〈1カ月で3度浸水〉「もう漫画でしょ?」営業再開の“前日”にまた水没…千葉のラーメン店主「心は折れています。でも辞められない」
8月の千葉豪雨、9月上旬の大雨、そして21日に関東地方に接近した台風25号。千葉県大網白里市の「ラーメンみたけ」は、1カ月余りで3度の水害に見舞われた。店を営む池田経雄さん(73)は「心は折れていますよ。でも、ラーメンを食べたいと言ってくださるお客さんもいらっしゃるし、従業員もいます。辞めるわけにはいかないんです」と胸中を語った。
【画像あり】「被害額は4ケタ万円か」浸水でプカプカと浮く調理器具、カウンター、それでも復旧営業再開に向けて作業する店主ら
脱サラ後、25年地元で愛されたラーメン屋が3度の被災
2001年、店主の池田経雄さん(73)はラーメン好きが高じて脱サラし、「ラーメンみたけ」を創業した。地元の新鮮な食材を使ったラーメンは、長年、地域で親しまれてきた。当初はJR大網駅の高架下に店を構えていたが、2025年4月、徒歩約10分の現在の場所に移転した。
最初の被災は8月13日の千葉豪雨だった。大網駅の近くを流れる小中川と金谷川が越水し、低地にある店の周辺も広く浸水した。池田経雄さんが振り返る。
「店を閉めるのは午後9時から9時半ごろです。その頃も雨は降っていたので、濡れては困る食材やレジなどを高いところに置いて店を出ました。家に帰ってから雨がさらに強くなり、店が心配でしたが、とても近寄れる状態ではありませんでした」
翌朝5時に店へ向かった。広い駐車場とドッグランがある敷地の周囲には、泥色の水が湖のように広がっていたという。池田経雄さんは膝まで水につかりながら店内へ入った。
「最初に店を見たときは、正直『またか』という気持ちでした。実は大網駅近くで店をやっていた3年ほど前にも、浸水被害に遭っているんです。ただ、今回はこれまでで最もひどい被害でした」
被害金額は4ケタ万円単位か
店内の水位はカウンターの上に迫る約90センチ。大型の冷蔵庫やレジ台は浮いて倒れ、厨房機器もほとんど使えなくなっていた。水が引き始めたのは昼頃。それから家族や従業員と復旧作業に取りかかった。
「機材だけでなく、床もクロスも駄目になりました。周囲でも被害が広がっているので業者さんは手いっぱいで、復旧には時間も費用もかかります。お客様が安心して来られるよう、家族や従業員たちと店内外の片付けや清掃をして、一日でも早く営業を再開したいと思っていました」
2、3週間かけて、ようやく9月5日に営業を再開した。だが、その2日後の大雨で再び浸水する。店はもう一度休業し、9月22日の再開を目指して準備を進めていた。そこへ台風25号が接近した。
「またイチからの復旧作業です。被害金額はまだきちんと計算できていませんが、4ケタ万円単位になると思います。保険には入っていますが、どこまで補償されるのかは分かりません。今のところ移転は考えていません。とにかく再開したい。それだけです」
ネット上には〈店を構えるときに想定していない自分が悪い〉〈何も対策しないからだろ〉〈移転すればいいだけ〉といった書き込みもある。一方、池田経雄さんは近所で常連客とすれ違うたびに、「一日でも早い再開を待ってる」「早く営業してほしい」と声をかけられるという。
「先の読めない天災ではあるんですが、それでも店が浸水しているのを目の当たりにするたび、情けない思いになります。『一国一城の主』ではないですが、私にとって店は城のようなものです。その城を潰されているような心境になりますから」
「もうやめてくれ、勘弁してくれと祈るしかありませんでした」
店には浸水を防ぐための、高さ1メートルの止水板も設けた。それでも、台風による3度目の浸水は防げなかった。同店の店長の池田隆宏さん(47)が当夜のことを話す。
「台風の日は約70センチ浸水しましたが、どこから店に水が入ってきたのかは分からないんです。止水板を立て、その前に防犯カメラを置いて、家に帰ってからも入り口の状況を確認していました。30分おきくらいに見ていたのですが、しばらくは止水板が耐えていたんです。ところが、Wi-Fiの機器が水没してしまったのか、突然カメラに接続できなくなって……」
翌日には営業を再開するはずだった。隆宏さんは心配になり、夜のうちに店へ向かった。
「『もうやめてくれ、勘弁してくれ』と祈るしかありませんでした。店の近くまで行くと、僕の股のあたりまで水が来ていました。暗かったこともあり、それ以上は確認できませんでしたが、その時点で営業はできないだろうと思いました」
朝、店内の浸水を確かめたときは、信じられなかったという。
「もう、嘘だって。そんなことある? この短期間で3度目って、もう漫画でしょ? そんな気持ちになりました。今も台風が近づいていますし、4度目がないとは言い切れません」
復旧で特に大変なのは、冠水した駐車場に残る泥の清掃だ。水をかけ、こすりながら落とす作業には数日以上かかる。スタッフ十数人が入れ替わりで手伝ってくれたという。記者が訪れた日も、池田隆宏さんは復旧作業に追われていた。
「明日オープンというときに沈んだんです。毎回、心は折れそうですよ、本当に。でも『営業終了しましょうか』というわけにはいかない。僕らも明日から食べていけなくなるし、従業員さんも働けなくなってしまう。申し訳なく思っています」
それでも作業を手伝う仲間がいて、差し入れを持って来る人がいる。信号待ちの車から声をかけてくる客もいるという。
「『再開待ってるから』って言ってくれるんです。だから僕らは、なんとか頑張れている」
店は10月中の営業再開を目指して復旧作業を続けているが、正確な時期のめどは立っていないという。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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