舌鋒鋭く現役世代への喝を入れる斎藤氏

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 TBS系「サンデージャポン」やYouTube番組「ReHacQ」でお馴染みの経済思想家・斎藤幸平氏。53万部のベストセラーとなった著書『人新世の「資本論」』(集英社)では「脱成長コミュニズム」を唱え、新たな社会像を提言した。そんな彼に、過酷な資本主義社会に日々、晒される現役世代の生きるヒントを聞いてみた。
◆脱成長は「働かなくていい」ではない

斎藤 SPA!の読者が私の話に興味ありますかね? 扶桑社はフジサンケイグループで右寄りだし、「反社」、反社会主義ではないのですか。

――いえいえ、資本主義社会で擦り減っている斎藤さんと同世代の読者も多いんです。

斎藤 実は私、擦り減ってる感覚がわからないんですよ。

――あれほど多忙なのに?

斎藤 自分でやりたくてやってますから。多忙でも資本主義社会で消耗しているとは必ずしも言えないわけ。

――斎藤さんといえば「脱成長」(※)を唱えられていますが。

斎藤 「脱成長なのに働きすぎだ」とよく茶化されますが、脱成長も社会主義も「働かなくていい」という主張ではありません。資本主義の歯車に巻き込まれず、自分の大切なことに時間を使える社会を目指すものです。やりたいことが多ければ忙しくもなる。逆に、無限の資本増殖のため、意義を見いだせない仕事に人生を費やす今の社会こそ、おかしいとは思いませんか。

――では、ReHacQの高橋プロデューサー(※)からの急な出演オファーにも、意欲的に臨んでいると。

斎藤 まあいつも、そこまで意識高いわけでもないですが(笑)。とはいえ、ReHacQは立場の違う論客とか視聴者と対話する貴重な機会なので大切にしてます。今はリベラルや左派が嫌われているから、立場の違う人々にリーチして主張を届けないと、ますます弱体化していくから。この間は読売テレビの「そこまで言って委員会NP」(※)に出演しましたけど、そういう場には積極的に出るようにしてます。だって、今は本を書いたって誰も読まないので。社会主義を世に広めるのは大変なんですよ。

◆「テクノ資本主義」の独裁はすでに目の前

――それでも、斎藤さんの『人新世の「資本論」』は約50万部超のベストセラーです。

斎藤 発売された’20年はコロナ禍で読書する人が多く、エッセンシャルワーカーやSDGsへの関心も高かった。脱成長が時代に響いたのでしょう。でも今はYouTubeすら長く感じ、ショート動画やTikTokを眺め続ける人もいる。GoogleやAppleのようなデジタルプラットフォーマーには、理想的な社会でしょうね。

――コロナ禍以降、デジタルシフトは加速しました。

斎藤 現役世代はリモートワークで仕事と私生活の境目が消え、チャットやオンライン会議に追われている。仕事以外でもSNSやサブスクに時間を奪われ、そこで生まれたデータを基に、さらに利用させるアルゴリズムが磨かれる。巨大企業に時間と情報を握られる環境を、私はテクノ資本主義(※)と呼んでいます。

――私たちの行動がプラットフォーマーの養分になると。

斎藤 そう。しかも、ジョージ・オーウェルの『1984年』(※)のように強権的な統制や監視に息苦しさを感じるわけでもなく、「いいね」が欲しくて自ら個人情報を差し出し、楽しみながら独裁を支持している。さらにアメリカでは、テック富豪が政治と結びつきました。イーロン・マスクは民主的な手続きを経ず、トランプとの関係からDOGE(政府効率化省)(※)を主導し、政府組織の再編や歳出削減に関与した。日本も決して他人事ではありません。

――政治系のショート動画が選挙に与える影響も問題視されていますね。

斎藤 選挙が完全に操作されているとは言いませんが、収益目的の粗製濫造動画がバンドワゴン効果(※)を生み、結果に影響している。民主主義の根幹である選挙まで、テクノ資本主義に飲み込まれているわけです。問題に気づいても、生活にプラットフォームが入り込みすぎて利用をやめられない。テクノ独裁からの逃げ道も塞がれています。