佐々木(C)ロイター/Imagn Images

写真拡大

【フラッシュバック “ゴネ得”米挑戦の軌跡】

【前回を読む】佐々木朗希にメジャー30球団が抱いた“故障疑惑” 1カ月半の戦線離脱も争奪戦が過熱したワケ

■2024年8月の記事,鮑瞳悩

 佐々木朗希が不甲斐ない投球を見せるたび、SNS上では辛辣な声が吹き荒れる。高卒3年目に1試合19奪三振の日本記録、史上最年少の20歳5か月で完全試合を達成するなど投手として圧倒的なポテンシャルを持ちながら、なぜここまで叩かれるようになったのか。

 その背景には、ファンから「ゴネ得」とも揶揄された米挑戦騒動がある。23年オフに大きな物議を醸した古巣ロッテとの泥沼交渉劇、24年シーズンの不完全燃焼、そしてタンパリング疑惑まで取り沙汰されたドジャース入り──。日本球界最後の1年に何があったのか。当時の記事で振り返る。年齢、肩書は当時のまま。

  ◇  ◇  ◇

「久しぶりの登板ということを考えれば、合格点でしょう。最後の五回はギアを上げて、160キロの速球も投げてましたから」

 こう言うのはメジャースカウト。

 昨1日、ロッテの佐々木朗希(22)が西武戦に先発。右腕のコンディション不良で戦列を離れ、6月8日以来の実戦登板だっただけに、ネット裏にはメジャースカウトがズラリ。ヤンキース、マーリンズ、レイズ、カブス、パイレーツ、カージナルス、パドレス、タイガース、ブルージェイズ、ドジャースなどのスカウトが見守る中、5回72球を投げて3安打1失点で6勝目(2敗)。3奪三振は物足りない気もするが、およそ2カ月ぶりだから合格点を付けられるというのだ。

「肩肘に異常があったとしても、160キロの速球を投げられるのは、すでに不安がなくなっているということ。ただ、問題は投げた翌日、翌々日に異常が出ないかどうか。肩肘に張りや痛みが生じるようであれば、再び、抹消ということもあり得ます。しかし、だからといって我々の佐々木に対する評価が下がることはない。大きな故障をする以前にブレーキを踏む危機管理能力は評価できるし、4、5年すれば体も完全に出来上がるでしょう。それまでは登板間隔をあけたり、休ませながら起用すればいいのですから」(前出のスカウト)

 ただ、佐々木の「危機管理能力」は度を越しているのではないか。

 今回は今季2度目の離脱明け。「右腕のコンディション不良」で2カ月近くも戦列を離れたのだ。実際に現場でプレーするメジャーリーガーや首脳陣は、先発ローテをしばしば離脱する選手をどうみるのか。

 米紙コラムニストのビリー・デービス氏はこう言った。

「米国のファンやメディアはもちろん、メジャーリーガーが共感するのは自己犠牲の精神をもった選手です。チームの勝利のため、チームの窮地だからこそ、多少、無理をしてでも腕を振る。同僚が故障するとオレが投げると言って中3日で登板したロジャー・クレメンスしかり、ワールドシリーズで1、4、7戦の3試合に先発したり、ソックスを血で染めながらチームを世界一に導いたカート・シリングしかり。大谷があれだけメジャーで支持されているのは、昨年、休養を勧める首脳陣を振り切って試合に出続けたメンタリティーも大きい。プレーオフの可能性がわずかに残っていただけなのに、結果として右肘靱帯を損傷するまで投げ、野手としてもプレーし続けた。自分の体を酷使してもチームのために目の色を変える精神の持ち主だからこそ、同僚も支持する。この投手のためにも何とか点を取ろうという気にもなるのです」

 ロッテは対西武戦、開幕から負けなしの14連勝。プロ野球新記録に貢献した佐々木は試合後、「2カ月近くあいてしまったので、これからの試合で取り戻せるように頑張って投げました。残りの試合、全部、勝つつもりで投げたい」と話したが、これまでがこれまでだけに本当に投げられるかは疑問と言わざるを得ない。(つづく)