受刑者の「服」が変わる?男女共通カラーも模索、法務省が4年にわたり検討…獄中からは「お菓子に使ってほしい」の声も
受刑者が刑務所などで着用する服について、法務省がリニューアルを検討していることが、弁護士ドットコムニュースの情報公開請求でわかった。一部の受刑者には、新たな服を試験的に着用してもらったという。
法務省は取材に「やるかどうかも含めて検討中」と回答。塀の中からは「もっとほかに改善してほしいことがある」との声も聞かれる一方、法務省のある職員は「『衣』によって受刑者のイメージが決まる」と見直しの意義を語る。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●きっかけは矯正局長の「示唆」
開示された文書によると、きっかけは2022年11月ごろ、当時の矯正局長が、拘禁刑の導入を見据えて、刑事施設に収容されている人たちが着る服の見直しを示唆したことだった。
その後、矯正局は「被収容者被服検討委員会」を設置し、2023年1月に初会合を開催。第2回の会議資料には、「『拘禁刑の創設を見据えた被服の見直し』を一つのゴールとして設定」と記されていた。
今年4月にあった第10回の会議の資料では、見直しの「対策・効果」として、「LGBTQ・ジェンダーレスに対する関心の高まりを踏まえ」「高齢者、外国人拘禁受刑者に対応」「拘禁刑施行による矯正処遇一新の意識付け」「コストの節減」「管理者の職務負担軽減」などが挙げられている。
●新デザインは「黒塗り」、男女共通の明るいカラーも
具体的にどのようなデザインの服が検討されているのか。開示された文書は、大部分が黒塗りにされており、詳細は不明だ。
現在、受刑者が着る服の色は、主に男性が黄緑系、女性がピンク系となっている。
関係者によると、こうした男女別のステレオタイプ的なイメージを解消する狙いもあり、新たな服では男女共通の明るいカラーを取り入れることも模索されているという。
●千葉刑務所で試行、次は加古川刑務所か
2025年5月からは、千葉刑務所に収容されている一部の受刑者を対象に、新たな服が試験的に導入された。
SSから3Lまでの6サイズを用意し、1人につき2点を貸与。家庭用洗濯機と乾燥機だけを使って毎日洗濯する条件で、使い勝手を検証したとみられる。
利用した受刑者と職員を対象に、着心地や体感温度、保安上の懸念点、男女共通化への受け止め、サイズ展開の満足度などを尋ねるアンケート調査も実施するよう指示されていた。
2026年4月の会議資料では、次の試行場所として、女性受刑者も収容する加古川刑務所とする案が示されている。
●当初は「2025年度に本格導入」計画も…法務省「未定」
ただ、法務省内部で検討が始まってから約4年が経つものの、予算措置を含め、具体的な導入の見通しは立っていない。
検討開始時のスケジュール表では、2024年度に試行導入と検証を終え、拘禁刑がスタートする2025年度に「本導入」する計画が描かれていた。
本格導入の見通しについて、法務省矯正局の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「未定で、決まったわけではありません。やるかどうかも含めて検討中です」と回答した。
●受刑者「服よりも日々の食事やお菓子に予算を」
服の見直しをどう受け止めているのか。獄中の受刑者たちに尋ねると、さまざまな意見が寄せられた。
千葉刑務所に収容されている男性受刑者は「冬はとにかく寒いので、厚手の服がほしい。今の服のデザインはダサいが、機能性は問題ない」と話したうえで、こう要望した。
「個人的には、服よりも日々の食事や祝日のお菓子に予算を使ってほしいなと思います」
寒冷地にある刑務所で服役する別の受刑者は、「ここではパジャマを上しか脱げず、下は通年、長ズボンなので、脱衣させてくれないなら夏用を作ってほしい」と語った。
●法務省職員「衣食住の『衣』だけ変わってこなかった」
なぜ、いま受刑者の服を見直す必要があるのか。法務省のある職員は、今回の検討について次のように話した。
「服は、『衣食住』の最初に来るもの。刑務所を運営するための法律や受刑者の処遇プログラムは見直されてきたが、『衣』はこれまで長い間、クローズアップされてこなかった。それに、着るものによって受刑者集団のイメージが決まる」

