劇場で歌謡曲や演歌に合わせて踊りを披露する役者=8月、川崎市川崎区

 靴を脱ぎ畳敷きの客席に上がり、座布団に座って芝居を楽しむ─。川崎市川崎区大島で親しまれてきた大衆演劇場「大島劇場」が9月末で閉館する。1950年の創業以来、多くの役者と観客を迎えてきた芝居小屋。戦後、娯楽の乏しい時代から人々に笑いや感動を届け、日本経済の発展を支えてきた労働者を癒やしてきた。しかし、建物の老朽化や客足の減少が重なり、4代目の支配人の女性は「一つの区切り。時代の流れにはあらがえない」と決断。家族でつないできた劇場は間もなく、76年の歴史に幕を下ろす。

 8月下旬、この日は劇団「章劇」が公演した。2000年の旗揚げ以来、毎年舞台を披露してきたなじみの一座。約40畳の客席には30人ほどが集まり、ビールや弁当、菓子を手に開演を待つ人もいた。

 午後6時、着物姿の役者が歌謡曲に合わせて踊る顔見せショーで幕開け。芝居では時にアドリブが飛び、客席の笑いを誘う。終演後は役者が出口で観客を見送る「送り出し」で締めた。

 1年ほど前から章劇の公演に足を運ぶ20代の女性は大阪から訪れた。「大衆演劇は役者との距離の近さが魅力。自分にとっては『推し活』に近く、元気ももらえる」と笑顔を見せた。