「俺の代で終わりでいいや」からの心境変化…NHK「ファミリーヒストリー」で「9歳で生き別れた母」の真実を知った武井壮の告白

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少年時代に両親が離婚して以来、母とは一度も会っていないという武井壮さん(53)。9月22日に放送したNHK「ファミリーヒストリー 武井壮」では、武井家のルーツをたどるとともに、生き別れた母・京子さんの行方に迫った。番組の取材で明らかになったのは、京子さんが亡くなっていたこと、再婚していたこと。そして胸を締め付けられる真実…。44年の時を越えて知る母の姿に、武井さんは涙が止まらなくなった。番組出演を経て、今どんな気持ちでいるのだろうか。

ファミリーヒストリー「武井壮 ~生き別れた母の行方」

NHK ONEで9/29まで見逃し配信中

【前編を読む】小学生のときに生き別れた母、24歳で急逝した兄…武井壮が53歳で“ファミリーヒストリー”にたどり着くまで

母の人生を初めて知って

武井さんは母への思いをこう語る。

「何より本当に愛情深く、幼少期から育てていただいた。産んでもらって、育ててもらった時間だけで一生分感謝ができている。」

思いがけず知ることになった、生き別れた母の半生。スタジオ収録の後、武井さんは母の再婚相手である男性と初めて対面した。「ファミリーヒストリー」がきっかけで出会ったふたりは、どんな時間を過ごしたのか。番組ではその模様も描かれている。

「僕が二十歳の頃、母は知人の紹介で男性と出会って、それから一緒になった。新しいパートナーが母に愛情を注いでくれ、ともに人生を過ごしたということがわかって、何よりもほっとしました。母が僕たちに連絡をしてこなかった理由がなんとなくわかりました。新しい人生が幸せだったんだろうな、と。色んな事を考えていましたが、安心したし、なんのしこりも残らない形の結末で、すっきりとしています。」

母の真実を知りあふれた涙… そのワケとは

母・京子さんは再婚した夫に、子どもがいることを伝えていなかった。それでも、母・京子さんが秘めていた武井さんへの思い。その証が今回、「ファミリーヒストリー」では明らかにされている。番組の収録でそれを知った武井さんは、あふれる涙を抑えることができなかった。

「子ども二人を残して家を出るって、相当のことだと思うんです。うちの母は優しくて愛情あふれる人だったと僕は認識しているから、子どもと引き離されるのは本当につらかったと思う。たぶん、いろんなことを考えたはずです。僕らが恨んでいるんじゃないかとか、なんで会いに来てくれないんだろうと思っているんじゃないかとか。」

「子どもがいることを伝えなかったのは、きっと背景に新しい旦那さんの優しさがあったんだと思います。母が気丈だったとかそういうことではなく、幸せだったから、言わなくてもいいと思えたんじゃないかな。

僕の涙は、会いたかったとか、そういう涙じゃない。本当によかったな、母が幸せな人生にもう一度なれて、と。僕らに会わなくても十分幸せでいられたから、会わなかったんだと思います。」

武井さんの心には、幼少期に愛情を注いでもらった記憶が残っている。今も鮮明に焼きついているのが、ある騒ぎを起こしたときのこと。

「父親は美容師の仕事が忙しかったり遊び呆けていたりして、なかなか家に帰ってこなかった。母もピアノの先生をやっていて、留守がちな時期があったんです。鍵っ子みたいに過ごしていた頃、学校から帰ってきた時に母がいて、一緒に買い物に行ける日は楽しみだった。ある日、『今日は帰ってきたらいるの?』と聞いたら、『今日は家で待ってるよ』と母親が言う。学校が終わって走って帰ると、母親がいなかった。1時間、2時間待っても帰ってこない。僕は『ひどい』と思って、長文の手紙を書いた。寂しくて悲しくて、恨み言をいっぱい書いて家出したんです。自転車で遠くに行って、公園でぼやっとしたり、駄菓子を買ってちびちび食べたり。暗くなって怖いから帰ろうと思って、夜9時くらいに帰ってきたら、捜索されていた。拗ねて、ちょっと困らせてやろうと思っただけだったと思うんですが、母親は泣き崩れて、『ごめんね、ごめんね』と言いながら、抱きしめてくれたのを今もはっきり覚えています。」

「小さい頃の母親は、いつも『壮ちゃん、壮ちゃん』と言って可愛がってくれた優しい人。でも、大人になって対面したらどんな人だったのか。人間性を知らないんです。母がどんな人だったかを知らずに死ぬのは嫌だなと思っていたんですよ。」

番組を通して、武井さんは母の人柄にも触れることになった。

「母も僕らも、違う場所でつらい気持ちを抱きながら、感受性や人間性が育っていったと思う。そうして母は良いパートナーと出会って、亡くなるまで添い遂げることができた。僕はそれを知って気持ちが晴れて、自分のこれからの人生がよりよいものになりそうだと感じました。」

はじめて芽生えた「家族を持つ未来」

ファミリーヒストリー」で家族の歴史と母の真実を知り、武井さんにはある心境の変化があったという。

「以前は、ずっと一人で生きていってもいいと思っていたんです。家族というものに対する複雑な思いもあって、『自分は家庭を持てるんだろうか』という疑問があった。でも年齢とともに家族や、つながりの大切さを感じるようになって。それで『ファミリーヒストリー』に興味が湧いた。番組に出演して、『俺の代で終わりでいいや』と思っていた気持ちが変わりました。人生は苦しいこともたくさんあったけど、乗り越えてきて、今は全部すばらしいなと思う。兄貴の分も生きてきて、この人生の価値は僕だけのものではなかった。」

今は、家庭を持つ未来を前向きに捉えられるようになった。

「自分がもし子どもを持つことができたら、その子が『人生ってすばらしいな』と感じてくれることが、僕が生み出せる一番のエンターテインメントになるのかもしれない。子どもが世の中で何をしてくれるか、楽しみにしながら死んでいくのもいいかもしれない。自分の考えている小さな不安よりも、大きな希望がそこにはあるかもしれない。そんなふうに思えるようになったんです。番組に出演して、自分の人生にプラスになるものをたくさんいただきました。今は、自分のファミリーヒストリーをつなげていけたら最高だと思っています。まあ残念なことに、まだ相手もいないただの御託なんですけどね。」

武井壮さんのルーツに迫った「ファミリーヒストリー」は現在、NHK ONEで9/29まで見逃し配信中。

ファミリーヒストリー「武井壮 ~生き別れた母の行方」

放送1週間後からはNHKオンデマンドで配信します

【前編を読む】9歳で母と生き別れ、24歳で兄を亡くした…武井壮が50代で”ファミリーヒストリー”にたどり着くまで