〈キャバ倒産〉「昔みたいに二次会はない」「東京の有名店とは別の商売」ガールズバーとの競争、インバウンド恩恵も届かず…地方キャバクラを襲う“四重苦”
飲食店の倒産が過去最多ペースで増えている。2026年1~8月は701件で、前年同期を8.8%上回った。なかでも厳しい状況に置かれているのが、キャバクラなどの「夜の街」だ。宴会・接待需要の変化や物価高、人手不足が重なるなか、地方の店はさらに厳しい集客環境に直面している。
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「二次会でキャバクラ」がなくなった
東京商工リサーチは、インバウンド需要で有名店や観光地が活況を呈する一方、そうした需要が及ばない「町の飲食店」では、食材費、光熱費、人件費などの上昇が経営を揺るがしていると分析する。
夜の店も例外ではない。
2024年上半期には「バー、キャバレー、ナイトクラブ」の倒産が47件と、過去10年間の上半期で最多を記録。そのうちキャバクラ、ラウンジ、ナイトクラブなども10件に達していた。
東京の歌舞伎町や六本木、大阪・北新地などでは、今も高額なシャンパンが飛び交い、人気キャストがSNSで派手な売り上げを発信する。
しかし、そうした一部の繁華街とは対照的に、地方都市では別の景色が広がっているという。
関東近郊の地方都市でキャバクラを3店舗経営する30代の男性はこう話す。
「やっぱり以前よりお客さんは減りましたね。東京の有名店みたいな景気のいい話も聞きますけど、地方ではそこまでの勢いはないと思います。特に普通の会社員のお客さんが、以前ほど夜遅くまで飲まなくなった感じはあります」
地方のキャバクラにとって大きいのが、会社員の飲み方の変化だ。
かつて忘年会や歓送迎会、取引先との会食が終わったあと、「もう一軒」とキャバクラやスナックに流れるケースは珍しくなかった。
ところがコロナ禍を境に、大人数での宴会や接待が減少。飲み会そのものが復活しても、「一次会で帰る」という人は増えた。
東京商工リサーチも、夜の飲食店の苦境について、コロナ禍を経て宴会や接待需要が変化したことを要因のひとつとして挙げている。
男性経営者も、店を経営するなかで変化を感じているという。
「前は会社の飲み会があると、そのまま5人とか6人で来てくれることが結構あったんですよ。今は飲み会があっても一次会で終わることが多いですし、上司が若い社員を連れてくることも減りました。二次会で自然に流れてくるお客さんは、かなり少なくなったと思います」
観光客が増えてもキャバクラには流れてこない
客が減る一方で、経営コストは上がる。
2026年1~8月の「物価高倒産」は583件と前年同期比22.4%増。人件費の上昇や人手不足も企業経営を圧迫しており、8月の「人手不足」倒産は同月として過去最多の32件だった。
キャバクラでは酒代や光熱費だけでなく、キャストの人件費も大きな負担になる。
「お酒も光熱費もいろいろ上がっています。でも料金を一気に上げるのは難しいんですよね。セット料金が少し上がっただけでも、お客さんは敏感です。一方で女の子の時給を下げるわけにもいかない。むしろ人を集めるなら、それなりの条件を出さないと来てくれません」
全国の観光地ではインバウンド需要が大きな支えになっている。しかし、その恩恵は均等ではない。
東京商工リサーチは2026年の飲食業について、インバウンド需要で有名店や観光地がにぎわう一方、小規模な飲食店では訪日客需要を取り込めず、物価高や人件費上昇に苦しむケースが目立つと指摘している。
キャバクラの場合は、一般的な飲食店以上にハードルがあると男性は話す。
「外国人のお客さんもたまには来ます。でも、居酒屋みたいに観光客が増えればそのまま客数が増える商売ではないですよね。料金の仕組みも説明しないといけないですし、結局は女の子との会話を楽しんでもらう店なので、言葉の問題は大きいです」
もちろん訪日客向けの接客に力を入れる店もある。
ただ、地方の店で外国語を話せるキャストを常に複数確保し、外国人客向けに集客するとなれば、簡単ではない。
「東京とか観光客が多い場所なら、外国人向けのやり方もあるんでしょうけど、地方ではそこに人件費をかけられる店は多くないと思います。近くのホテルに外国人がたくさん泊まっていても、それがうちの売り上げにつながるかというと、ほとんど別の話ですね」
つまり同じ夜の繁華街でも、インバウンドを取り込める地域・店舗と、従来の地元客に依存する店との間で差が開きやすくなっている。
ガールズバーとの競争、働く女性の選択肢も増えた
もうひとつ大きいのが、夜の店の選択肢が増えたことだ。以前なら「女性と話しながら酒を飲む店」としてキャバクラが代表的な存在だったが、現在はガールズバーやコンセプトカフェなど、異なる料金体系や接客スタイルの店が数多くある。
「若いお客さんは特にそうですけど、キャバクラじゃなくてもいいんですよね。ガールズバーのほうが気軽だし、料金も抑えられる。昔より選択肢が増えたので、キャバクラまで来てもらう理由を作らないといけなくなりました」
競争は客の奪い合いだけではない。働く側の女性にとっても選択肢は増えている。
「キャバクラだと、お客さんと連絡を取ったり、同伴したり、店の外でもある程度やることがあります。それが嫌なら、カウンター越しの店で働くという選択肢もありますから。女の子を採用するのも前より大変になりましたね」
2024年上半期に倒産した「バー、キャバレー、ナイトクラブ」のうち、原因の93.6%を「販売不振」が占めた。また、倒産企業の95.7%は従業員10人未満だった。夜の街の不況は、とりわけ小規模店に重くのしかかっている。
男性経営者は、単に一つの業態が苦しくなっているだけではないと感じている。
「一軒閉まったから、そのお客さんが隣のキャバクラに来るかというと、そうでもないんですよ。そのまま夜に出なくなる人もいる。店が減って、街を歩く人が減って、さらに店が減る。その流れはちょっと感じますね」
2026年8月の飲食業倒産は80件。8月としては過去30年間で最多だった。特に増えているのは、日常的に利用されてきた小規模な店舗だ。
コロナ禍を経て変わった二次会文化。物価高と人件費上昇。インバウンド需要の地域・業態による濃淡。そして、若い客や働く女性をめぐる新業態との競争。
華やかなイメージとは裏腹に、地方のキャバクラを取り巻く環境は、じわじわと厳しさを増している。
取材・文/集英社オンライン編集部
