梨の窃盗被害で窮地に立たされた農家の男性が熊本の被災地支援へ。ABEMA的ニュースショーが密着取材した。

【映像】梨5000個の盗難、オーナーによる詐欺的被害の詳細

 困っている人がいるなら力になりたい。たとえ自分も困っていたとしても──。気温40度近い酷暑を顧みず汗だくで助ける人たちがいた。

 震度7の揺れに見舞われ、8月に入っても余震が続く宇城市では、およそ3000人が避難し、断水は8450戸(8日時点)。不便な生活を余儀なくされている。

 8月3日、宇城市内の焼肉店の駐車場を利用してラーメンの炊き出しが行われていた。福岡県朝倉市のラーメン店、福鶏が朝一番でキッチンカーで駆けつけ、絶品の冷やし鶏スープラーメンを提供。少しでも空腹を満たしてほしいと、炊き出し用に特別スープを用意した。

 子どもたちにラーメンを食べさせていた被災者に話を聞くと、「10年前(の地震の時)は私、子どもがいなかったので全然違いますね。重みというか大変さが。自分は別に食べなくても寝るところはどこでも。寝るところも確保しないといけないし、トイレもそうだけど。やっぱり食べ物かな。着替えも結局汗をかくから、大人は我慢できても、子どもはかゆいと言い始めました」と話した。

 支援活動を行う石原千聖さんは宇城市内の自宅アパートで被災した。自宅トイレのタンクが壊れ、水も使えず現在は車中泊を送っているという。「今日は支援の方の熱気でいい意味で温かいです。うちはアパートなんですけれども、足の踏み場がない。トイレのタンクのふたが飛んで水が溜まらない状態。冷蔵庫が倒れたことで、買い出ししたばかりだったので、生卵、ヨーグルト、キムチ、そういうのが1日2日くらい入れられていなかったので床にウワァーってなっちゃって…」。

 そんな状態にもかかわらず被災者支援に汗を流すのは、ある人の行動を知ったからだという。「梨の盗難にあった佐々木さんということを聞いて。何で自分たちが今すごくきつい思いをされているのに。こんな私たちがきつい時に来てくれていると思ったら動かないわけにはいかなくて。その気持ちが嬉しいから、私たちも大変だけど、みんな大変、でも大変な人が県外から来てくださって、全国からの物資がこんなにあったらもう嬉しくてやるしかないなと。私たちがやらないといつまで経っても熊本は立ち上がれない。頑張らないといけない」。

 石原さんが言う「梨農家の男性」とは佐々木浩喜さん(54)だ。福岡県うきは市から駆けつけた佐々木さんは自宅を朝5時に出発し、ありったけの支援物資5トンをトラックに乗せて被災者に届けていた。「少しでも恩返しできれば。僕も助けてもらえたので。広がったらいいと思います」。

 佐々木さんは7月、自身の梨農園で何者かによって梨5000個、200万円相当を盗まれる被害にあっていた。「またかって感じかな、今回は。俺何かしたかなと思いますよね。恨まれているのかなと思いますよね。同じところだけをとられて」。

 梨の窃盗被害は去年に続き2年連続。その梨農園は市街地から離れた山林の中にある。なぜあえてこの場所が狙われたのか、頭を悩ませる。

 被害に気づいたのは7月17日、カラスよけの模型を確認するため奥まで入った時、梨が忽然と消えていた。盗まれた梨は出荷までにはまだ少し早いものばかりだった。佐々木さんはジュースやジャムなどの加工品用として転売する目的ではないかと推測。「姿形もなくなってしまうと我が子をさらわれた感じ」と胸中を明かした。

 佐々木さんは5代目となる米農家。15年前に脱サラし、父親の指導の元、米づくりの他に梨も栽培。先代の父親が精魂込めて作りあげた梨栽培を受け継いでいた。特に梨栽培は繊細で手間暇がかかり、糖度の高い美味しい梨が出来るまでにはまだまだ修行が必要と話す。

「来年この木がどのくらいになるのか、邪魔になるのか、日陰にならないのか、そういう向きも考えながらやっていきます。そういう技術の選び方がまだ親父がすごいので、そういうところが僕はまだできないので。糖度が高いんです、親父の作り方がすごく上手いので。剪定の仕方から変わってくる。糖度が13度くらいある。自慢の梨でどこに出しても恥ずかしくないくらいの梨。親父の梨が好きなので僕も頑張ってサポートしていた」(佐々木さん、以下同)

 去年に続く窃盗被害に、父親の国義さん(79)の落胆は言葉にならないほどで、「完全に心が折れた」と佐々木さんに打ち明けた。「もう梨は終わりじゃ」と口にしていたという。

「もう今回は本当にかなりへこんでいます。『絶対にやらない』と言っている。『梨は絶対にやらない』と。ここでやったらまた盗られるんじゃないかと。何かあるので僕もここはもうしんどい。気持ち的にも」

 佐々木さんの被害はこれだけではない。去年、自身が代表を務める農業法人で事実上オーナーだった人物が書類を偽造し、無断で借金や融資を重ねるという詐欺的な被害にあい、1億円近い負債を抱えたという。オーナーは姿を消した。ネットでは佐々木さんの自作自演ではないかなどの心無い書き込みもあった。

「『自業自得』と言われることもあるし、そういうのは受け止めてもいいと思っている。ただ、応援してくれる人の言葉を信じて行動したいなと思っています」

 梨の窃盗被害をSNSにあげたところ、瞬く間に拡散。支援の声が殺到した。「フォロワーも9000を超えました。800くらいだったと思うんですけど。『クラウドファンディングしてください』『今ある梨を売ってください』『他にあるものがあるならお米とかも売ってください』『お手伝いできることがあれば言ってください』本当こんな言葉をいただけるんだなと思ってすごく勇気づけられています。本当に一人ずつ挨拶して梨を一個でもお届けできればと思っている。他人事じゃないと思ってくれている」。

 佐々木さんは高校時代、野球部でエースを経験。クラブチームの監督を長年務め、その教え子たちがお店に募金箱を設置するなど支援を開始。困っている恩師を助けたかったのだ。

 その直後、熊本で地震が発生。梨どころの騒ぎではないと佐々木さんは行動に出る。急遽、トラックに5トンの支援物資を積み込み、被災地へ届けることにした。今度は自分が困っている人を助ける番だという思いからだった。

 40度近い酷暑の中、暑さで汗をかくのは農作業と野球で慣れている。しかし、持ってきた支援物資は午前中だけで足りなくなる現状も知ることとなった。佐々木さんの野球の教え子を中心としたラーメンの炊き出しにも長蛇の列ができ、持ってきたラーメンは予定より早く配り終えた。

 そしてどん底を味わった佐々木さんが被災地で見た光景。「被災しているのに手伝ってくれている」それは、苦しい生活を強いられている被災者が同じ境遇の人たちのために必死に汗を流す姿だった。

(『ABEMA的ニュースショー』より)