この記事をまとめると

■1997年に登場した初代プリウスは革命的な1台だった

■2003年に登場した2代目は世界中で支持されたハイブリッドの先駆け的存在だった

■今のハイブリッドカーと比較するとまだまだ荒削りなところも目立った

広い世代に受け入れられたのは2代目のプリウスから

 1997年、21世紀へGO……という意味合いを込めて、215万円で発売されたのが、世界初の量産ハイブリッドカーである初代プリウスだった。5ナンバーサイズの4ドアセダンであり、シームレスなフロントフェイスも、ハイブリッドカーを象徴するデザインといえた。THS(TOYOTA Hybrid System)と呼ばれる駆動ユニットは、1.5リッターエンジン+モーター。燃費性能は当時の10・15モードながら28.0~31.0km/リッターと、その時代としては驚異的なものでもあった。乗り心地はふんわりとしたフランスのクルマ的なもので、意外にも上級感ある走りが魅力でもあった。

 そして2003年8月に、2代目プリウスが登場する。初代のセミノッチバック4ドアセダンから、Cd値0.26という空力性能に優れた「トライアングルモノフォルム」とトヨタが紹介する、5ドアハッチバックへとボディスタイルを変更した。具体的には、真横から見たときのキャビンを中心に、三角形をモチーフとするエモーショナルなデザインである。初代に対してホイールベースを150mm伸ばしたボディは、全長で135mm、全幅で30mm拡大され、全長4445×全幅1725×全高1490mm、ホイールベース2700mmと、扱いやすい大きさに収まる3ナンバーサイズになっている。

 インテリアも刷新された。先進装備を多数用意した未来感あるデザインと、リビングのようなくつろぎ感を融合した空間、デジタルメーターなどが新しいプリウスらしさを強調した。もちろん、大ヒット作となったのである。

 THS IIとなった駆動ユニットは、1NZ-FXE型1.5リッターエンジンが77馬力、11.7kg-m、3CM型モーターは68馬力、40.8kg-mにまで進化(システム最高出力111馬力)するとともに、世界最高レベルの低燃費35.5km/リッターを達成した。

 さらにブレーキ制御(VSC、ABSなど)と電動パワーステアリングを協調させた、世界初のステアリング協調車両安定制御システムのS-VSCを新採用。これは滑りやすい路面で旋回するときなどで、車両バランスを立て直す方向へステアリングトルクをアシストし、限界に達したときの安全性を高める機能である。具体的には、滑りやすさの異なる路面をまたいで走行する際のまたいでブレーキをかけるときの制御、オーバーステアとなったときの制御、アンダーステアとなったときの制御で構成される。2007年には新燃費基準の燃費表示、JC08モードで29.6km/リッターを達成している。

 先進装備や機能では、世界初搭載のインテリジェントパーキングアシスト、スマートエントリー&スタート、プッシュボタン式スターター、アイドリングストップのときでも快適な空調が得られる電動インバーターエアコン、モーターのみで静かに走れるEVドライブモード(55km/h以下で数百mから2km程度をモーターで走れた)などを採用した。まさに最新技術のショールームだったのである。そして「HYBRID SYNERGY DRIVE」のブランド展開を開始したのも、この2代目プリウスからだった。

 グレード展開はベースのSと、上級の本革巻きステアリング、キーレスオープン(スマートエントリー)、CDチェンジャー、アルカンターラ張りシート(後期)などの豪華装備を追加したG、そして上級オプションパッケージとしてツーリングセレクションを用意していた。

まだまだ荒削りなところがあった

 その2代目プリウスのチーフエンジニアであった井上雅央氏は、2代目プリウスを世に出す際に、こんなメッセージを発信していた。

「ハイブリッドカーを広く世界に普及・浸透させるため、新型プリウスには、これまで以上の環境性能に加えて、クルマ本来の魅力である、所有する喜び、運転する楽しさ、走る気もちよさをお客様に存分に味わっていただけるクルマにしたいと考えました。エコとパワーを同時に、かつ飛躍的に進化させる『ハイブリッド・シナジー・ドライブ』のコンセプトのもと、新世代トヨタハイブリッドシステム『THS II』をはじめ、未来的なスタイリングや心地よいハンドリングなど、数々の魅力的な先進機能や装備を採用しました。“先駆け”に由来するプリウスの名にふさわしい、時代をリードする革新的なクルマに仕上がったと確信しています」

 そしてなんといっても2代目プリウスは、新しいモノ好きのハリウッド俳優たちの目にとまり、じっさいにレオナルド・ディカプリオなどのハリウッドスターがアカデミー賞授賞式にプリウスで乗りつけ、レッドカーペットを歩く様子が報じられ、環境意識の高い層に関心が広がっていった。「セレブの乗るクルマは地球に優しいハイブリッドカー」とばかりに愛されたハイブリッドカーでもあったのだ。

 そんな2代目プリウスに乗ってみた記憶を辿れば、エレクトロシフトマチックは最初こそ戸惑うものの、慣れれば簡単だった。その先進性と“足踏み式パーキングブレーキ”との新旧の違和感がつきまとったものだ。加速性能はやんわりとしており、トルキー。トヨタによれば2リッターNAエンジン並みの加速だそうだが、その加速力を発揮できるのはバッテリーに十分な電気があり、モーターアシストが作動するときに限られる。駆動バッテリーが減ってしまうと、エンジンはバッテリーの充電に専念するため、とくに山道の上りでは加速力に期待できなくなるというわけだ(平坦路では問題なし)。

 標準モデルの乗り心地は、初代ほどのマイルド感はなくごく普通であった。いや、路面によっては足まわりがちょっとドタバタするのが気になったことを思い出す。一方、ツーリングセレクションは、たしか欧州仕様の足まわりがおごられ、タイヤも15インチから16インチにサイズアップされるため(回転半径は大きくなる)、より引き締まった、フラットライドとなるのが特徴だった。

 ただし、当時の回生ブレーキにはまだまだ不自然さがあったと記憶している。今のプリウス、というか、今のトヨタのハイブリッドカーほどの粘り強いEV走行距離も得られなかったのも本当だ。とはいえ、今ではごく一般的になったハイブリッドカーだが(ストロング、マイルドを含む)、この時代にハイブリッドカーに乗るというのは、先に紹介したハリウッドスターだけでなく一般のクルマユーザーにとっても、「環境を考えてクルマに乗っていますよ」という一つのステイタスであり、先進的で知的な選択でもあったのだ。