「渋滞の時はATにしたい…」の“クルマ好きの夢”を実現!

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「渋滞の時はATにしたい…」の“クルマ好きの夢”を実現!

 かつて2017年に開催された「第43回 東京モーターショー」のトヨタブースにおいて、ひときわ異彩を放っていた漆黒の2シータースポーツカーがありました。

 それが、トヨタのモータースポーツブランドである“TOYOTA GAZOO Racing”がプロデュースした「GR HVスポーツ」コンセプトです。

【画像】超カッコイイ! これがトヨタ斬新「“タテ目”スポーツカー」です!(22枚)

 環境性能とスポーツカーならではの運転する楽しさを、これまでにない斬新なアプローチで融合させたこのモデルは、現在でも多くのクルマ好きの記憶に強く刻み込まれています。

 一見して、ベース車両がトヨタのライトウェイトスポーツカーである「86(初代モデル)」であることは分かりますが、その外観は大きく手が加えられています。

 ボディカラーは重厚感のあるマットブラックで統一され、ルーフ部分はトヨタスポーツ800やスープラといった歴代の名車へのオマージュを感じさせる「エアロトップ」と呼ばれるオープン仕様が採用されていました。

 また、フロントマスクには世界耐久選手権で活躍したレーシングカー「TS050 HYBRID」を彷彿とさせる“縦型”のLEDヘッドライトが装着されており、単なるカスタマイズカーではない本格的なレーシングスピリットを静かに主張。

 リア周りも大型のディフューザーとセンター出しのマフラーが組み込まれ、迫力ある後ろ姿を演出していました。

 そしてGR HVスポーツは、外観だけでなく中身も非常に野心的です。

 車名にある「HV」が示す通りこのクルマはハイブリッド車であり、搭載されるパワートレインには、レース活動から直接フィードバックされた技術を用いた「THS-R(トヨタ・ハイブリッド・システム・レーシング)」が採用されています。

 さらに、重量物であるハイブリッド用の大型バッテリーを車両の中央付近に配置することで、スポーツカーにとって命とも言える理想的な前後重量配分と低重心化を実現し、優れた操縦性を確保する見事なパッケージングとなっていました。

 そして、このモデルを語るうえで絶対に外せないのが、ドライバーをワクワクさせる遊び心に満ちた内装のギミックです。

 なんと、システムを始動するためのプッシュスタートスイッチが、シフトノブの赤いカバーを開けた内部に隠されているのです。

 まるで戦闘機の操縦桿にあるミサイル発射ボタンのような演出は、乗り込んだ瞬間にドライバーの気持ちを高揚させてくれます。

 さらに驚くべきは、そのトランスミッションの仕組みです。

 基本はクラッチペダルのないオートマチック(AT)車でありながら、センターコンソールには一般的なマニュアル(MT)車と同じHパターンのシフトレバーが備わっていたのです。

 ボタン操作でマニュアルモードに切り替えれば、クラッチ操作なしで6速のHパターンシフトをガチャガチャと操り、自分の手でギアを選んで走る感覚を味わえるという、非常にユニークな機構が組み込まれていました。

 渋滞時などは手軽なオートマチックとして走り、ワインディングロードではマニュアル車のように操るという、多くのクルマ好きが夢見た理想のシステムを形にしていたのです。

 残念ながらこのGR HVスポーツコンセプトがそのまま市販化されることはありませんでしたが、ハイブリッドや電動化が進むこれからの時代においても、クルマを操る喜びを決して忘れないというトヨタの強いメッセージが込められた一台でした。

 技術の進化とともに、いつかこのような革新的で楽しいスポーツカーが再び私たちの前に姿を現す日が来ることを期待せずにはいられません。