カン・イスルは14日の試合、両チーム最多の20得点を挙げた【写真:羽鳥慶太】

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目前で逃した勝利…それでも「すごく良い試合ができた」と韓国主将

 女子バスケットボール日本代表は14日、東京・有明アリーナで韓国代表との強化試合「三井不動産カップ2026」を戦い、田中こころの劇的な3ポイントシュートで78-77の逆転勝ちを収めた。逆に、勝利を目前で奪われた韓国代表にも、得たものがあったという。世代交代中のチームは2連敗の中から「学び」を得ようとした。その裏側には、日韓の女子バスケット界が急接近している事情があった。

 勝利は目前に迫っていた。韓国は第1クオーター(Q)を22-9とリードして終えた。序盤につまずき、最後まで巻き返すことができなかった前日とは正反対の試合展開。3ポイントシュートも冴えた。第2Q、第3Qと少しずつ日本に差を詰められたものの、韓国が77-75とリードして迎えた残り10秒。韓国陣内にドリブルで切れ込んできた田中が3ポイントラインの外から放ったシュートは、ゆっくりと弧を描いてリングに吸い込まれた。残り0.2秒での劇的な逆転劇だった。

 試合後、韓国の主将カン・イスルは「今日は結果的には悔しいものの、すごく良い試合ができたと思いますし……」と口にした。日韓戦という言葉からイメージされる重さは、そこにはない。両国ともに9月のワールドカップを前にした、強化試合だからでもあるが「昨日の試合の後に、何か一つでも得られるような、試合らしい試合をしようという話をしたんです」。前日は77-59で日本が勝利。試合後には「これでは何も学べない」と漏らしていた。

 日本戦で「学びたい」という言葉が口をつく背景には、両国の女子バスケ界が急接近している現状がある。この大会開幕前、カン・イスルに「日本語ができると聞いたのですが、本当ですか?」と聞いた。ちょっと驚いた表情で口にした「チョットダケデス」は、発音もきれいなものだった。

 韓国の女子プロリーグ「WKBL」には2024-25シーズンから「アジア枠」がある。カン・イスルが昨季までプレーした清州KBスターズにも初年度、現在はトヨタ自動車に復帰している永田萌絵や、かつてシャンソンでプレーした志田萌が加入した。

 カン・イスルに、日本語を学んだ理由を聞くと「試合でプレーするときにハナシデキナイから…」と、韓国語での会話に日本語の単語が混じった。バスケの競技特性上、コート上で選手同士の意思疎通が必要不可欠。「通訳なしで話したほうが意思疎通が速いです。普段バスケをしていないときでも、他の選手と話をできないと寂しいじゃないですか。私もその気持ちがわかるので……」。

 カン・イスルはかつて、世界最高峰の米WNBA、ワシントン・ミスティクスのトレーニングキャンプに参加し、プレシーズンマッチに出場したこともある。当時は日本代表の町田瑠唯とチームメートだった。海外でプレーする喜びも苦しさも知っているのだ。

口にしたギャル語に見えた…日本との距離が急接近

「だから、日本から来る選手もたくさん助けられればと思います。ちょっとでも早く適応してもらえればチームのためにもなります。それを助けられればという思いから、勉強を始めました」

 そんなカン・イスルに、好きな日本語を聞くと「え、何だろうな」としばらく考えた後「最近は韓国でも“ギャル”が流行っているので……」と笑った。日本の1990年代末にあったようなギャル文化が今年、韓国で流行しているのだ。

「だから『ダルイ』とか『マジデ?』とか、こういうのをよく使っていますね、最近は。他には『オイシイ』とか……」

「裏ピース」などのギャルポーズもはやっているが、32歳のカン・イスルは「私は恥ずかしくてできません」とこれには及び腰だった。

 アジア枠の選手たちは韓国リーグを席巻しており、補強の成否がチーム成績を左右するまでになっている。人気面でも、昨季のオールスターには元アイシンの飯島早紀(富川ハナ銀行)がファン投票1位で出場したほど。日本の選手から受ける影響をカン・イスルは「いい刺激になっているとは思いますよ」と見ている。

「日本からはいい選手も、(日本では)ベンチにいた選手も韓国に来ました。彼女たちとの実力差を確認できますし、その選手が来たことで試合に出られない選手が出てくると、もう少し頑張ろうというモチベーションにもなると思います。一方で、日本ではシックスマンだった選手がWKBLで活躍しているのは、少し反省させられる部分もあります」

 韓国代表を背負う存在として、日本選手との比較には「一人の選手同士で見た時には、大きな違いはないと思っているんです」とプライドを見せる。

 ただ一方では「基本的な体の使い方やハンドリングは、日本の選手がめちゃくちゃ上手な部分。だから技術をスムーズに吸収できると思うんです。韓国の選手たちは試合中心のトレーニングで育っているので、そこに違いが出ていると思います」とも。日本代表ヘッドコーチのコーリー・ゲインズ氏は韓国代表を「常に動いているタフなチーム。決して楽な相手ではない」と評した。両国の交流と学びあいが、アジアのレベルを上げていく。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)