「中国で強制労働」ウイグルの男性の証言を明らかに
先月31日、日本に在住するウイグルの人々からなるNPO「日本ウイグル協会」が会見を開き、中国・新疆ウイグル自治区出身の男性(30)が、中国沿岸部にある工場で強制的に働かされたとの証言を明らかにした。
■給与のカードは「当局管理」
日本ウイグル協会のレテプ・アフメット会長が記者会見で、男性から聞き取った話として明らかにした経緯はこうだ。2021年、当時25歳だった新疆ウイグル自治区カシュガル出身の男性は、地元当局から「労働力移転プログラム」への参加を求められたという。
男性が当初、参加を断ると当局は男性の母親にも連絡し参加させるよう促したほか、男性本人にも「政府の求めに応じないとなれば、そのうち自分を違う場所で見ることになるだろう」と迫った。男性はこれを施設などに収容される可能性を示唆されたと受け止めた。さらに高齢の母親の身辺にも影響が及ぶ可能性もほのめかされ、参加を決めたという。
証言によると男性は2021年12月、80人あまりの若者らとともに新疆ウイグル自治区のカシュガルから列車で、中国沿岸部の江蘇省蘇州市に移された。出発前には、列車の切符購入のためとして、身分証も当局者に預けたという。また事前に具体的な勤務先や仕事内容、労働条件などについては説明がなく、契約書を交わすこともなかったとしている。
工場では午前9時から午後8時まで勤務。午後9時から11時までは習近平国家主席の演説や中国共産党の政策などについて学ぶ「政治学習」や残業にあてられていたという。
男性たちには地元政府が派遣した2人の当局者が同行していて、生活や行動を管理。さらに工場から男性らの給与が振り込まれる銀行のカードも、当局者が回収。工場で働いたおよそ2年3か月の間、カードに振り込まれたとされる給与にアクセスすることはできなかったとしている。さらに工場の敷地から出ることも制限され、病気になった場合などを除き、帰省も認められなかったという。
■「もっと良い仕事がある」と誘われ…
男性は24年3月、工場で知り合った中国人男性から別の仕事に誘われた。中国人男性は新しい職場について「給与を直接受け取ることができる。休暇には帰省ができる」などと誘ってきたという。
男性が同意すると、中国人男性は工場の入り口で警備員と何か言葉を交わしたあと、男性を施設の外へ連れ出したとしている。男性はその後、車やバイクなどで移動してカンボジアに入った。男性は当時、パスポートを所持しておらず、国境検問所を通らない山間部のルートを通ってカンボジアに入ったという。
最終的に男性が連れて行かれたのは、カンボジア南西部・ココン州にある中国資本によって開発された経済特区内の施設。男性はそこで、中国人らが運営する施設におよそ1年間監禁され、暗号資産への投資を持ちかける電話をかける、いわゆる「かけ子」として特殊詐欺に加担させられたとしている。
施設では厳しいノルマが課され、達成できない場合には暴行や拷問を受け、さらに「臓器を売り飛ばす」などと脅されたという。男性は翌25年にはノルマを達成できなかったことを理由に別の犯罪組織へ“転売”されるなど複数の施設を転々とさせられた。男性はインターネットを使って助けを求め、海外に住むウイグル人活動家の支援で脱出することができたという。
■会見に男性姿見せず…当局圧力か
アフメット会長は一連の経緯を「国家主導の強制労働」と指摘。当初は男性自身が証言する予定だったが、会見を前に、故郷に残している男性の母親の元を当局が訪れ、親族から「母親が連行された」との連絡があったと話した。
母親はその後、自宅に戻ったが、男性に連絡した親族は「絶対にメディアを前にしゃべるな」などとクギを刺したという。これを受けて男性は自ら会見することを断念、男性の証言を読み上げる形式に切り替えられた。
■ 中国側は“強制労働”を否定
国連やILO=国際労働機関などはこれまで、ウイグルの人々などが本人の自由な意思に基づいて仕事を選べているのか、懸念を示してきた。これに対し、中国政府は新疆ウイグル自治区で「強制労働」が行われているとの指摘を否定している。
「労働力移転プログラム」については、貧困対策や雇用促進を目的とした政策だと説明し、本人の意思に基づく「自発的な就労」だと主張している。男性の証言は日本ウイグル協会アフメット会長が男性本人から直接聞き取った。アフメット会長はインタビューを音声データとして残していて、わたしたちもその一部を聞き、証言自体は実在することを確認している。