『千と千尋の神隠し』釜爺の仕事は国家資格?「ボイラー技士」として働いたらどんな生活になるか検証してみた

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作中の舞台となる油屋のボイラー室の仕事を一手に引き受けている、髭面に丸サングラス、6本腕が特徴の老人「釜爺」。実は彼の担当する仕事は、現実世界では「ボイラー技士」という国家資格にあたるのをご存知でしょうか?この記事では「ボイラー技士」について解説していきます。

「ボイラー技士」ってどんな仕事?

作中では、油屋の地下にあるボイラー室(窯場)で、伸縮自在な6本の腕を使いこなす釜爺がひとりでボイラーを担当しています(石炭投入はススワタリが従事)。現実世界において、これほど大規模なボイラーを扱い、現場全体を管理する仕事は、国家資格が求められる重要なポジションにあたります。
 

ボイラーを扱う現場で必要な国家資格

一定規模以上のボイラーを扱うには、国家資格を持つ「ボイラー技士」でなくてはなりません。作中の釜爺の立場を踏まえると、彼は単なる作業員ではなく、現場の指揮・管理を務める「ボイラー取扱作業主任者」に選任される要件を満たしていると考えられます。
主任者に選任されるには、「ボイラー技士免許」という労働安全衛生法に基づく国家資格取得が必要です。等級は二級・一級・特級の3種類あり、担当するボイラーの規模によって必要資格が異なります。また、ボイラー関連の免許には「ボイラー溶接士免許」「ボイラー整備士免許」もあり、それぞれ扱うボイラーの種類や業務が異なります。
 

「ボイラー技士免許」を取得するには

取得条件は、厚生労働大臣が指定した指定試験機関「(公財)安全衛生技術試験協会」が行うそれぞれの免許試験に合格することです。
ボイラー技士免許は一度取得すれば更新の必要はありませんが、ボイラー溶接士免許は2年ごとに更新が必要なうえ、免許取得には実技講習の受講が義務付けられています。
表1

関連免許 有効期限 更新内容 ボイラー技士 なし なし ボイラー溶接士(特別・普通) 2年間 【普通・特別共通】
・溶接検査等の合格による更新
・溶接技能証明による更新
・試験片(テストピース)による更新
【普通のみ】
・電気事業法に基づく更新 ボイラー整備士 なし なし

出典:厚生労働省「ボイラー溶接士の免許更新申請について」を基に著者作成
また、ボイラー技士免許は、労働安全衛生法に基づいた3種類の免許のうち、作業主任者関係と就業制限関係の免許を兼ねています。

釜爺がボイラー技士として働いた際の年収は?

厚生労働省の「職業情報提供サイト(job tag)」によると、令和7年賃金構造基本統計調査のボイラー技士(ボイラーオペレーター)の年収全国平均は452万3000円とされます。
国税庁の「令和6年分民間給与実態統計調査」による一般労働者の平均給与(478万円)と比較すると、全国平均よりやや低めの水準にあるようです。
ただし、年収は所有する等級や勤続年数、夜勤手当の有無などで大きく変動するため、一概に低いとは限りません。このことから、縁の下の力持ちとして長年務めている釜爺の油屋での稼ぎは、決して悪くない水準であると言えそうです。

もし釜爺が千尋と一緒に現実世界に行ったら……

釜爺は、作中でもマルチタスクを難なくこなす描写が見られるため、一度仕事を覚えてしまえば職には困らないでしょう。現実世界に来た場合でも、ボイラー技士として「ボイラー取扱作業主任者」クラスになるのは間違いないと考えられます。
 

釜爺はどこで働ける?

ボイラー技士の働き方は、ボイラーが設置されている事業所に直接雇用される場合と、ビルメンテナンス専門の企業に雇用されて、さまざまな現場に派遣される場合に分かれます。
ボイラーが必須となる施設は多く、製造工場や大規模なビル、商業施設、病院やホテルなどが該当します。彼の場合、油屋に住み込みで常駐していたことから、ひとつの施設に腰を据える直接雇用を好むかもしれません。
 

大容量ボイラーは使われなくなってきている

ボイラー技士免許の特級になると大容量のボイラーを扱えますが、近年は省エネ化・脱炭素化などが主軸とされ、効率的で資格不要な小型ボイラーへ移行する動きが増えています。
とはいえ、既存設備や工場等において大容量のボイラーを扱える有資格者の需要が完全になくなるわけではなく、他の技術職同様に人手不足が囁かれているため、有資格者の価値は依然として保たれています。

まとめ

油屋での業務を鑑みても、あの世界に資格という概念があるのかは分かりません。しかし、現実世界に来た釜爺が国家資格のボイラー技士として働けるスキルを持っているのはほぼ確実といえるでしょう。
決められた業務内容で突発的な残業も比較的少なく、一定の需要が担保されている業種であることから、油屋のように急に叩き起こされることもなく、安定した生活を送れるのも利点の一つです。現代社会の技術・知識を取り入れアップデートした場合の釜爺は、ボイラー技士として現実世界でも即戦力として重宝されるかもしれません。
 

出典

厚生労働省 愛知労働局 ボイラー溶接士の免許更新申請について
厚生労働省 職業情報提供サイトjob tag ボイラーオペレーター
厚生労働省 東京労働局 労働安全衛生法に基づく免許の交付要件
国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査 2 平均給与(16ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー