ドイツ地方選 戦後の歩みを脅かす極右台頭
ユダヤ人を虐殺したナチスへの反省から、極右勢力への忌避感が強かったドイツで、ナチスを想起させる政党が州議会選で大勝した。
州レベルとはいえ、多様性を尊重してきた戦後のドイツの歩みを否定しかねない衝撃的な結果であり、懸念を禁じ得ない。
ドイツ東部ザクセン・アンハルト州議会選で、強硬右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、定数83議席のうち39議席を獲得して第1党となった。
単独過半数には届かなかったが、他党との連携によっては州首相を選出できる。そうなれば、第2次大戦後のドイツで初めて極右政党に属する州首相が誕生し、州政府を運営することになる。
ドイツは16州から成る連邦国家で、教育や文化などの分野で州政府の権限が大きい。AfDは公約に、障害児と健常児が共に学ぶ仕組みの廃止や、「非ドイツ的」な文化活動への公的支援の停止などを掲げていた。
障害者を「無価値」とみなして排除したナチスの「優生思想」を彷彿(ほうふつ)させる政策は、一部地域であっても実行されてはならない。
州当局はAfD州支部を、党員がナチスに近い思想を持つ「極右団体」に認定している。そのような団体が州の主導権を握れば、ドイツの対外的な信頼は傷つく。
AfDは、社会や経済の閉塞(へいそく)感が強まる中、有権者の不満の受け皿として伸長してきた。
ドイツは、ロシアのウクライナ侵略を機に露産エネルギーの輸入を減らし、物価高騰に見舞われた。自動車など製造業は中国に市場を奪われ、輸出の不振も続く。
その一方で、メルツ政権は中東や北アフリカから難民を受け入れ、ウクライナ支援を続けている。これが有権者からすれば「自分たちの暮らしを置き去りにしている」と見えるのだろう。
AfDのように難民受け入れ停止など過激な政策で有権者を引きつけるポピュリズム(大衆迎合主義)政党の台頭は、ドイツ以外の欧州の主要国でもみられる。
英国では反移民を掲げる改革党の支持率が労働党、保守党の2大政党を一時上回った。フランスの右派「国民連合」は、来年の大統領選に向けて勢いを増す。
ドイツやフランスは欧州連合(EU)を先導してきた。排外主義がさらに高まれば、欧州全体の不安定化につながりかねない。極右勢力に主導権を奪われぬよう、国民生活重視の政策をいかに実現するかが共通の課題となろう。
