大英博物館を訪問した彬子さま(時事通信フォト)

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 女性皇族として公務を担う三笠宮家の彬子さまが、いわれなき批判の矢面に立たされている。8月30日に放送されたNHK・Eテレ『日曜美術館』への出演をめぐり、「放送中止すべきだ」などという反応がSNS上で相次いだのだ。オックスフォード大学で日本美術史を学び、帰国後も講演や執筆活動など、文化振興に力を尽くしてきた彬子さま。にもかかわらず、なぜ今、批判が過熱しているのか。

【写真】彬子さまは麻生太郎・自民党副総裁の姪

皇室典範をめぐる批判でとばっちりか

 番組は「彬子さまと巡る大英博物館日本美術コレクション」と題し、日本美術の研究者である彬子さまの案内で、東京都美術館にて開催中の美術展を紹介するものだった。

 その番組に対して、「麻生(太郎)の親戚をヨイショしだすメディアゴミ過ぎる」などという声がSNSで上がったのだ。NHKが公表している「週刊みなさまの声」によると、彬子さまが出演した番組への意見・要望は2526件で、8月24~30日の1週間の集計期間中ダントツだった(2位は261件)。

 NHKに番組に寄せられた批判について聞くと、「個別の放送番組にいただいた視聴者のご意見の内容についてはお答えしていません」(広報局)と回答した。

 唐突で不当にも思える彬子さまへの批判の背景にあると見られるのが、7月に成立した改正皇室典範をめぐる議論だ。男系男子による皇位継承を前提とした今回の改正は、「女性天皇容認」が多数を占める世論とかけ離れていることから、女性天皇を求める一部の層から批判の声が上がっていた。

 皇室史に詳しい小田部雄次・静岡福祉大名誉教授(日本近現代史)は言う。

「彬子さまは、改正を強く推進した麻生太郎・副総裁の姪であることなどから、改正皇室典範をめぐる批判に巻き込まれてしまったのでは」

 当然ながら、天皇や皇族には政治的行為が認められておらず、今回の典範改正の内容について責任を負うべき立場にない。

 にもかかわらず彬子さま自身を「男系維持派の旗振り役」とSNS上でレッテル貼りする根拠とされるのが過去の発言だ。

「2012年に当時の野田内閣が『女性宮家創設』に向けた法改正を検討し始めた時、彬子さまは毎日新聞のインタビューに〈男系で続いている旧皇族にお戻りいただくとか、現在ある宮家をご養子として継承していただくとか、他に選択肢もあるのではないか〉と答え、女性宮家創設の議論が先行することへの違和感を表明しました」(全国紙記者)

 また、彬子さまをめぐっては、三笠宮家の"分裂"の経緯とそれに伴う皇族費の増加が一部から批判されてもいる。

「三笠宮家は、彬子さまの祖母にあたる百合子さまが24年に亡くなった後、当主不在が続きましたが、昨年9月に彬子さまが当主となり、母で麻生氏の妹である信子さまは『三笠宮寬仁親王妃家』として独立することになった。分裂で皇族費は彬子さまが1067万5000円、信子さまは3050万円へと増額。今回の改正で彬子さまの皇族費はさらに倍増されたこともあり、その経緯がSNS上で批判を呼んでいる」(同前)

「愛子天皇支持」を謳う団体が「皇室のスリム化」を求めるオンライン署名を呼びかけた際には、彬子さまが宮家当主となったことへの批判が書き込まれたこともあった。そうした状況が重なり、今回のNHKの番組への批判となったようだ。SNS上で彬子さまへの批判を展開するのはどのような人々なのか。小田部氏はこう推察する。

「改正皇室典範との関係性や三笠宮家の対立、皇族費の増額などが複雑に絡み合うなか、『皇室のあるべき姿』が揺らいだと感じ、戸惑いを覚えた人々と考えられます」

 ただ、批判が強まるきっかけとなった『日曜美術館』出演について、皇室記者はこう指摘する。

「あの番組で彬子さまが批判されるのは完全にとばっちりでしょう。彬子さまは英国留学中、大英博物館で5年間の学芸ボランティアを務め、同館の日本美術コレクションを研究した方です。その関係で番組に出演するのに何の違和感もない。マルチに活躍されているなか、改正皇室典範のタイミングが重なり目立ってしまったのでは」

明かしていた将来についての「不安」

 彬子さまが自身の考えを積極的に発信する背景には、"ヒゲの殿下"として親しまれた父・寬仁親王(2012年薨去)の影響がある。

 その寬仁親王は2006年1月、保守系団体「日本会議」の機関誌に掲載された〈皇室典範問題は歴史の一大事である 女系天皇導入を憂慮する私の真意〉と題されたインタビューで、当時の小泉内閣が進めていた女性・女系天皇を認める皇室典範改正の動きを「郵政民営化などの政治問題をはるかに超えた重要な問題」として批判していた。

 そんな寬仁親王を、彬子さまは父として敬愛し、模範としてきた。

「寬仁親王は長女の彬子さまと次女の瑶子さまを大切に育て、かわいがっていました。彬子さまは父の遺志を継ぎ、スポーツ関連の公務に加え、祖父・父と引き継がれたトルコとの国際親善にも尽力しています。彬子さまのメディアを通じた活動も、寬仁親王の影響が大きいでしょう」(前出・皇室記者)

 一方、先述した女性宮家創設議論に関する2012年のインタビューで彬子さまはこう答えている。

〈「お前たちは結婚したら民間人だから」と子どもの頃から父に言われてきましたが、その前提が大きく変わるかもしれないので、私自身、落ち着かない状態です〉

〈女性宮家創設はお相手の方の将来にも関わってくる問題ですので、決めるのであれば早く決めていただきたい〉

 当時30歳の彬子さまが将来に不安を抱いていたことは見過ごせない。それから2014年を経て改正皇室典範が成立したが、彬子さまの不安は解消されたのだろうか。

「今回の改正では、彬子さまに限らず女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する場合、同じ家族でありながら夫と子は一般国民となり、法的な制約や待遇が異なります。前例がないことで、より不安定な状況に置かれるとも言える。そのため、女性皇族が生涯独身を選ぶ可能性もあります。一方、養子を迎えても、男系男子が続く保証はない。今回の改正を、再度見直すことが必要だと思います」(小田部氏)

 仮に彬子さまが「男系派」だとしても、複雑な状況に置かれ、本音を語ることも制限されるなかで皇族の務めを果たそうとしていることは間違いないはずだ。批判はあまりに理不尽ではないか。

※週刊ポスト2026年9月18日号