クラファン「うぶごえ」未払いトラブル、ゲーム業界でも2700万円超のケース…「別の取引先に振り込んだ」と釈明
ローカル線を運行する鉄道事業者がクラウドファンディング(CF)サイト「うぶごえ」で集めた寄付金が期限を過ぎても振り込まれていない問題で、同様のトラブルがゲーム制作の現場などにも広がっていることがわかった。
集まった寄付金のうち2700万円以上が未払いになっているプロジェクトもあり、電子商取引に詳しい専門家は、CFへの法規制の必要性を指摘する。(山形支局 岩峪諒)
「誤って別の取引先に振り込んでしまった」
「CFの可能性や夢に反する行為だ」。パソコン画面で小説を読むように進めるノベルゲーム「シブヤスクランブルストーリーズ」の制作チームで総監督を務めるイシイジロウさん(59)は憤る。
昨年5~7月、うぶごえでゲームの開発費用を募るCFを実施。計5475万円を集めたが、期限を過ぎても半分の2700万円しか入金されなかった。同9月にイシイさんがサイト運営会社の岡田一男社長に面会したところ「誤って別の取引先に振り込んでしまった」と釈明。覚書や公正証書を作成し、分割で入金すると決めたが、昨年12月以降、振り込みが途絶えた。
寄付金は返礼品などに充てたため、開発に使えたのは約500万円。チームは今年7月、別のCFサイトで再び寄付を募り、開発を続けているという。
同様にうぶごえで募った制作費1093万円が未入金だというノベルゲームの企画者・田中文久さん(37)も「未曽有の事態で許せない」としながらも「支援者との約束を果たすため、ゲーム作りを進めたい」と気を張る。現在、警察に対応を相談しているという。
うぶごえを巡っては、老朽化した車両の修理費やラッピング列車の製作費などを募った鉄道事業者4社に対し、計約2000万円が未入金になっていることが判明している。今回明らかになったゲーム業界の他にも、動画配信の機材費を募るCFなどでもトラブルを訴える声が上がっている。
寄付金の振り込みを求めて訴訟に踏み切った事業者もいる。経営改善資金を募るCFで集まった約700万円が入金されていない第3セクター・山形鉄道(山形県長井市)は、3月にうぶごえの運営会社を、4月には岡田社長を相手取り東京地裁に提訴した。
うぶごえのサイトは4月以降、閲覧出来ない状態が続く。読売新聞は8~9月、岡田社長に改めてメールで取材を申し込んだが、期限までに回答はなかった。
法規制必要 専門家が指摘
CFは2000年代に米国で始まり、日本では11年に複数のサイトが開設された。東日本大震災後は、ボランティア活動の資金集めの手段として注目された。地域おこしや商品開発、コロナ禍で経営難に陥った企業の支援にも活用され、急速に広がった。
今年4月には大手CFサイト運営会社3社が、信頼性向上などを目的に連絡会を発足させた。参加企業のひとつ「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」は、自己資金と寄付金の口座を厳格に区分し、寄付金の送金時は複数人による社内承認を必要とするなどの取り組みを公表した。
担当者は「信頼が前提の業界。(うぶごえの問題は)同業として重く受けとめている。『共感のインフラ』として、社会的責任を果たしていく」と話す。
インターネット取引に詳しい早稲田大の久保田隆教授は「これまで善意で成り立っていたCFにも法規制が必要ではないか」と指摘。「過剰規制にならないよう、運営会社の取り扱い規模に応じた対応が必要だが、自己資金と寄付金の分別管理の義務化や、一定割合の履行保証金の積み立てを求めるべきだ」としている。
