《「あまりにも胸が痛む」映像が拡散》凧を追った12歳少年が高圧線に接触、電線に取り残されて死亡…住民らが棒で必死の救出も【インド】
インド北部で、高圧電線に接触した12歳の少年を住民らが必死に救出する映像がSNSで拡散され、衝撃が広がっている。
【写真を見る】電線上でぐったりとした少年、住民が棒を伸ばし…「あまりにも胸が痛む」救出の一部始終
映像には、少年が右腕と顎を電線に乗せた状態で動かなくなっている姿が映っている。道路に集まった人々のものとみられる声が飛び交うなか、男性がデッキブラシのような棒を使い、少年の体を電線から外そうと試みる。
やがて少年の体が電線から離れると、そのまま下へ落ちかける。男性はとっさに足をつかみ、なんとか屋上へ引き上げるが、少年の体は力なく垂れ下がったまま。男性は少年の脇を抱え、後方で待つ別の男性のもとへ運んでいく。SNSでは「あまりにも胸が痛む」「本当に心が張り裂けるほど悲しい」といった声が上がった。
事故が起きたのは現地時間8月16日午後3時ごろ。ウッタル・プラデーシュ州で、プシュカル・ヤダブくん(12)が、高圧線に引っかかった凧を取ろうとして感電した。
現地紙「Dainik Jagran」などによると、プシュカルくんは日用品の買い物で外出した際、高圧線に絡んだ凧を見つけた。菓子店脇の階段から屋上へ向かおうとしたため、店主の妻が止めたものの、「おばちゃん、すぐ戻るよ」と答えて上っていったという。
その直後、大きな音が響いた。高圧線に接触したプシュカルくんは、住民らによって救出され病院へ搬送されたが、死亡が確認された。
「少年の死をめぐり現地で問題視されているのが、住宅と高圧線との距離。事故現場では高圧線が建物のすぐ近くを走っていたのです。事故原因は当局が調査しており、電力会社側の責任が認められれば、遺族には50万ルピー(約85万円)の補償金が支払われる見通しです」(海外ジャーナリスト)
感電による死者は1日約35人
同州では2025年にも、10歳の少年が糸の代わりに針金をつけて凧を揚げ、その針金が高圧線に接触して重傷を負った。さらにプシュカルくんが死亡する前日にも、25歳の女性が屋上で洗濯物を干していた際、高圧線に接触し、右手に重傷を負った。
こうした感電事故は、同州だけの問題ではない。インド国家犯罪記録局(NCRB)が公表しているデータによると、2022年の感電による死者は1万2918人。単純計算すると、1日約35人が命を落としている。
なぜ、これほど多くの感電事故が起きるのか。
「今回の事故でも、住民側は『高圧線が住宅に近すぎる』と電力当局を批判しています。一方、電力会社側は、高圧線自体は適切な位置にあり、住宅との距離にも問題はないとしたうえで、住民が住宅のひさしを高圧線の方向へ伸ばしていると反論。つまり、住宅側が後から電線に近づいたとの見解を示しています。
こうした中、事故から10日後の8月26日、当局は、電線の設置後に建てられた住宅のうち、道路側に張り出したバルコニーが電線に接触している約2000戸を特定。事故や盗電につながるおそれがあるとして、40の村の住民に警告書を送付しました」(同前)
今回の事故のきっかけとなった「凧」は、インドで広く親しまれている。相手の凧糸を切り合う競争も盛んな一方、凧をめぐる事故も問題となっている。なかでも、ナイロンなどの合成素材やガラス、金属などを使った凧糸「マンジャ」は、人や鳥を傷つけるほか、電線に接触した際の感電事故も引き起こしており、各地で販売や使用などが禁止されている。
なお、プシュカルくんが取ろうとした凧に、こうした糸が使われていたかは明らかになっていない。
住宅と高圧線との近すぎる距離、そのすぐそばで揚げられる凧--。年間1万人以上が感電で死亡するインドで、プシュカルくんの事故は決して孤立した悲劇ではない。

