アジアパラ・円盤投げで「金」狙う新保大和、昼間は東京・丸の内でバリバリ働くビジネスマン
この秋に愛知県を中心に開催されるアジアパラ競技大会(読売新聞社協賛)で、円盤投げで出場する新保大和選手(26)には脳性マヒの障害があるが、日中は東京・丸の内でバリバリ働くビジネスマンでもある。
大会では社内で宣言している優勝を勝ち取り、同僚と喜び合うことを夢見ているという。
午後3時まで人事部社員
中学校の時に陸上競技を始め、陸上人生一筋で駆け上がり、アシックスに入社した。「陸上ばかりしていましたが、社会人になってからは、限られた時間で質の高い練習を心がけている」と笑顔で話す。
スポーツ用品のアシックスで人事部に所属し、若手社員を中心とした研修業務に携わっている。午後3時までは会社員として働き、退社後は、母校の日本体育大学などで、学生らと交流しつつ、陸上選手として筋力トレーニングや円盤投げの練習に励む。
練習は一人で黙々と進めることが多いという。自らの投てきの姿を動画で撮影し、自分のイメージと、実際の投げたフォームの違いを埋めながら、理想の投てきを目指す。
季節によって、投げる感覚も変わるという。そうした変化を敏感にとらえて、微修正を進めていく日々だ。しかし、「練習で完成したフォームを作ることは目的ではなく、問題はより遠くへ飛ばすこと」と割り切り、本番では、細かいフォームにこだわらず、遠くへ飛ばすことだけに集中するという。
世界選手権で銀、アジアパラでは金を
2024年のパリ・パラリンピックでは「そろそろ1位を狙える」と感じていたが、結果は4位となり、メダルには手が届かなかった。「頭一つ抜ける強さが足りなかった」と振り返るが、昨年インドで行われた世界選手権の銀メダルと、着実に前に進んでいるという実感はある。アジアパラでは頂点を狙っている。
脳性マヒで左半身に障害が残り、細かい体の使い方が苦手だが、その分筋力でカバーし、高校までは健常者と互角に戦える力があると感じることもあった。

しかし、健常者と障害者では円盤の重さも異なり、両方を兼ねて競技をすれば、体調を整えることは難しい。今ではパラ陸上で頂点を目指すと割り切って、集中しているという。
恩師との約束が原動力
パラ陸上で頂点を目指すには他にも理由がある。中学時代に陸上競技の基礎を指導してくれた顧問の先生に「東京のパラリンピックで優勝します」と約束したからだ。結果として東京パラでは選考に落ち、舞台にすら立てなかった。恩師は既に他界しているが、その約束を28年のパラリンピック(米ロサンゼルス)で果たすことが原動力になっている。
勤務先では、これまで大会があるごとに「優勝します」と宣言していることもあり、次こそ頂点に立った姿を同僚にも見せたいという思いもある。
愛知・名古屋を中心にして開かれるアジアパラは、同僚の声援を受けて世界の頂点に向かい、恩師との約束を果たす重要な通過点となるはずだ。
◇
しんぼ・やまと 兵庫県出身。先天性の脳性マヒがあり、左半身に障害がある。中学校時代に陸上競技で投てきを始め、2026年のアジアパラ競技大会では、頂点を狙える選手として期待されている。24年パリで開かれたパラリンピックで4位、25年インドで開かれた世界選手権で銀メダルを獲得。28年の米ロサンゼルスで開かれるパラリンピックに向けて実績を積み上げている。
