ソニー がプレイステーションで挑む広告収益化。ゲーム機依存脱却の理由

記事のポイント
ソニーが米国・英国・日本で相次ぎ求人を出しており、プレイステーションのグローバルな広告組織、インフラ構築を進めている。
過去三度の試みは定着しなかったが、開発費高騰やユーザーの価格感度上昇により、広告収益の重要性がかつてないほど高まっている。
ゲームの利用時間はソーシャル動画と同等にもかかわらず広告収入は10分の1にとどまっており、巨大な未開拓市場として注目されている。
そしていま、ソニー(Sony)もプレイステーション(PlayStation)で同じことをしようと動き出している。
相次ぐ広告求人が示す拡大の兆候
少なくとも、プレイステーションの広告枠を販売する部門で相次いで出されている求人がその兆候だとすれば、そう読み取れる。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(Sony Interactive Entertainment)のメディアソリューションチームが出している求人のうち、いくつかは広告に特化したものだ。
もっとも明確な兆候は、クライアントパートナーシップを担当するグローバルディレクターの求人だ。この求人は2026年7月中旬に掲載され、本稿執筆時点でも掲載が続いている。その職務は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント・メディアソリューションのクライアントパートナーシップ営業組織について、グローバル戦略、体制、成果を定義し、推進することとされている。
その権限は、プログラマティック、FAST、CTV、さらには新興の広告ソリューションにわたり、プレイステーションのエコシステムを全世界の市場で対象とする。端的にいえば、この職務はある機能を拡大させるためのものであり、それはたいてい、プラットフォームがマネタイズを一段と強める直前に現れるものだ。
それと並ぶかたちで、カリフォルニア州サンマテオにあるソニー・インタラクティブエンタテインメント本社では、広告オペレーションとテクノロジーを担当するディレクター級の求人も出ている。これも本稿執筆時点で掲載が続いているが、掲載日は記載されていない。
その職務は、グローバルな広告テクノロジーとオペレーションのエコシステムを構築することだ。求人によれば、その範囲は広告配信、プログラマティックによるマネタイズ、オーディエンスターゲティング、効果測定、そしてプライバシーを最優先したデータ活用に及ぶ。
この人物は、米国、イギリス、日本にまたがるチームを率いることになり、これはこの構築が地域限定の実験ではなく、グローバルなインフラを対象としたものであることを示唆している。
さらにその下では、同社は2026年の初夏前のどこかの時点で(正確な掲載日は記載されていない)、ロンドンでも広告オペレーションの求人を出していた。これは、リーダー層の採用の下に組み立てられつつある営業・オペレーション体制を補完するように見えるもので、その部門をはっきりと「プレイステーションの新設された広告組織」と説明していた。
なお、この求人はすでに掲載されていない。Digidayが最後に確認した2026年8月3日より前のどこかの時点で取り下げられた。
また別のところでは、東京で広告営業のクライアントパートナーを募る求人もあり、これは2026年7月中旬から下旬に掲載されたとみられ、こちらもまだ掲載が続いている。
この求人はチームを「ゲームとエンターテイメントのエコシステム全体でイノベーションを推進し、価値を届けることに注力する、ダイナミックでグローバルな広告営業組織」と説明しており、ブランドとプレイステーションのオーディエンスを結びつけることを軸に据えている。
これはサンマテオやロンドンの求人とは異なる種類の職務であり、より担当顧客を持つ営業寄りの仕事だ。求人によれば、その役割は「戦略的な広告パートナー群にとって信頼されるアドバイザーとして、コンサルティング型の営業と関係構築を通じて長期的な事業成長をけん引する」ものだという。
過去三度の挑戦とその失敗
ソニーがゲーム部門を軸に広告事業を築こうとするのは、これが初めてではない。
同社はこれまでにも、ハードウエアやサブスクリプションではなく広告を通じてプレイステーションのオーディエンスをマネタイズしようと、三度に渡って試みてきた。
2008年には、PS3でゲーム内のダイナミック広告を開始した。同じ年、ソニーはブランドの出稿先となる不動産を兼ねた仮想世界「プレイステーション・ホーム(PlayStation Home)」を公開した。
さらに2022年には、ソニーが18カ月かけてプレイステーションのゲームに直接広告を挿入するシステムを密かに開発し、その年の終わりまでにプライベートマーケットプレイスを立ち上げようとしている、とブルームバーグ(Bloomberg)が報じた。
だが、そのいずれも持続的で規模のある広告事業にはならなかった。
いま広告に傾く業界の事情
「このタイミングもまた、偶然ではない」と、調査会社イーマーケター(eMarketer)のテクノロジーアナリスト、ジェイコブ・ボーン氏は述べた。
「ゲームへの消費者支出は、以前より価格に敏感になっている。パブリッシャーは、プレイヤーの負担を増やさないマネタイズの手段を必要としており、広告はその明白な選択肢だ。残された障壁は広告インフラであり、それは少しずつ構築が進んでいる」。
その理由は、戦略的であると同時に文化的でもある。制作費が上昇し、プレイヤーがごく一握りのお気に入りのタイトルにより多くの時間を費やすようになるなかで、広告収入への商業的な必要性はかつてないほど高まっている。
これまで広告は、必須というよりは、あればうれしいものという位置づけであり、業界がそれを全面的に受け入れることはなかった。仮に意欲があったとしても、これまで一度も広告を快く思ったことのないゲーマーを苛立たせるリスクが、その見返りを上回っていた。
だが、そのバランスは変わった。ゲーマーはいまも広告を嫌っているが、開発会社やゲーム機メーカーは、その広告収入が運営コストの高騰を相殺しうるという事実を無視できなくなっている。
ゲーム業界の最大手のうち2社は、明らかにこれを諦めていない。マイクロソフト(Microsoft)のXboxとエレクトロニック・アーツは、業界全体にとって難しい局面にあるなかで、いずれも自社の広告事業を構築している。
マイクロソフトは8月初めに、Xbox事業から3200人を削減した。一方のEAは、開発費が上昇し続けるなかでも、ゲーム価格を引き上げない姿勢を守ってきた。いずれにせよ、広告を推す理由はかつてないほど強まっている。
利用時間と広告収入のギャップ
「ゲームの根拠は、その圧倒的な利用時間の長さにおおむね支えられている」とボーン氏は述べた。
「我々イーマーケターのデータによれば、ゲームはソーシャル動画とほぼ同じだけの時間を占めているにもかかわらず、1分あたりの広告収入はおよそ10分の1にとどまっており、2026年のアメリカのデジタル広告費に占める割合はわずか2.4%になる見込みだ。この差こそが機会だ」
なお、ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、本記事の公開時点でコメントの要請に応じなかった。
[原文:Sony is scaling up its Playstation advertising ambitions]
Seb Joseph(翻訳、編集:藏西隆介)
