「遺体から毒物」「現場に怪しい白衣の男」茨城県の田舎村で見つかったのは「9人の焼死体」…【同業者でも、村民でもない】7歳児まで殺した「よそ者の正体」(昭和29年の事件)〉から続く

 昭和29年、茨城県の田舎村で起きた一家ら9人の大量毒殺放火事件。遺品に残された文字から捜査線に浮上したのは、前科8犯の男・緑志保だった。

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 前編では、保健所員を装った「白衣の男」の暗躍と容疑者特定までを追った。全国指名手配の末、ついに逮捕された緑。

 しかし護送中、「車に酔うから」と求めた仁丹ケースによって、事件は衝撃の結末を迎える――。

 鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目)


写真はイメージ ©getty

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一家9人を殺害した凶悪犯

 警察は名前の「志保」を「しほ」と読み「I・M」とは合致しないものとみていたが、そのうち「志保」が「いつほ」とも読む場合もあることがわかり、さらに「フ ミドリ」の解明に当たっていた捜査員が宇都宮市内のクリーニング店から、緑らしき男に「フ(リーの客の)ミドリ」と記したワイシャツを手渡したとの証言を得る。

 事件発生から24日目の11月6日、警察は緑を全国に指名手配。すぐに栃木県塩谷郡塩原町(現・那須塩原市)の旅館で隣室の客から現金500円(現在の貨幣価値で約1万8千円)を盗み山中に逃げたとの情報が入り、付近を捜索した結果、翌7日未明に逮捕された。

まさかの展開

 緑は素直に犯行を認め、事件前日に宇都宮からバスを乗り継ぎ徳宿村まで来て、途中、小山市の理髪店で白衣を購入していたと供述。

 その後、栃木県警大田原署に身柄を送られることになったが、護送用のジープ内で「車に酔うから仁丹ケースをくれ」と要求。

 捜査員が中身を確認し渡したところ、同署の取調室で右手の手錠を外された直後、上着ポケットから仁丹ケースを取り出し、ケースごと噛み砕いて自殺する。

 ケースは二重底になっており、底の部分に青酸カリが入っていた。

 ちなみに、指名手配をかけた際、上層部から各捜査員に「犯人は2千人を殺せるだけの青酸カリを所持している。逮捕の際、本人が自殺する恐れもあるので絶対に飲ませないように留意されたい」とのお達しが出ていたそうだ。

 犯人が命を絶ったため、動機や具体的な殺害手口は不明のままとなったが、その後の調べで緑は以前、宇都宮刑務所で服役中、徳宿村の窃盗犯から事件現場周辺の情報を聞き、精米業を営んでいる被害者の大沼さんが小金を貯め裕福であることを聞き込んでいた事実が判明している。

残された謎

 また、本事件は保健所員を装い毒殺するという手口が、6年前の1948年に起きた帝銀事件との類似性が指摘された。

 同事件で逮捕された平沢貞通の弁護人が、緑が真犯人の可能性もありとして現地入りしたが、これも解明されることはなかった。

(鉄人ノンフィクション編集部/Webオリジナル(外部転載))