条件に取材に応じた。長く街のごみを見てきたCさんにとって、片付けが必要なのは、ニュースになるような日だけではない。
「渋谷では、ハロウィーンの翌日ばかりクローズアップされますが、給料日には飲みに出る人が増えるので、むしろその翌朝の方がゴミが多いこともあります」
Cさんは、新しい制度にも過度な期待はしていない。
「結局、ポイ捨てする人はするので新しい制度に期待していません。制度が無駄だとは言いませんし、取り組み自体はいいと思いますが、清掃活動をイベントにしたり、罰金を設けるなど義務化してしまうと、一時的なニュースにしかならない気がします」
Cさんによると、渋谷では約10年前まで、地域住民も参加する美化活動が続けられていた。そこで根づいた清掃の習慣は、今も地域に残っているという。
「人にはたくさん来てもらいたいですし、商店街としては、にぎわってほしいです。人が来ればどうしてもゴミは出るので、私たちは生活の一部として黙々と掃除を続けていくしかないんです」
「ごみ箱が減り、マナーを守りにくくなった面も」
一方で、Cさんはごみ箱そのものが減ってきたことにも目を向ける。
「昔は今よりゴミ箱が多く、コンビニの店外にも置かれていました。利用する側もルールを守り、ペットボトルとふたを分けたり、中身を捨ててから入れたりしていたんです。その後テロ対策やコロナなどで騒がれた時期にゴミ箱が減って、捨てる場所が減り、規制ばかりが強くなったことで、かえってマナーを守りにくくなっている部分もあるのかもしれません」
店と客の間でも、ごみを誰が片付けるかを意識するようになった。センター街近くの飲食店で3年近く働く20代の女性Dさんは、店内で出たごみは片付けるが、それ以外は客に任せているという。
「とくにタバコについて意識がかわりました。店には灰皿も置いていないので、喫煙場所を聞かれたら喫煙所を案内していますが、店のそばにある自動販売機の隙間などで、勝手に吸う人がほとんどです。ポイ捨てや路上喫煙で罰金を科されても店では責任を負えないので、サービス以外のことは『自己責任でお願いします』と、こちらから伝えるようになりました」
雨のシルバーウィーク最終日にも、ごみがあふれていた渋谷。ハロウィーンに多くの人が訪れれば、ごみ箱も取り締まりも改めて注目されるだろう。
ただ、前出のCさんが掃除を続けてきたのは、イベントの翌朝だけではない。街がいつもの一日に戻った後も、ごみは出る。その片付けを誰が担うのかという問題は残っている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
