「掃除という家事をラクに」って普通すぎない? 東芝トルネオ最新モデルから読み解く“本当の意味”
東芝ライフスタイルは、コードレススティック掃除機「TORNEO cordless(トルネオコードレス)」の新モデル「VC-SL55D」「VC-SL45D」などを発表しました。

今回の発表会で印象に残ったのが、リビングソリューション事業部の秋田真吾氏が冒頭で語った「今までの掃除機をただ便利にするだけではなく、『掃除という家事』をいかに楽にしていくか」という言葉です。

掃除が家事なのは当たり前。それでもわざわざこう言うということは、なにか含みがありそうです。具体的には、何をどう楽にしたのでしょうか。新モデル「VC-SL55D」(実売予想価格7万6780円)を実際に見ていくと、その意味がわかってきました。

「フィルターを掃除する」という仕事を減らす
掃除機は使っているうちにフィルターへ細かなチリが付着し、吸引力が低下していきます。当然、フィルターが汚れれば、人間が取り外して掃除しなければなりません。
VC-SL55Dは、この作業自体をほぼ丸ごと肩代わりしてくれます。鍵になるのが、進化した「オートエアー洗浄plus」。ダストステーションに本体を戻すとゴミを自動収集するとともに、フィルターへ風を送り、付着した細かなゴミを自動で剥がします。

従来モデルにも「オートエアー洗浄」は搭載されていましたが、新モデルでは空気の取り込み口を拡大。より多くの空気を取り込み、フィルター全体に風を行き渡らせることで、自動洗浄の効果を高めています。
製品企画担当の品川氏によると、ポイントは「お客様がお手入れをしない段階からエア洗浄で自動でどんどんキレイにしていってくれる」こと。
その結果、メーカー試験では約70日使用した状態でも90%以上の吸引力を維持したといいます。また、フィルターのお手入れとダストステーションのゴミ捨ての目安は、いずれも約70日に1回。
つまり、「そろそろフィルターを掃除しなきゃ」と人間が考えて手を動かす機会そのものを減らしているわけです。
「掃除の途中でゴミを捨てる」も減らした
一方で、大きくした部分もあります。ダストカップです。
前モデル「VC-SL140DS」は、毎日こまめに掃除する人を想定して、2~3日分程度のゴミをためられるスリムなカップを採用していました。
しかし、品川氏によると、「忙しくて週末にしか掃除ができないというような方にとってはちょっと物足りない」という声もあったそうです。
そこで新モデルでは、ダストカップ容量を従来モデル比約3.3倍に拡大。さらに、ダストステーションへゴミを移す開口部の面積も約1.8倍に広げ、カップ内部の段差をなくすことで、たまったゴミをスムーズに移動できるようにしました。

発表会では、JISの評価用ゴミを使って、約1週間分に相当する量を吸わせるデモも実施。従来モデルでは途中で満タンのサインが点灯したのに対し、新モデルはまとめて吸引できました。
週末にまとめて掃除したいのに、途中で一度ゴミを捨てなければならない……そんな小さな作業もなくしたというわけです。

「ゴミを探す」「取れたか確認する」も掃除機が手伝う
人間は掃除機を動かしている間にも、意外といろいろなことをしています。「どこにゴミがあるのか」を探し、「いまのでちゃんと取れたのか」を確認するのもそのひとつ。
その点、VC-SL55Dはヘッドに床面のゴミを見つけやすくする緑色LEDを搭載。さらに「ゴミ残しまセンサー」が髪の毛や微細なゴミを検知し、ランプの色で知らせます。

実は東芝は、ヘッドへのLED搭載については後発です。だからこそ単にLEDを付けるのではなく、「どう照らせば掃除しやすいのか」を検討。広い範囲を照らすだけではなく、ヘッドのすぐ前まで照らせるようにしています。

従来の照らし方では、壁際までヘッドを進めると、その直前が見えにくくなり、「ちゃんと取れたかな?」と確認するために一度ヘッドを引かなければならないこともあったそう。新モデルではその場で確認しやすくし、さらにセンサーでもゴミをチェックします。
「ゴミを吸う」だけでなく、「ゴミを探す」「取れたか確認する」という人間の作業まで、掃除機がサポートするわけです。
「掃除機を掃除する」面倒も片っ端から減らす
床に落ちた食べこぼしなど、粒の大きなゴミは、ヘッドの開口部が狭いと意外と取り込みにくいもの。そこで新開発の「なめらかパワフルヘッド」では、ゴミを取り込む開口部を従来の約8mmから約16mmへ拡大しています。

一方、開口部を広げると床面との密閉性が低下し、ラグなどに入り込んだ細かなゴミを吸いにくくなるという課題があります。
そこで回転ブラシとヘッド底面の両サイドに起毛布を採用し、床面との密閉性を確保。発表会では、ラグに細かなゴミをまいて吸引する実演も行われました。

ブラシ自体も、ゴム製の「からみレスブレード」と高密度の起毛布を組み合わせ、髪の毛が絡みにくい構造に変更されています。
また、地味ながら面白いと感じたのが、ヘッド裏側の小さな車輪。これまでは車輪の軸に髪の毛が絡むと、指やドライバーなどでこじって取り外す必要がありました。新モデルでは裏側から指で押すだけで、この車輪をポンと取り外せます。これにより、「車輪に絡んだ髪の毛を取る」という、面倒な作業も軽減しています。

「持って、ボタンを押す」という動作まで減らせるか
さらに細かいところでは、グリップも見直したといいます。コードレス掃除機ではグリップ内部にバッテリーを収める必要があり、どうしても一定の太さが生じます。同製品のデザイナー・村田氏によると、従来モデルでは特に女性から「太く感じる」という声があったそう。
そこで、樹脂の厚みやバッテリーとの隙間をギリギリまで見直し、グリップ外周を従来モデルから約4mm短縮。女性でも手になじむ絶妙な太さを実現したといいます。
また、従来モデルでは、握った状態から電源ボタンへ指を伸ばしにくいという課題がありました。そこで、グリップの下部には指をかけるためのくぼみを設定。くぼみに指をかけると自然に手の位置が決まり、そのままボタンへアクセスしやすい形状にしたとのこと。これにより、「ボタンを押すために持ち直す」という、そんな小さな動作までなくしたわけです。

デザインで「出して、しまう」という人間の仕事を減らす
VC-SL55Dは、新色の「モカブロンズ」を採用。先述のデザイナー・村田氏によると、このモカブロンズはトレンドカラーを取り入れつつ、過去の色のトレンドも踏まえたうえで、今後10年は古く感じにくい色を採用したとのこと。
また、出しっぱなしで使ってもらうことを前提に、「主張はするけど悪目立ちはしない、その絶妙なバランスを探るのが非常に苦労しました」と話します。
この「出しっぱなし」を前提にしたデザインもまた、「出して、しまう」という、人間の仕事を減らす考えにつながっているように感じます。

極端にいえば「人間は掃除機を動かすだけ」
ここまで見てくると、「『掃除という家事』をいかに楽にしていくか」という、冒頭の秋田氏の言葉の真の意味が見えてきます。
ロボット掃除機は、「掃除機を動かす」という人間の仕事そのものを自動化しました。一方、VC-SL55Dは人間が掃除機を動かすのは従来通りですが、その周囲にある「ゴミを探す」「取れたか確認する」「途中でゴミを捨てる」「フィルターを掃除する」「絡んだ髪の毛を取る」「出して、しまう」といった、細かな仕事を一つひとつ減らしています。
一つの大きな自動化ではなく、掃除の工程に散らばっている一連の手間を片っ端から潰す。そこから見えるのは、「掃除機をどう進化させるか」ではなく、「人間の家事をどこまで掃除機に任せられるのか」という発想です。VC-SL55Dは、そんな課題に挑戦した一台なのだと感じました。

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