人手不足の時代に輝く“有能な無職”という即戦力…大企業になじめなかった“金の卵”に一度は仕事を頼んでみるべき理由
どの業界を見渡しても、人手不足が問題となっている昨今だが、その一方で、私の周囲には、能力は高いのに、職についていない人が少なからず存在しているのもまた事実だ。そんな「有能な無職」こそ、企業、特に中小企業にとっては「金の卵」ではないだろうか。特に、事務系や企画系の企業にとっては採用すれば即戦力になるに違いない。【中川淳一郎(ネットニュース編集者)】
会社は人材がすべて
私が編集・執筆・PRを主業とする会社を立ち上げて今年で17年が経った。私とY(女性=大学同級生)の2人で今年まで続けてきたが、社長である私自身が本社のある東京から遠く離れた佐賀県唐津市で半隠居生活をする中、受注量が増えた。もう一人誰かいい人がいないかと思っていた矢先、活きの良い若者とYが知り合い、業務委託という形で雇った。

先日、その若者に初めて対面した。うちで働いてもらっているので当然といえば当然だが、同じデザインの名刺を交換するという不思議な経験をした。おかげさまで会社は順調に回り、結局会社は人材がすべてだなと実感した次第である。そう彼もまた、「有能な無職」だったのだ。
「有能な無職は金の卵である」という事実に気がついたのは、(自分で言うのもおこがましいが)元々私自身、新卒で入った会社を4年で辞め、しばらく無職になった後、学生時代や会社員時代のツテで仕事を獲得しまくったからである。
それから8年、知人の税理士から法人にした方が良いと助言され、2009年に一人会社を設立。その頃あまりにも忙しかったため、誰か人材を探していた。そんな中、超大企業を辞めて無職に転身したYと再会。これはこれはいい人材が労働市場に浮いていたわい、と感じ「オレの会社入らない?」と誘った。すると彼女の能力はドンピシャでハマり、仕事が激増して会社の業績は上向いていった。そして今回の若者である。
人材を獲得するにあたっては、採用広告を出すか、転職エージェントを利用するのが一般的。いずれも、業務内容・待遇を重視する人を採用するわけだから、条件をすり合わせたうえで、「三顧の礼」で迎え入れることになる。我々のような超零細企業は、突然やったこともないような仕事が舞い込んでくるのが日常茶飯事。事前に業務内容を詳細に示して、それを厳密に守ることは無理である。「こんな仕事やると聞いていませんでした」なんて言われ、すぐにその人物は会社を去ることになるだろう。
「いいっすよー」と快諾
それなら、同じ業界でバリバリ働いている知人をヘッドハンティングという手もあるが、元の会社の方が安定しているし、給料も高いかもしれない。そこから引き剥がすのはなかなか難しいのだ。
そんな時に「有能な無職」が輝きを放つ。私とYは無職時代「まぁなんとかなるか」といった心持ちで日々過ごし、たまに知人から仕事をもらって、生活を成り立たせていた。仕事が終わり、しばらくすると突然銀行に10万円振り込まれた時には大層感動したものである。
というわけで、無職だから時間は無限にあるし、特にプライドが高いわけでもないため、行き当たりばったりで与えられた仕事をこなすことになる。そうこうしているうちに、いつしか専門分野を得るということになる。我々の会社の場合は「編集」である。Yは当初経理をするつもりで入ったのだが、押し寄せる発注を前に、なし崩し的に編集の仕事もするようになった。給料については、彼女が税理士と相談のうえ、「自分の貢献度合いと売上を考えて納得できる額を決めて構わない」と伝えた。
今回の若者もその手のタイプであり、ひょんなことからYが出会い、一緒に仕事をしないかと相談。彼は「いいっすよー」とそのオファーを受け、大手出版社に半常駐している状況にある。3人での会合の時、一体なぜ「有能な無職」がいいのかと話し合ったのだが、以下のような点があがった。ちなみに若者は大学卒業後は就職せずラーメン屋で働き、その後書店に転職し、無職になった。
無職であるが故の可能性
【1】後先考えず思い切りがいいため、新規業務が来てもビビらず取り組める
【2】プライドがあまりないため、イヤ過ぎない仕事であれば、積極的に受け、完遂する
【3】生活に困窮した経験があるため、カネに感謝する。つまり、発注主に感謝するため、感じが良く、向上心がある
多くの無職の人は自分が社会不適合者なのではないかと悶々としたり、能力が足りないのではないかと自信喪失する場合があるかもしれないが、そんなことはない。さすがに40代まで無職でい続けたような生粋の無職は別だが、20・30代で有職の経験がある人ならば、そこからの躍進は可能である。
思えば、我々の属する編集・執筆業界は、「有能な無職」からフリーランスになり、その後正社員として勤務し出世する例も数多い。零細企業で人手が必要な人は、労働市場で浮いている無職と一度会ってみればいい。元々の知人でもいいし、初対面でピンと来て、それからしばらく軽く仕事を頼んで、有能だと感じたら雇ってしまえばいいのである。さすれば採用コストはほぼゼロで会社にマッチした人材を獲得できるかもしれない。
ネットニュース編集者・中川淳一郎
デイリー新潮編集部
