鉄と向き合う/絶望ライン工 独身獄中記 第76回

『絶望ライン工 独身獄中記』を読む
我ながらめちゃいいタイトルを冠したな、と1行しか書かれていない原稿を眺めてニヤニヤしている。
こんな時は喫茶店で飲むアイスコーヒーも格段に旨い。これで2行だ、がんばれ。
鉄とは一体何の事か。鉄道についての蘊蓄か、JFEスチールに関する考察か。
それとも宇宙会員ナンバー26番、「くろがね」の事か――
皆さん、死ぬのって怖くないですか。
誰にでも最期はあり、逃れられない運命だとわかっていても怖い。
周りでも亡くなる方がいたりして、死は身近に存在するスキップ不可の強制エンディングだ。
死生観は国籍や信仰により皆違う。
転生、復活、天国、地獄、魂の統合など死後の世界について述べる教典はいくらでもあるが、明確に「死を回避できる」という教義は存在しない。
神に祈れば天国へ行けるが、死から逃れる術を知る預言者は有史以来誰もいなかった。
皆が死を恐れず受け入れられるよう、宗教はあるのかもしれない。
せっかくなので私の死生観を述べる。
ふざけられる内容ではないので真面目に書いてみます。
まず自分は無神論者であるから、死後の世界はないと考える。
我々は夜眠るが、夢を見ずに眠っている状態が永遠に続くのが死で、睡眠はその予行演習というか無料おためし期間であると思っている。
ただ魂はあるのかもしれない、あって欲しいなと願っています。
飼っていた猫やウサギが化けて出て来てくれるやつ、あの手の話に筆者は弱い。
生命が朽ちて土へ還る、もしくは煙になって雨が降る。
好きな曲の歌詞に「あなたの煙は雲となり雨となるよ」というものがあって、まさにその通りを想像している。
そうして物質的にはずっとこの星に在り続けるわけだから、これこそが輪廻転生であると思っている。
子供がいたら尚更命の繋がりは強固で、螺旋構造でずっと続いていくイメージがある。
だから皆本能的に子孫を欲するんじゃあないだろうか。
しんみりさせる意図は無いので、ここからちゃんとふざけますね。
ふざけるというか、死が怖くなくなる魔法の言葉を教えます。
それは「どうせ鉄になるんだ」です。
いくら地球上で物質的な生命のサイクルが繰り返されたとて、あと50億年もすればこの星は滅びると予想されている。
太陽系も銀河系も、この宇宙自体も色々あって最後はドカンと景気よく終わるそうだが、最終的に皆鉄になるらしい。
宇宙会員ナンバー26番くろがね鉄子ことFeはとても安定した物質で、太陽をはじめとする恒星たちは不安定な核融合を繰り返し、最終的に鉄になることを目指して今この瞬間も「よっしゃ!」と頑張っている。
宇宙ごと鉄になりたがっているのがなんとも神秘的だが、そんなわけで地球も色々あって最後は皆鉄になるわけだ。
そう考えると小さな悩みとか不安とかどうでもよくなる。
全然元本が減らない銀行ローンも来年からバズっているチャンネル以外一掃されるYouTubeショート規約も壊れかけのレディオもクラッチペダルも将来の不安も婚活も転職も高血圧も。
そして原稿が締め切りまでに終わらなくたっていいじゃあないか。
どうせ皆鉄になるのだから。
