「新セリナ」こと阿部星架容疑者(本人のInstagramより)

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 暴力団とトクリュウの幹部を“兼任”していた男と、売れっ子のセクシー女優が共にコカインを所持・使用したとして逮捕──。埼玉県警狭山署の特別捜査班は8月24日、麻薬取締法違反(共同所持、施用)の容疑で、指定暴力団六代目山口組傘下組織幹部の菅原翔太容疑者(32)を再逮捕、さらに阿部星架容疑者(27)を逮捕した。東京都豊島区にあるホテルの部屋でコカイン0・7グラムを所持し、使用した疑いが持たれている。一体2人に何があったのか丁寧に経緯を追ってみたい。

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 最初にマスコミの注目を集めたのは阿部容疑者だった。担当記者は「2008年、あるブロック紙が『地元の小学生が全国JOCジュニアオリンピックカップ春季水泳競技大会に出場する』と報じたのです」と言う。

「新セリナ」こと阿部星架容疑者(本人のInstagramより)

「この時、阿部容疑者は9歳の小学校3年生でした。出場したのは50メートル背泳ぎで、シンクロ(現:アーティスティックスイミング)もこなす“二刀流”が注目されていたのです。阿部容疑者は取材に対し『力を出し切り、35秒台を目指したい』と意欲を見せました。2011年には中学1年生の阿部容疑者がシンクロの国際大会で選考対象選手に選ばれたことも大きく取り上げられ、さらに13年はブロック紙に単独のインタビュー記事が掲載されました。高校生になると背泳ぎのスペシャリストとして何度も大会で上位に食い込んだり、優勝を果たしたりして実績を積み重ね、大学は関東甲信越地方にある名門水泳部へ進んだのです」

 まさに“天才少女”として順風満帆のキャリアだったわけだが、大学に入ってからは伸び悩んだようだ。

 水泳選手としての阿部容疑者が新聞で最後に報じられたのは2019年。日本短水路選手権で100メートル背泳ぎ予選に出場するも、決勝に進めなかったことが短い記事で伝えられている。

トクリュウの「首魁」

「阿部容疑者は2021年、セクシー女優『青木桃』としてデビューします。主演作品のタイトルは競泳選手だったことが強調され、動画が配信されたのは7月13日のことでした。これは東京オリンピックが7月23日に開幕されるのに合わせたからでしょう。阿部容疑者は当時のインタビューなどで『ケガで水泳選手を引退せざるを得なくなり、芸能活動に興味があったこともあって挑戦を決めた』などと出演の理由を説明しています。その後、改名を重ねながら売れっ子女優として作品のリリースを続け、2025年には『新セリナ』の改名を発表していました」(同・記者)

 2024年3月、阿部容疑者は「堤セリナ」の改名を発表した。この頃から菅原翔太容疑者はトクリュウの関係者として動いていたようだ。

「当時の菅原容疑者に関して、『ポケモンカードの窃盗団で見張り役を務めていた』とか『特殊詐欺の“かけ子”(電話をかけた相手を騙す係)だった』などの情報があります。いずれもトクリュウによる犯罪であることは言うまでもありません。新聞社で最初に菅原容疑者を大きく報じたのは埼玉新聞でした。今年7月の朝刊に『匿流グループ主犯を逮捕 県警、特殊詐欺指示の疑い』との記事を掲載し、菅原容疑者をトクリュウグループの『首魁』と伝えたのです。“首魁=しゅかい”とは、『反徒や賊徒など悪いグループのリーダー』という意味です」(同・記者)

特殊詐欺と強盗準備

 阿部容疑者と菅原容疑者がコカインの所持・使用容疑で逮捕されるまでの経緯を警察が発表した情報を元に時系列で並べてみよう。以下の犯罪容疑に菅原容疑者はトクリュウのリーダーとして関与しているという。

【2月19日】
菅原容疑者が主導するトクリュウグループが特殊詐欺を実施。越谷市に住む80代の男性に息子をかたって電話をかけ、「会社の重要な書類の郵送先を間違えてしまった」と説明。上司を装ったグループのメンバーが50万円を騙し取る。

【2月26日から27日】
グループのメンバーが千葉県木更津市の宝石店だった建物に強盗に入る準備を行い、現場周辺の下見も実施した。だが実行役が集まらず、犯行を諦めた。28日に再度、強盗を決行する予定だったが、27日にメンバーだった20代の男が「『強盗に参加するため、埼玉県春日部市で盗難車に乗れ』と指示された」と千葉県警に通報。埼玉県警が市内のコインパーキングで盗難車を発見し、トクリュウのメンバーが木更津市に向かうのを確認した。

【3月から5月】
特殊詐欺や窃盗などの容疑で、菅原容疑者が主導するトクリュウグループのうち、少なくとも3人の男が逮捕される。

「阿部容疑者は使用を否認」の報道も

【7月14日】
越谷市の特殊詐欺事件と、木更津市の強盗予備事件を捜査していた埼玉県警狭山署の特別捜査班は、菅原容疑者が東京都豊島区のホテルに頻繁に出入りしているのを把握。詐欺容疑で身柄を確保しようと部屋に踏み込んだところ、ベッドの上に菅原容疑者と阿部容疑者がいた。さらにシーツの中やベッドの脇からコカインが発見された。

【7月18日】
複数の新聞社が朝刊に「越谷市の特殊詐欺事件で菅原翔太容疑者が逮捕された」との記事を掲載。

【8月7日】
埼玉新聞が朝刊に「匿流グループ首魁らを逮捕 強盗予備の疑いで狭山署」の記事を掲載。木更津市の事件で菅原容疑者が再逮捕されたことを報じ、「トクリュウグループの首魁」と伝える。

【8月25日】
日テレNEWSが「俳優とトクリュウのトップが薬物所持疑い ホテルのベッドに使用済みコカインの袋」との記事を配信。阿部容疑者の逮捕が報じられ、大きな話題となりSNSで情報が拡散する。記事は菅原容疑者が容疑を認めている一方、阿部容疑者は少なくとも使用については否定していると伝える。

『闇バイトの歴史 「名前のない犯罪」の系譜』、『山口組対山口組』(いずれも太田出版)などの著書があり、トクリュウや暴力団の現状について詳しいジャーナリストの藤原良氏は「注目すべきは菅原容疑者の所属する暴力団の上部組織です」と言う。

違法薬物とシノギの関係

「実は覚醒剤を筆頭とする違法薬物の密売で有名なのです。さらに縄張りの一つが渋谷で、渋谷にはセクシー女優が所属する芸能事務所が多いことでも知られています。下部団体の幹部を務める菅原容疑者と、セクシー女優の阿部容疑者が知人の関係にあり、共にコカインを使っていたという逮捕容疑が事実だとしたら、まさに“さもありなん”という状況だと言えます」(同・藤原氏)

 暴力団という“鉄の結束”を誇る完全ピラミッド型の犯罪組織と、「匿名・流動型犯罪グループ」というトクリュウは本来であれば、正反対の特徴を持つ集団だと言っていい。

「そのため菅原容疑者を“ハイブリッド型”と注目する関係者もいますが、最近はトクリュウと密接な関係を持つ組員が増えているのが実情です。背景にあるのがシノギの厳しさで、つまり暴力団組員は収入減に悩まされているのです。特に菅原容疑者の上部組織が得意とする違法薬物は需要が減少傾向にあり、さらに外国人の密売グループが“市場”を荒らしています。菅原容疑者もシノギに困り、トクリュウによる犯罪収益に目を付けた可能性があると思います」(同・藤原氏)

デイリー新潮編集部