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飲食店で料理を出すために使われた皿が、食後には「灰皿」に──。

客が、店から灰皿を渡されていたにもかかわらず、食器にタバコの吸い殻を入れて帰ったとして、店主が怒りをあらわにしたXの投稿が拡散している。

投稿された動画には、小皿の中に8本ほどの吸い殻が残されている様子が映っている。投稿主は、動画とともに次のようにつづり怒りをぶつけた。

「ックソが!食べ物のお皿吸い殻なに入れてんだよ!もう使えねーじゃん!心当たりある奴見てるか?もう来んな。」

この投稿には「これ本当にやめてほしい」「こんな皿洗ってだされるのも抵抗ある客いるだろうしね」など、店主に同情し、客の行為を非難する声が相次いでいる。

たしかに、料理を盛る皿にタバコの吸い殻を入れられれば、店側が「もう使えない」と考えるのも無理はない。

では、飲食店の食器を灰皿代わりにする行為は、法的にどのような責任を問われる可能性があるのか。「もう来んな」と、店側が客を出入り禁止(出禁)にすることはできるのか。西口竜司弁護士に聞いた。

●皿は割れていなくても「器物損壊罪」の可能性

──飲食店の食器を灰皿代わりにする行為は、刑事事件になりますか。

他人の物を「損壊」した者は、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金・科料に処されます(刑法261条)。

「損壊」は、物を物理的に壊す行為に限られず、物の本来的な効用を害する一切の行為を含むと解されています。

裁判例でも、荷札をはぎ取って本来の効用を滅却させた行為や、自動車のナンバープレートを取り外して自動車を運行できない状態にした行為について、物理的な損傷がなくても「損壊」にあたると判断されています。

食器は、口に入れる食物を盛るための道具です。そこにタバコの吸い殻や灰を投棄されれば、ヤニや臭い、衛生上の忌避感から、その後、他の客に料理を出す用途には使えなくなります。

今回の投稿でも「もう使えねーじゃん」と述べられているとおり、食器としての効用そのものが失われたと評価しやすく、器物損壊罪が成立する可能性は十分あります。

なお、器物損壊罪は、損壊された物の所有者による告訴が前提となる「親告罪」です。

●「皿代」や買い替え費用を請求される可能性も

──民事責任としてはどのような問題が考えられますか。

故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。

灰皿を渡されていたにもかかわらず、あえて食器に吸い殻を捨てたのであれば、少なくとも過失、通常はむしろ故意による財産権侵害と評価できるでしょう。

その場合、皿の代金相当額や廃棄・買い替え費用、店舗の清掃費用などを請求される可能性があります。

財産侵害の場合でも慰謝料が問題となる余地はありますが(民法710条)、この種の事案では、実際に生じた損害の填補が中心となるでしょう。

●「もう来んな」店側は本当に出禁できる?

──店側がこうした客を出入り禁止(出禁)にすることはできますか。

飲食店と客の関係は、来店ごとに個別に成立する契約関係にすぎず、店舗運営者は施設管理権に基づき、誰と契約を締結するかを選択できます。

実際、東京都のカスハラ防止条例に関する解説でも、迷惑行為をする顧客への対応として、退去要請や出入り禁止、商品・サービス提供の停止を通告することが正当な対応方法の一つとして明示されています。

ただし、この解説では、恣意的で正当な理由のない出入り禁止は避けるよう注意喚起しています。

今回のように、灰皿を渡していたにもかかわらず、あえて食器を灰皿代わりにしたという明白な迷惑行為が確認できるのであれば、写真や動画などの証拠を保全したうえで、その客の来店を断る措置を講じることは、法的に十分許容される対応といえます。

一方、注意が必要なのが、SNS上で店側が客を「さらす」行為です。

行き過ぎれば、名誉毀損など別の法的問題を生じる可能性があります。怒りがあったとしても、客の特定につながる情報を公開する際には慎重さが求められます。

【取材協力弁護士
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。Xリーグ選手でもある。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/