大改革進行でNHKから聴こえる不協和音の正体…「システム大変革で放送事故が増えないか」との懸念も

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目下進んでいる新施設への移転計画。5月中に完了する予定が局側の事情で大幅に遅れている。「みなさまのNHK」に生じている異変とは。

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仕事が増える一方で上司からの「圧」も

すでに新システム導入の現場へのしわ寄せが散見され始めているという。冒頭の職員が語る。

「ここ数年、コンプラ基準が厳しくなる中、視聴者に少しでも誤解を与えるような表現があったら、即刻、顚末書や事由書を作成して、上長に報告しなければいけないなど、上層部からの「圧」が増しています。そうした中で人件費削減のために、番組制作に携わる職員の仕事量はさらに増える一方です。すでに制作の現場にはミスを極端に恐れる、重苦しい空気が漂い始めています……。新システムへの移行により、ますます放送事故が頻発するのではないか」

情報棟のオフィスには、固定席を割り振らずに、職員が自由に席を選べるフリーアドレス制の導入が検討されている。これについても多くの職員が後ろ向きのようだ。

「現在の施設と比べると収納スペースが極端に少ないのです。早急に引っ越しを終わらせたい経営側は『捨てて生まれ変わる』を合い言葉に、オフィスや書庫にある書籍や雑誌など紙の資料の廃棄を促しています。

しかし資料の中には、これまでに職員たちが何度も現場に足繁く通い、ようやく入手した極秘ファイルも含まれている。そうした資料は、報道機関にとって重要な共有財産であるにもかかわらず、廃棄するのが嫌だったらトランクルームでも何でも借りて、個人で保管してくれ、というスタンスなんです。計画性もビジョンもない方針に現場の士気は下がっています」(同前)

こうした問題を抱える中、NHKでは6月5日に人事異動が発表された。今回の組織改編による新体制では、主にデジタル部門を担当するというプラットフォーム戦略局やデジタルプロダクト局といった部署が新設された。

新体制のスタートについてNHK関係者がため息交じりにこうこぼす。

「業務の違いが分からないままデジタル部門が2つも新設された。こうした部署にはデータやAIを用いて、いろいろ分析をするのが好きな人たちが集まるので、これからさらに会議も増えそうです。

また、バブル入局の大量採用世代が定年をむかえる時期に差し掛かっていますが、そうした管理職クラスのロートル職員に対しては、『専任部長』や『専任局長』という肩書を新たに与えることで、相変わらず居座らせている。時間を持て余している彼らのヒマ潰しのための会議も増えて、本業への時間はさらに奪われそうです。新体制となり、挨拶まわりや会議が増える中、本当に年内に引っ越しが完了するのか。秋に情報棟で働いているイメージなんてまったく持てませんね」

こうした事情についてNHK広報部に取材を申し込んだところ、こう回答があった。

「放送センター建替計画の第Ⅰ期で建設した情報棟は、2024年(一昨年)10月に建物が完成し、今年度前半に本格運用を開始する計画としています。一般的に新たなシステムなどを整備する場合、一定程度の不具合に対処しながら、安定的な運用を行っていくものと考えています。現在、放送設備の整備やテスト、運用訓練などを行っており、本格運用の時期は、今後決定することとしています。これは、当初から想定した進め方です」

人気の寿司コーナーもなくなった

放送システムのトラブルがなければ、そもそもは5月中に情報棟への引っ越しが完了する予定だったため、現施設にあった一部の食堂は閉店し、すでに情報棟に新しい食堂が開店している。そのため、現在は、職員が昼食をとるために現施設と情報棟を行き来する始末だという。

「新しい食堂は以前よりも価格が高くなり、日替わり定食のおかずの品数もボリュームも減ったと不評です。かつての食堂では、寿司コーナーがあり数年前までは寿司職人が常駐していて、握り寿司セットや海鮮丼が1000円程度で提供されていた。好評だったが、それもなくなって残念」(前出のNHK関係者)

メディアコンサルタントの境治氏はNHKの現状について、こう指摘する。

「過去の大河ドラマや朝ドラをネットフリックスで配信することに合意しましたが、民放キー局の二番煎じにすぎず、決して目新しいマネタイズの手法ではありません。

これまでNHKの屋台骨であった受信料制度が限界を迎えつつある中、受信料以外の収益を確保するために、これからNHKはどうあるべきか、どう生き残っていくべきか、公共放送、公共メディアとしての独自性や長期的なビジョンがまったく見えてこないのです。

長年の慣例やしがらみに縛られ、結果的にその場しのぎの施策しか打ち出せないのであれば、組織としては衰退するのみでしょう」

巨額の資金を投じて進められている放送センター建て替え計画だが、すでに完成している情報棟については、現時点では現場職員にとって無用の長物のようである。

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取材・文/大崎量平(本誌記者)おおさき・りょうへい/'76年、山口県生まれ。学習院大学卒業後、『FLASH』記者などを経て、'18年より現職。芸能・スポーツから医療・健康・ビジネスなど、幅広い分野を取材・執筆する

「週刊現代」2026年8月17日号より

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