愛らしい動物や赤ちゃんなどを見た際、可愛いと思う一方で、思わず「いじめたくなる」「力いっぱい握りしめたくなる」といった相反する衝動を抱くことがある。この心理現象は「キュートアグレッション(キューアグ)」とも呼ばれ、近年注目を集めている。なぜ可愛いものに対してこのような一見攻撃的とも言える気持ちが生まれるのだろうか。

【映像】10秒でわかる「キューアグ」

 ニュース番組『わたしとニュース』では、この「キュートアグレッション」について“可愛い”を研究する四天王寺大学社会学部の藏口佳奈氏の解説を交え、イラストエッセイストの犬山紙子氏とともに深掘りした。

■「可愛い」感情を平らにするメカニズムと男女差

 藏口氏によると、キュートアグレッションが起こるメカニズムには2つの説があるという。

 説1は「可愛い対象に対して、より“可愛さ”を強く感じすぎた結果、力強くぎゅっと抱きしめたくなる。守ってあげたいという気持ちや接近・養育行動(世話をすること)が強く出たことによって表出した」というもの。

 説2は「“可愛い”という感情はすごくポジティブな感情だが、この強いポジティブな感情を感じすぎているがために、その感情をフラットにする、調整するための対策として、感情のバランスを取るためにあえて反対の一見攻撃的に見える反応をしてしまう」というものだ。これは「嬉しすぎて涙が出る“嬉し涙”と似たようなメカニズム。“嬉しさ”が高まりすぎてその感情を調整するために、圧倒されないために涙を流す」と藏口氏は解説する。

 この説を受けて、犬山氏は「説1はすごくよくわかる」と同意しつつも、攻撃的という点については「私が感じているのは『攻撃したい』という気持ちではなく、すごく自分本位な欲を発散したいという気持ち。キュートアグレッションという言葉自体、感情が薄い人もポップに使うなどグラデーションがあると思う」と語った。

 また、この現象の男女差について藏口氏は「一般に“可愛さ”は女性の方が感じやすいと言われている。“可愛さ”を感じやすい人ほどキュートアグレッションが起こるとすれば、男性よりも女性の方が強く感じやすいのかもしれない」と説明。ホルモンの影響などから女性の方が“可愛さ”を感じやすいデータもあるという。

 では、そもそも私たちはどんなものを可愛いと感じやすいのか。「『ベビースキーマ』と言うが、子猫のように丸みがあり、頭が大きめ、目が全体に大きめ、口は小さめ(といった特徴があるもの)」。

■最新研究で判明した「“可愛い”を見ると女性は後ずさる」

 藏口氏の最新の研究では、可愛い人間の画像を見た人の“重心”がどう変化するかを調査。一般的に前のめりになるのではないかと予想したそうだが、実際には可愛い顔の画像が出ると、女性は少し後ろに下がる動きをする人が多かった。これは男性には起こらず、赤ちゃんか成人かに関係なく女性に起こる現象だとわかったという。

 この結果について、藏口氏は「人の顔に対して“可愛い”というポジティブな刺激だからといって、常にポジティブな感情や反応が出るわけではなくちょっとネガティブに見えるような反応もあわせて出てくる」と分析する。

 これを聞いた犬山氏は「私も可愛い人やものを見ると、自分のような邪気がそちらに移っては困る、私が強く可愛いと思う感情で汚してはならぬと思って後ずさることがあるのでよくわかる」と共感を示した。

■「悪いことではない」代償行動でのやり過ごし方とお互いの歩み寄り

 どうしても湧き上がってくるキュートアグレッションの衝動に対し、藏口氏は「特別に悪いことだとか変なことだと思いすぎずに、『私は今“可愛い”という気持ちに圧倒されすぎてバランスを取っているだけだ』『嬉しすぎて涙が出るのと同じこと』と思ってもらえればいい」と提言。

 また、「プチプチを潰すような代償行動)で衝動をやり過ごすこともできる」とアドバイスした。

 これを聞いた犬山氏は自身の代償行動として「深夜に猫の画像や、可愛い2次元の推しの画像を見て可愛い感情が高ぶった時に、娘には(身体が)弱いからできない。でも夫は屈強なので、夫にギャーと抱きつきに行くことで、猫由来の衝動を発散している」と明かした。

 このようにキュートアグレッションの感覚がわかる人がいる一方で、徳永有美キャスターは「私のようにわからない人もいる。でもわからないからといって愛情がないわけではない」と主張。犬山氏もこれに強く同意し、「お互いの歩み寄りがほしい。『攻撃したいなんてやばくない?』でもないし、ならないからといって愛情がないわけでもない」と語り、多様な感情のあり方への理解を示した。

(『わたしとニュース』より)