原宿、表参道、川崎にヴィンテージ・ファッションを求めて殺到……「日本の過去」を買い漁る訪日アメリカ人の深い価値観

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東京はヴィンテージの宝の山

前回の記事『渋谷のタワレコが大人気!?……治安でも忍者でもない、3倍以上に急増した訪日アメリカ人が感動する「日本の遺物」とは』では、10年間で3倍と爆発的に増えた訪日アメリカ人が、東京の電車や街の便利さに「自分たちが失った未来」を見つけていると書いた。

しかし、日本でアメリカ人が夢中になっているのは、未来だけではない。むしろ彼らが買い漁っているのは、日本の「過去」だ。

「東京に行ったら、ヴィンテージのバッグをチェックしたい」

旅行前、夫からそんなリクエストがあった。

どうやらファッション好きの友人に勧められたらしい。ただしその友人は東京に行ったことはない。

「東京ではいいヴィンテージがお手頃価格で手に入る」

そんな評判がアメリカで広がっているのだ。

その理由は、ただの円安ではなかった。

<東京はヴィンテージ・ファッションの宝の山だ>

そう表現したのは、アメリカ発の世界的ファッション・ライフスタイル雑誌の「ヴォーグ」だ。<他にはないシャネルやディオールの一点物を見つけるのは、決して難しくない>と大絶賛されている。

ならば、行ってみるしかない。

まずは紹介されていた原宿、表参道のアモーレ・ヴィンテージ。<アーカイブのシャネルバッグが豊富>と書かれていた通り、定番のキルティング・フラップバッグをはじめ、様々な年代やデザインのシャネルが目を引く。

次に、すぐそばのカサノバ・ヴィンテージ。ビヨンセやキム・カーダシアンが訪れたことで知られる店だ。小規模だが厳選された商品が、まるで博物館のようにウィンドーに収められている。

ヴォーグが薦めるのは、都心の有名店だけではない。川崎のブック・オフ・スーパーバザールは、豊富な品ぞろえがTikTokで話題になったという。私たちも足を延ばしてみた。

確かに、ヴィンテージのルイ・ヴィトンやシャネル、フェンディなどがずらりと並ぶ。コンディションによっては大幅に値引きされた商品もある。英語や中国語を話せる店員さんもいて、外国人客が多いことを窺わせた。

保存状態のいいブランドバッグが残る理由

東京のヴィンテージは、ニューヨークに比べて安い。円安の影響もあり、同じクラスのヴィンテージ・バッグが、東京ではアメリカより2〜3割安く見つかることもある。

しかも魅力は価格だけではない。

東京には、アメリカなら高値がつくような保存状態のいいバッグが、まだ大量にある。つまり掘り出し物が見つかる。

ファッションサイト「WHO WHAT WEAR」でも、質、保存状態、セレクトの巧みさ、そして、「こんな限定品まで見つかるのか」という品揃えの細かさ。そのすべてが桁違いと絶賛している。

ではなぜ、日本にはこれほど状態のいいブランドものが大量に残っているのか。

イギリスの経済紙「ファイナンシャル・タイムス」が理由の一つとして挙げるのが、日本人の物持ちの良さだ。丁寧に扱い、良い状態で保管する。や購入時の証明書まで一緒に保管していることも多い。そのため<市場に出てくる商品の品質が高い>と評価している。

そして、そこに重なったのが、バブル時代の大量消費だ。

<バブル経済が日本に新たな富裕層を生み、ヨーロッパの高級ブランドを買うことが中間層の日常的な消費として定着した>と分析するのは、高級ブランド業界向け専門情報メディアの「ラグジュアリー・ソサエティ」だ。

1980年代から90年代にかけて、日本人は世界中でシャネルやルイ・ヴィトン、エルメスを買った。

そして捨てなかった。

ファイナンシャルタイムスはこう付け加える。

<30年以上たった今、この国は家計にかなりの圧迫を感じており、より豊かだった時代に買った物を現金化する方法を探している>

30年以上たった今、それらがクローゼットから中古市場へ流れ出している。かつて日本人が海外へ行って買ったブランド品を、今度は外国人が東京へ来て買っているのだ。

日本のあの企業もNYに進出

その一方で、日本の中古衣料店の海外展開も活発になっている。

代表例が、総合リユースショップ「2nd STREET」を運営するセカンドストリート社だ。ニューヨークではSoHoやチェルシーなど、一等地に次々と進出している。

私も、ふと足を止めて入ってみた。

店内には、コム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトなどの日本ブランドから、シュプリーム、バレンシアガ、ルイ・ヴィトンまで服や小物が並んでいる。ブルックリンなどにある大型古着店とは違い、日米のヴィンテージを選び抜いて並べたセレクトショップのような雰囲気だ。

英語圏のファッションメディアは、日本式の中古店について、<高品質な中古衣料とアクセサリーを厳選した品揃え>さらに、<細部にまで行き届いた、徹底したこだわり>が特徴だと評価している。

きれいな状態で残され、年代やブランド、デザインによって選別され、もう一度、価値ある商品として店頭に並ぶ。ただの「古着」ではない。時間を経たこと自体に価値を見いだす「ヴィンテージ」なのだ。

第二の人生を与えることが気持ちいい

興味深いのは、こうした価値観が、今のアメリカの若者の感性と絶妙なタイミングで重なったことだ。

Z世代の58%は、新品より中古品を優先して買うという調査もある。背景には、使い捨てやファストファッションへの反発、そして環境意識がある。

しかし、それだけではない。

eBayの世界調査では、68%が中古品について、<物に第二の人生を与えることが気持ちいい>と答えている。

リメイクやアップサイクルが日常になったZ世代にとって、中古品はもはや「新品を買えない人の選択」ではない。むしろ、時間を経た物に新しい価値を見つけること自体が、ひとつの感性になっている。

興味深いのは、かつて大量消費の象徴だったバブル時代の商品が、今ではサステナブルな消費を求める若者たちの「宝」になっていることだ。

日本人が豊かさの象徴として買い集めたブランド品を、今度はアメリカの若者が「時間を経た価値」として選んでいる。

そう考えると、ニューヨークの一等地に日本のヴィンテージショップが並ぶ光景が、少し皮肉で、特別な意味をもって見えてくる。

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