「源内」を活用した国会答弁作成の流れ

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 国会答弁の作成に生成AI(人工知能)を活用する動きが本格化している。

 デジタル庁は年度内にも、政府職員向けの生成AIシステム基盤に答弁草案を自動作成する専用アプリを開発する方針だ。瞬時に作成されることで、官僚の負担軽減につながるとの期待があるが、「答弁の重みが失われる」との懸念も出ている。

80年分、155億文字の行政データ参照

 同庁が開発したシステム基盤「源内」は、昨年5月に試験導入された。約80年分、155億文字の行政データを参照させ、過去の答弁や資料の検索や、音声の文字起こしなど40種類のアプリを順次整備してきた。今年6月には全府省庁の職員約18万人が利用できるようになった。

 国会答弁の作成支援では、答弁草案の作成のほか、答弁の矛盾点の検証、追加質問の予測などの機能を備える。10月頃をめどに試験提供する予定で、計16省庁から約100人が開発に参画している。

 政府はあくまで答弁の草案作成の支援と位置付けており、最終的な内容は各省庁の担当者が事実確認や法的なチェックを行い、政府として責任を持って決定するとしている。

 政府は、源内の本格導入が業務の効率化や官僚の負担軽減につながると期待する。

 首相や閣僚の国会答弁では、法案や条約などを担当する省庁の官僚が、質疑に立つ議員から質問内容を事前に聞き取り、答弁案を作成する。既存の法令や過去の政府見解との整合性の確認や海外事例の調査、他省庁との調整などが必要となる。

 内閣人事局の2025年の調査では、答弁を作り終えた平均時刻は答弁当日の午前1時48分で、作成には7時間16分を要した。議員からの質問通告の遅れに起因する面が大きいが、長時間労働を強いられる「ブラック霞が関」の象徴とされてきた。

 省庁にとって答弁案の作成は重要業務だ。文部科学省の中堅幹部は「国会答弁は、政府の公式見解となる。最優先で対応するため、その間は他の仕事を止めざるを得ない」と解説する。

 源内を使えば、過去の類似答弁の検索や大量の資料の参照が効率化できる。総務省の若手は「捻出した時間を政策立案や情報収集に充てたい」と語る。

 一方、生成AIを使うことで答弁の重みが失われ、審議の形骸化を招きかねないとの懸念も根強い。鳥取県の平井伸治知事は23年、「機械の言葉そのままなら有権者に失礼。民主主義の自殺だ」と強く批判した。

 霞が関でも「国を取り巻く状況は日々変化しており、AIが対応しきれるのか。答弁の内容や形式が画一的になる恐れもある」(消費者庁職員)との声がある。生成AIは事実に基づかない情報を真実のように答える「ハルシネーション(幻覚)」を起こすことがあり、責任の所在が曖昧になる可能性もある。

 東京大の谷口将紀教授(政治学)は「最終的な責任は首相や閣僚、答弁を作った省庁が負うことを忘れてはいけない。生成AIの課題を理解した上で活用する必要がある」と指摘する。

 そもそも、審議の形骸化を避けるには、政治家側の意識が鍵を握る。質問する側は、細かいデータや事実関係の確認に終始せず、政策の大きな方向性やその背景にある思想や価値観などを深掘りしていくべきで、首相や閣僚はこれに対し、自らの政治信条や識見を土台に自身の言葉で答える必要がある。

 経済産業省出身の福島伸享・前衆院議員はブログでこう主張している。「官僚(の作成)による答弁は事実確認などの補充的なものにするのが原則だ。言葉を武器にして当意即妙のやりとりをするのが、本来の国会の論戦だ」