厚生労働省と映画「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」とのタイアップ企画のポスター

写真拡大

厚生労働省は24日、川口春奈(31)の主演映画「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」(山戸結希監督、10月2日公開)とタイアップした企画を中止すると発表した。

公式サイトに文書を発表し「この度、厚生労働省がAYA世代のがん患者やご家族の皆様にご利用いただける制度への理解促進を目的として実施しておりました、映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』とのタイアップにつきまして、中止することといたしました」と。発表。その上で「本タイアップによる情報発信によって、がんと向き合っておられる患者さんやご家族等の皆様に対し、不快な思いをおかけしましたこと、心より深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

今回の企画は、厚労省が今年2月に作成したAYA世代(15〜39歳)のがん患者に知ってほしい支援制度やサービスについてまとめたパンフレット「15歳〜30歳代でがんと診断されたあなたへ がんの治療と暮らしを支える制度ガイド」の周知を目的として実施。21歳でステージ4の大腸がんを宣告され、抗がん剤治療を中断して子供を産み、24歳で亡くなった遠藤和さんの手記が原作となった映画とタイアップしたポスターを制作した。公式サイトでは「今回の取り組みを通して、AYA世代のがん患者さんが本リーフレットをご覧になることで、ご自身が利用できる制度や支援を知るきっかけとなることを期待しています」とした。一方で「今回の普及啓発ポスターは、各都道府県、都道府県がん診療連携拠点病院を中心としたがん分野の関係団体等に掲出する予定です」と、19日にXで病院に掲出する方向であると投稿したことに対し、疑問や反発の声が相次いだ。

X上では「置く場所を相当慎重に選んでほしい。絶対に外来や病棟に置いてはいけません。今現在実際にがんと闘っている患者が現実と日々対峙しながら生きるために必死で闘っているとき、そのコピーを見てどれほど心臓を鷲掴みにされたような思いをするか、どうか少し想像してみてください」「AYA世代のステージ4当事者ですが、この映画タイトルを病院で目にしてしまったら精神的にとても辛いと、私は感じてしまいます。どんな思いで治療を受ければいいのですか。見直しを検討されてはいかがでしょうか」「がん経験者として言わせてもらいますがデリカシーなさすぎです」などの投稿が続出。医師からも「AYA世代へ支援やサービスの周知が必要な点に、異論はありません。この映画が、前向きに生きるがん患者さんの姿であることも否定しません。ただこのポスターでは『AYA世代への生活支援』より『病状悪化の想起や、死への不安』への注目度が高くなり、患者さんやご家族へのデメリットが上回ることを懸念します。広報へのアプローチについて、もう一度ご検討願えればと思います」と再考を促す声も出ていた。

厚労省は「今回のタイアップは、AYA世代(Adolescent and Young Adult:15〜39歳)でがんと診断されたご本人やご家族に向けて、ご利用いただける支援制度やサービスについてまとめたパンフレット『15歳〜30歳代でがんと診断されたあなたへ がんの治療と暮らしを支える制度ガイド』の周知を目的として実施させていただいたものでした」と説明。一方で「しかしながら、今回作成したタイアップポスターを都道府県がん診療連携拠点病院等という患者の方々が日常的に利用される場所に掲示することや、今回のタイアップにより制度周知を行うことなどについて、患者の皆様やそのご家族等への配慮に欠ける点があったと認識しております」と問題があったことを認めた。

その上で「今回、全国の都道府県や都道府県がん診療拠点病院等に送付済みのポスターは回収し、掲示を中止するとともに、特設ページやSNS投稿等は削除いたします。今後は、さまざまな立場の方々に十分配慮した情報発信を徹底し、このような事態が発生しないよう努めてまいります」とポスターを回収し、特設ページも削除したと発表した。

「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」は、川口にとって単独では13年「マダム・マーマレードの異常な謎」以来13年ぶりの映画主演作。和さんの実話は、20年2月に日本テレビ系で放送された「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」(土曜午後7時56分)の「結婚式の旅」で紹介されたのを川口自身、見ていた。「私自身、テレビでこの話を知り、和さんから勇気をもらった一ファンでした」と語り、闘病する和さん本人を演じ、表現するため、約2カ月で10キロ減量するなど全身全霊で演じ上げた。夫の将一さんを初共演の高杉真宙(30)が演じた。試写での評判も上々だっただけに、今回の厚労省とのタイアップが水を差してしまった格好だ。

今回の件に先立ち、法務省が21日に「ヤンキー」と「恋愛リアリティーショー」を組み合わせたNetflixの番組「ラヴ上等」シーズン2とタイアップし「更生上等!!」などと書かれたポスターを作製したことに対し、批判が相次ぎ、21日に取りやめる騒動があったばかり。法務省は公式サイトで「犯罪や非行そのものを肯定したり、過去のこうした行為を美化したり軽視したりする意図はありませんでしたが、犯罪被害に遭われた方々から見れば、不快感や割り切れない思いを抱かれるのではないかといった御懸念や御批判を多くいただきました」と謝罪していた。

◆「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」 青森で暮らす遠藤和(川口春奈)と将一(高杉真宙)は、時にぶつかりながらも「一分一秒、一緒にいたい」と願うほど、かけがえのない日々を過ごしていた。その中、和に突如つきつけられたのはステージ4の大腸がんというあまりにも残酷な宣告だった。残された日々は限られていたが、将一は「一生大切にする」と和の手を固く握りしめた。2人の絆は、和の一つの願い「わたしたちの子供に会うこと」へとつながっていく。だがその覚悟は、自身の命をつなぐ抗がん剤治療を止めるという、あまりにも重い選択を伴った。