【宮本 建一】出前館はなぜ「7期連続赤字」でも生き残れるのか?LINEヤフーが300億円超を注ぎ込むも見えない「黒字化への道」

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街中で見かける配達員の制服や、有名芸能人を起用したCMでもおなじみの出前館。しかし、その知名度とは裏腹に、業績は厳しい状況が続いています。2025年8月期決算では営業利益、最終利益ともに赤字となり、2019年8月期以降、黒字化を達成できていません。

出前館を取り巻く環境も、決して楽観できるものではありません。フィンランド発のフードデリバリーサービスWoltは、2026年3月に日本でのサービスを終了しました。競合の撤退は一見すると出前館に追い風のようにも見えます。

しかし、日本のフードデリバリー市場では、Uber Eatsが依然として強い存在感を持ち、新規参入したロケットナウも「送料・サービス料0円」「店頭と同じ価格」を掲げて全国展開を進めています。競合が1社減ったからといって、価格競争や配送網の整備負担が軽くなるわけではありません。

本記事では、出前館の業績推移、財務基盤、競合他社の動向をもとに、同社が直面する課題を読み解きます。

創業当時は堅実な「黒字企業」だった

出前館は直近8期で売上高は順調に推移していますが、7期連続で赤字となっています。

出前館の直近8期を振り返ると、事業規模の拡大と引き換えに、広告宣伝費や配送網整備などの投資負担が重くなり、黒字企業から慢性的な赤字企業へと姿を変えていったことが分かります。

2018年8月期の出前館――当時の「夢の街創造委員会株式会社」は、売上高54億3000万円、営業利益8億3700万円、最終利益5億5800万円と黒字を確保していました。現在の赤字続きの印象とは異なり、この時点では事業規模こそ大きくないものの、堅実に利益を残す会社でした。

売上は伸びたのに、なぜ赤字が続くのか

流れが変わり始めたのは2019年8月期です。売上高は66億6600万円へ伸びた一方、営業損失3900万円、最終損失1億300万円となり、赤字に転落します。その背景には、Uber Eatsの存在があります。

Uber Eatsは2016年に東京でサービスを開始し、2018年には大阪、京都、神戸、さいたま、名古屋、福岡などへとエリアを拡大していきました。こうした外資系の強力な競合に対抗するため、出前館も広告宣伝費やシステム投資、配送体制の整備などに多額の費用を投じていったと考えられます。

その後、コロナ禍でフードデリバリー需要が一気に拡大し、出前館の売上高も急増します。2021年8月期には290億800万円、2023年8月期には514億1600万円とついに500億円を突破しました。

膨らみ続ける営業経費

しかし、売上の伸びと同時に、利用者獲得のための広告宣伝やクーポン、配送網整備などの費用も膨らみます。2022年8月期には営業損失364億4200万円、最終損失362億1800万円と、損失はピークに達しました。2023年8月期以降は赤字幅が縮小し、2025年8月期の営業損失は49億2300万円まで改善していますが、いまだに黒字化には至っていません。

また、売上高も2023年8月期をピークに減少しています。2024年8月期は504億円あまり、2025年8月期は397億2100万円となり、400億円を割り込みました。もっとも、2025年8月期は第2四半期以降、クーポン利用額を売上高から減額する処理を採用しているため、会計処理の変更による影響もあります。

こうした売上の減少と慢性的な赤字を打開するため、出前館は2026年8月期に「トップライン(売上高)の2桁成長」と「ボトムライン(利益)の改善」を掲げました。つまり、売上を再成長させつつ、赤字幅の縮小を目指すということです。

その一環として、同社は期間限定で「お店価格で出前館」や「LYPプレミアム会員ならいつでも送料無料」を実施し、収益の改善を目指しています。

赤字続きでも資金繰りに行き詰まらない理由

ここまで長期にわたり赤字が続いていると聞けば、「資金繰りは大丈夫なのか」「銀行は融資してくれるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。

しかし、出前館は銀行融資などの負債を増やす「デット・ファイナンス」ではなく、増資によって株主資本を厚くする「エクイティ・ファイナンス」で資金を調達してきました。

出前館は2020年の資本業務提携で、LINEが150億円、未来Fundが150億円を引き受ける第三者割当増資を行い、合計約300億円を調達しました。さらに2021年には、海外募集と、ZホールディングスおよびNAVERを引受先とする並行第三者割当増資により、全体で約830億円を調達しています。資金使途は、マーケティング費用、システム強化・開発資金、配達員増強資金などでした。

これらの資本注入があったからこそ、出前館は巨額赤字を計上しながらも、事業継続のための財務基盤を維持してきたといえます。

では、なぜLINEヤフー系は出前館に資金を投じたのでしょうか。その狙いは、出前館をLINE・Yahoo!経済圏におけるフードデリバリー、さらには飲食店向けプラットフォームへ育てることにあったと考えられます。

出前館の公式サイトでは、出前館IDとLINE IDの統合、LINEのユーザー基盤、IDマーケティング、位置情報、AI技術、出前館の加盟店営業力を活用すると説明されています。

さらに、デリバリーだけでなく、テイクアウト、イートイン予約、モバイルオーダーなどを含む「総合フードマーケティングプラットフォーム」を目指すとも示されています。LINEの膨大なユーザー基盤を組み合わせれば、一気に成長を加速できる可能性があると見ていたといえるでしょう。

耐えられる期間は5年程度か

では、出前館はこのまま赤字が続いた場合、どれくらい耐えられるのでしょうか。

2025年8月期末の自己資本は286億2500万円、現預金は285億3600万円です。一方、2025年8月期の営業キャッシュ・フローは49億7000万円のマイナスでした。単純にこの営業キャッシュ・フローの赤字幅が続くと仮定すれば、手元現金だけで見れば5年程度は耐えられる計算になります。

ただし、これはあくまで単純計算です。自己資本は現金そのものではなく、実際の資金繰りは運転資金や未払金、追加の成長投資などにも左右されます。

また、2026年8月期第3四半期時点では営業損失が63億7000万円まで拡大しており、通期業績予想も下方修正されています。赤字幅が拡大すれば、財務余力が削られるペースも速まります。

このように、出前館は直ちに資金が尽きる状況ではありませんが、大型増資で得た財務基盤を使いながら赤字を吸収している構図であることは確かです。今後も赤字が続けば、追加の資本政策や事業構造の見直しが課題になっていくと考えられます。

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