惜しまれつつ日本での新車販売終了 マクラーレン750Sスパイダーとのラストラン(前編) 究極の域に達した機能美【スーパーカー超王、魂の執筆】
マクラーレンというブランドを象徴する存在
これまでマクラーレンというブランドを象徴する存在として、多くのカスタマーやファンから高く支持されてきた『750S』と『750Sスパイダー』の日本市場向けモデル生産が6月30日をもって終了した。
【画像】マクラーレン・スーパーシリーズのセカンドジェネレーション!ファーストモデル『720S』と事実上のファイナルモデル『750S JC96』 全44枚
これは7月1日から、輸入車の継続生産車についても日本では衝突被害軽減ブレーキ(AEBS=先進緊急ブレーキシステム)装備が義務づけられたためで(ちなみに新型車は既に2024年7月1日から義務化されている)、同ブレーキを持たない750Sシリーズは、惜しまれつつも日本での新車販売を継続することができなくなった。

マクラーレン750Sスパイダーを、スーパーカー超王こと山崎元裕が取材。 佐藤亮太
これはスポーツカーとグランツーリスモとしてのキャラクターを魅力的に併せ持つことで人気を得ていた、『GTS』についても同様の事情だ。
だがマクラーレンはこれらの日本市場向けモデルの生産中止に前後して、同社初となる単一市場向けの限定車『ジャパン・ファイナルエディション』を750SシリーズとGTSをベースに新設定。
『750S JC96』、『GTSシグネチャーコレクション』と呼ばれるこの両モデルは、それぞれ61台、22台が生産される計画で、これらは事実上、日本における750SシリーズとGTSのファイナルモデルとしての役割を担うことになった。
マクラーレンF1へオマージュを捧げたモデル
クーペ、スパイダーの選択が可能な750S JC96は、かつてマクラーレンF1が1995年のル・マン24時間レースで総合優勝を果たし、また翌1996年の全日本GT選手権をも制覇したことにオマージュを捧げたモデルだ。
その優勝車のカラーリングをベースとする専用リバリーや、ハイダウンフォースキット装着、さらに軽量なホイール装着などでその運動性能はさらに高められている。特筆すべきは、スパイダーボディとハイダウンフォースキットの組み合わせは、このJC96が唯一の存在であることだろう。

クーペ、スパイダーの選択が可能な『750S JC96』が事実上のファイナルモデルに。 マクラーレン
一方のGTSベースのシグネチャーコレクションは、MSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)によるビスポークモデルで、こちらはマクラーレンの中枢部ともいえる、MTC(マクラーレン・テクノロジー・センター)からデザインのモチーフが得られているという。
ステアリングを握りたいという強い欲求
6月30日までに生産された750SシリーズとGTSは、今後も日本市場でのセールスが継続されることになるが、それが長い時間でないことは容易に想像できるだろう。そう考えていたら、自分自身の記憶にそれを残すために、新車に近いコンディションを持つ750Sシリーズ、そしてGTSのステアリングを握りたいという強い欲求が生まれてきた。
しかもできるだけ長い時間、さすがにサーキット走行は叶わないとしても、日本のオンロードにおけるあらゆる場面での走りを改めて体験しておきたい。特に750Sシリーズは、筆者がこれまで何回もベストスーパーカーとして評したことがあるモデルだ。
幸運にも今回は、ほぼ1週間という時間を750Sスパイダーとともに過ごすことができたので、そのラストレポートをお届けすることにしよう。
ダイナミックであると同時に極めて繊細な印象
現在の750Sシリーズへと続くスーパーシリーズのセカンドジェネレーションとして、マクラーレンがファーストモデルの『720S』を発表したのは2017年4月のことだった。
2023年4月に誕生した750Sはそのアップデート版で、マクラーレンによればこの時、構成部品の約30%が新設計されたというから、その進化の大きさは当時大きな話題となった。ミドシップの3994cc V型8気筒DOHCツインターボエンジンは720Sのそれからさらに30psのエクストラを得て、車名が示すとおり最高出力は750psへと強化。

現在の750Sシリーズへと続く『720S』を発表したのは2017年4月だった。
マクラーレン
その一方で車重は30kgが低減されたほか、エアロパーツの大型化などでダウンフォースの最大量も、同様の比較においては5%もの向上を果たしていた。
都心のビルにある地下駐車場で750Sスパイダーをピックアップして、まずはその魅力的なデザインを鑑賞するために地上を目指す。実際に太陽光の下で見る750Sスパイダーのボディデザインからは、ダイナミックであると同時に極めて繊細な印象を抱く。
それは『全てのデザインは機能に従う』というマクラーレンのデザイン哲学が、全てのパートに一点の曇りもなく感じられるためで、さらにその高い機能性を最小のパッケージで包み込む『シュリンクドラップ』と呼ばれる哲学もまた徹底している。
いわゆる機能美というものが究極の域に達した時、そこにはダイナミックでかつ繊細な、独特な造形が生まれるのだと改めて知らされた思いがした。
*マクラーレン750Sスパイダーとのラストラン(中編)に続きます。

